「不貞行為(不倫)をしてしまった」という負い目があるとしても、実際に慰謝料を請求された場合の精神的なショックは非常に大きいです。
しかし、精神的なショックや動揺のあまり、自暴自棄になったり、相手の要望に応じて不当に高額な金銭の支払ってしまうことは絶対に避けるべきであり、一呼吸置いて冷静に対応しましょう。
このページでは、不貞行為(不倫)をしてしまった方が、慰謝料請求をされた場合に最低限知っておきたい知識や解決までの流れ、心構えについて解説していきます。
不貞行為は金銭(慰謝料)の問題だけでなく、誹謗中傷など金銭以外のトラブルに発展することもあるため、本ページを参照した上で、適切に事件を解決するよう努めてください。
またくれぐれも自暴自棄になることなく、分からないことがあればすぐに弁護士に相談してください。
不貞行為に関する基礎知識
まず、法律上の「不貞行為」の意味、慰謝料請求の仕組みについて簡単に解説します。
詳細は以下のページで解説していますので、詳しく知りたい方はご参照ください。
不貞行為とは?
不貞行為とは、婚姻関係にある人と肉体関係を持つことをいいます。
肉体関係に至っていない場合、法律的には「不貞行為」に該当しません。ただし、不貞行為に至っていなければ一切責任が生じないということではなく、不貞行為に準じる行為やその疑いを持たれても仕方のないような行為があれば一定の責任を負います。
インターネット上では「不貞行為=肉体関係」と説明されているため、肉体関係に至っていなければ大丈夫と勘違いしがちです。
そもそも慰謝料を支払わなければならない根拠は、「平穏な婚姻関係という権利を破壊した」ことにありますので、肉体関係に至らなくても婚姻関係を破壊するのに十分な行為であれば慰謝料支払義務は発生します。
不貞行為によって支払うべき「損害」
不貞行為によって支払うべき損害は以下のものです。
慰謝料
不貞行為によって傷ついたことに対する賠償金を慰謝料といいます。
慰謝料は、精神的な損害という目に見えない損害を賠償するものなので、決まった金額はありません。
もっとも、多くの事案で実際に支払われた金額の価格帯(=相場)を見ると、不貞によって離婚した場合には200から300万円、離婚に至らない場合は100万円以下となっているケースが多いです。
もちろん、各事案によって事情は違いますので、個別の事情によっては相場の金額よりも上下することは十分あり得ます。
調査費用
不貞行為の相手を特定したり、証拠を確保するために探偵等の調査会社に調査を依頼することがあります。
この調査費用は不貞行為と関係する出費(損害)となりますが、全ての費用が損害となるかと言えばそうとは限りません。
調査費用は業者によって異なりますし、必要以上に調査が実施されていることもありますので、必要な範囲に調査費用を限定することが重要です。
3 慰謝料請求を受けた後の対応と流れ
慰謝料の請求を受けた場合に取るべき対応を状況に合わせて記載します。
以下は典型的な場面を想定した記載ですのでイレギュラーなことがあった場合は弁護士に相談することをお勧めします。
相手の主張の精査
相手から慰謝料の支払いを請求された場合、冷静に相手の主張を見て、事実関係が正しいのか、請求している金額はいくらか、その金額の根拠は何かを精査しましょう。
減額事由が存在しないかの確認
慰謝料の金額は以下の事情が存在する場合、減額されます。
この減額事由が存在しないかどうか確認しましょう。そして、この事由が存在しそうであれば、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
① 相手が既婚者であることを知らなかった
不貞行為の当時、相手が既婚者であることを知らなかった場合、慰謝料の支払義務はありません。
ただし、漠然と既婚者であることを知らなかったというだけではなく、具体的な状況を前提としても既婚者であることを知らなかったことがやむを得ないといえる事情が必要となります。
② 不貞行為の当時、相手の婚姻関係が壊れていた
上で見たように、不貞行為で慰謝料の支払義務が発生するのは、相手の平穏な婚姻関係という権利を侵害したからでした。
逆にいえば、不貞行為の前から婚姻関係が破壊されていた場合、その後に不貞行為があったとしても既に壊れた権利を重ねて壊すことはできませんので、そのような場合は慰謝料の支払義務がなくなるか、破壊されていた程度によって金額が減額されます。
もっとも、不貞行為が行われる際、不貞相手が「妻(夫)と仲が悪い」、「もうすぐ離婚する」と言うのは常套句であり、これを信じてしまった場合は信じた方が悪いと判断されてしまいます。
あくまで、相手の発言だけでなく、相手が離婚調停をしていた、既に別居していたなどの客観的な事情が必要です。
③ 不貞行為から3年以上が経過していること
不貞行為などの不法行為による損害賠償請求権は、「被害者が損害及び加害者を知った時から3年間経過したとき」又は「不法行為の時から20年が経過したとき」は、時効によって権利が消滅します。
例えば、不貞相手の配偶者が一旦は不貞行為の存在を知り、あなたに対し警告はしたものの、慰謝料の請求はせず3年が経過した場合、それ以後に慰謝料を請求することはできません。
逆に相手が不貞行為の事実を知らない間は時効が成立しませんので(上記のとおり20年が経過すれば消滅します)、仮に時効消滅を主張したいのであれば、被害者が3年以上前に不貞行為の存在を知っていたことが必要となります。
慰謝料を請求された後にやってはいけないこと
慰謝料請求をされた後にやってはいけないことがいくつか存在します。
いずれも状況を悪化させることにつながりますので、このような行動を取らないようにしましょう。
① 相手の要求をすぐに全て認めてしまう
ポイントは「すぐに」、「全て」という点です。
不貞行為について反省が大きい方にありがちなのですが、相手から責められ責任を追及された際、申し訳ないという気持ちから相手の要求をすぐに、全て受け入れてしまう方がいます。
もちろん反省する態度が否定されるものではないですが、それと相手の要求を全て受け入れることには別問題です。
相手の要求は過剰であることもあり、それを受け入れることは必要以上の罰則を受けることになってしまいます。
自分が直面している相手の要求が法的に妥当なものなのかどうかは冷静に見て、分からない点はすぐに弁護士に相談しましょう。
② 嘘をつく
誰しも人間は弱い面があり、追い詰められれば咄嗟に嘘をついてしまうことがあります。
しかし、嘘というのは大概いつかばれてしまうもので、ばれてしまった後は更に強い追及が待っています。
相手から痛い部分をつかれたとしても、明確な嘘をつくことはリスクが大きいということを理解しましょう。
③ 不貞相手と交際関係を続ける
不貞行為が発覚した後も不貞相手と交際関係を続けるケースが存在します。
相手が離婚していない場合、不貞関係の継続は慰謝料の増額事由に該当します。
②同様、リスクの大きい行為であることは理解してください。
慰謝料請求された場合の実際の事例
理屈は分かったとしても、実際に慰謝料請求された方がどのように行動したのかを見ることも重要です。
フォレスト法律事務所の解決事例をいくつかご紹介します。
弁護士なしで対応可能なケース、不可能なケース
慰謝料の請求をされた場合に、弁護士への依頼が必要かどうか悩まれている方もいるかもしれません。
弁護士の要否の判断方法ですが、「弁護士に依頼するメリット>弁護士費用」となれば必要、逆であれば不要です。
以下、弁護士に依頼するメリットを見てみましょう。
① 法律的に最も有利な戦略を立てられる
具体的な事情から法律的に最も有利な方法を選択できるという点が最大のメリットです。
近年、AIの発達によって、法律の専門家でなくても、法的な知識にアクセスすることが可能となりました。
しかし、いくら一般的・表面的な知識を持っていても現実に起きている事情にあてはめるとどうなるのかという点については、AIで回答を出すことはできません。
慰謝料の金額、夫婦関係の破綻、故意・過失等、具体的な事情から結論を導くことは法律の専門家である弁護士にしかできない分野です。
② 相手(弁護士)と直接やり取りせずに済む
相手本人、その弁護士とやり取りすることのストレスは非常に大きいものです。
また、やり取りに当たって良くない対応をしてしまった場合、慰謝料の増額を主張されかねません。
弁護士が代わりに対応すれば、このようなストレスから解放されるため、そのメリットは非常に大きいものといえます。
③ 冷静な視点で状況判断ができる
不貞行為をしてしまった側としては、負い目があったり反省をしているほど、相手の要望に応えたいと思うものです。
この考え自体は否定されるものではないですが、相手の要望が過剰な場合にまで応じる必要はありません。
相手の要望に応じると言ってしまったものの、実際に実行する段となると実現が難しく、どうしていいか分からずに弊所に相談に来られた方もいらっしゃいました。
必要な範囲内での賠償、対応は行うべきですが、これを超えて対応する必要はありません。
相手の要望が妥当なものなのか、過剰なものなのか、第三者の専門家である弁護士の意見は重要です。
以上が弁護士に依頼する主なメリットですが、逆に以下のような場合はメリットが小さくなります。
ケースバイケースですが、以下の④〜⑥が揃っている場合は弁護士に依頼する必要はないと考えます。
④ 慰謝料の金額に争いがない
相手が請求する慰謝料金額が高額でない場合、弁護士が介入することによって支払う金額は大きく変わらない可能性が高く、弁護士依頼のメリットは小さくなります。
⑤ 感情的なぶつかり合いがない
金額的な問題をクリアしたとしても、感情的な衝突が激しく嫌がらせや名誉毀損などの被害が発生する可能性があります。
このような場合、弁護士でなければ事態を収拾することは難しいです。
⑥ 相手に弁護士がついていない
相手の弁護士は相手の権利を最大化するために活動します。弁護士とのやり取りを誤ると、自分にとって不利な証拠を確保されてしまうことになるので、相手に弁護士がついた場合は自分も弁護士をつけることを検討すべきです。
よくある質問
まとめ
ここまで、不貞行為の慰謝料を請求された場合に最低限知っておきたい知識、解決までの流れについて解説しました。
このページを読んだとしても、実際に置かれている状況から何をすべきか分からないということもあるはずです。そのような場合は迷わず弁護士にご相談ください。