離婚手続の流れ|協議、調停、裁判の特徴、ポイントを解説

手続

これから離婚を協議すると決心したものの、具体的にどのように進めていいか分からないという問題に直面すると思います。

また、離婚協議が思うように進展しないことから、「離婚調停」をする必要があると思いながらも、その先の見通しが立たないことから、二の足を踏んでしまうという方もいらっしゃると思います。

このページでは、「離婚協議」、「離婚調停」、「離婚裁判」という3つのステップについて、それぞれの特徴、目安となる期間、ポイントについて解説します。

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手続を行う順番

離婚を進める手続としては、「協議」、「調停」、「裁判」という3つのステップがあります。

この各手続の順番ですが、調停をせずに裁判を始めることはできないことになっています(調停前置主義といいます。)

調停の前に協議を行うことは必須とされていないため、協議をすることなく調停を始めることは可能です。

もっとも、協議することができない事情がない限りは、協議から始められることが通常です。

離婚協議

離婚協議とは

 離婚協議とは、裁判所外で、離婚及び離婚条件について話し合いを行うことをいいます。

 離婚協議を行う方法について、特に法律的な制限はありません。

 よって、親族を交えた協議、弁護士を代理人とした協議など、協議する方法も様々です。

協議する内容

離婚自体について協議するほか、離婚条件についても協議をすることが通常です。

離婚条件とは、

 ・ (未成年の子がいる場合)親権者をどちらにするか

 ・ 養育費をいくらとするか

 ・ 財産分与として財産をどのように分けるか

 ・ 慰謝料を支払うのか及びその金額

です。

なお、とりあえず離婚だけし、その後に離婚条件について協議することは可能ですが、離婚届には親権者を記載する欄がありますので、親権者だけは決めておく必要があります。

また、財産分与については、離婚後2年以内、慰謝料については3年以内など、請求することに期限があるため、注意が必要です。

離婚協議に要する期間

離婚協議に要する期間ですが、ケースバイケースであり、事情により大きく異なります。

双方が離婚することについて合意をしており、離婚条件についても争いがないような場合は、1月以内で合意が成立することもあります。

他方、親権の所在や共有不動産に関する財産分与の問題がある場合は、協議が長期化する傾向にあります。

協議が進まないまま2~3年が経過してしまった」ということは珍しくありません。

離婚協議が成立したら

双方が署名した離婚届を役所に提出すれば、離婚が成立します。

これまで、離婚届を本籍地以外の役所に提出する場合は戸籍謄本が必要とされていましたが、戸籍法の法改により、令和6年3月1日以降は戸籍謄本の添付が不要となりました。

よって、離婚届は、本籍地はもちろんのこと、住所地や所在地(一時的に所在している場所)のいずれの役所に提出する場合でも離婚届を提出すれば足りることになりました。

離婚届は役所へ持参するほか、郵送によって提出することもできます。

離婚届が受理されると、提出から2週間程度で、届書提出日に「協議離婚」が成立したことが戸籍に反映されます。

協議離婚のメリット・デメリット

協議離婚のメリットですが、

・ 裁判所を通さないため、早期に離婚まで行きつく可能性がある

・ 調停や裁判と異なり、費用がかからない

・ 離婚条件は当事者双方の合意によって決まるため、柔軟な解決が可能

という点です。

一方、協議離婚のデメリットですが、

・ 話合いには期限がないため、一旦揉め始めると長期化してしまう可能性がある

・ 夫婦間での話合いとなるため、冷静に話合いをすることが難しい

という点が挙げられます。

協議離婚は、調停よりも早期に解決するイメージがあると思います。
確かに、協議がスムーズに進んだ場合は、調停よりも格段に早く問題が解決します。
しかし、協議が膠着状態となってしまうと、協議だけで1年、2年が経過してしまうことも少なくありません。
協議が進まないようであれば、調停を申し立てるという決断は必要であり、そのタイミングの判断が非常に重要となってきます。

離婚調停

調停とは

調停は、家庭裁判所の中で、調停委員を介し、離婚及び離婚条件について協議をする手続をいいます。

裁判所で行う手続である点で協議とは異なりますが、裁判手続と違って、「話合いによって、双方の合意を目指す」というであるという点が特徴です。

離婚調停は、原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で行うことになります。

始め方

家庭裁判所に申立書を提出します。

申立書と合わせて、戸籍謄本も提出します。

裁判所において必要書類の確認がされると、第1回目の期日の日時が調整されます。

第1回期日が行われるのは、この期日調整が行われる日の1か月~1か月半後の時期です。

第1回期日が決まると、調停の申立書と合わせて、期日の呼出状が相手方に郵送されます。

調停の進め方

調停の期日当日は、家庭裁判所内の家事書記官室に行き、受付を行います。

この受付の際、開始時間まで待機する場所が指示されますので、調停委員が呼びに来るまでこの場所で待機をすることになります。

調停を行う部屋には、男女1名ずつの調停委員が座り、机を挟んだ対面に調停の申立人と弁護士が座ります。

部屋の広さは、裁判所によって異なりますが、「小規模な相談室」をイメージしてもらえればいいと思います。

調停委員から、離婚に関する質問がされるため、これに答えていくことになります。

30分程度、話をすると、今度は相手方と交代し、相手方が調停委員と話をすることになります。

相手方が話をしている間は、時間が来るのを待っていることになります。

そして、相手方の話が終わると、今度はこちらが交代で部屋に入り、話をします。

このように交代で話をすることを何回か繰り返し、次回期日までに準備しておくことが宿題として渡され、次回期日を調整し、その日の調停は終了となります。

2回目以降は、上記と同じことを繰り返していくことになります。

なお、1回の調停の所要時間ですが、2時間程度が目安となります。

もっとも、多少延長することで調停がまとまりそうという状況であれば、まとまるまで延長することもありますので、時間には余裕を持って臨まれることをお勧めします。

調停の成立

調停を重ねた結果、双方が合意に至れば、離婚条件が記載された「調停調書」が作成されます。

離婚日は、「調停が成立した日」となりますが、調停が成立しただけでは戸籍に離婚した事実が反映されないため、別途届け出が必要となります。

具体的には、出来上がった調停調書を役所に持参し、離婚届に署名をし、提出することで、戸籍上も離婚をしたことが反映されます。

なお、上記離婚届の提出は、「調停が成立してから10日以内」に行うことが法律上定められています。

調停調書は、調停が成立した日に出来上がるとは限らず、翌日以降に受領することもありますので、あらかじめ余裕をもったスケジュールを立てておく必要があります。

調停が不成立となったら

調停を重ねた結果、話合いがつく見込みがない状況となると、調停は不成立となり終了します。

婚姻費用・養育費、面会交流などの調停は、調停が不成立となると自動的に審判手続へ移ることになりますが、離婚調停が自動的に審判へ移行することはありません。

よって、離婚について争うのであれば、次のステージである裁判を申し立てる必要があります。

離婚裁判

裁判とは

これまで見てきた協議や調停が「話合い」による合意を目指す手続であったのに対し、裁判は、「法律に基づき、裁判所が離婚をすべきか否か、離婚をするとしてどのような離婚条件とすべきかを判断する手続」となります。

どの裁判所で行うか

裁判は、原告、被告のいずれかの住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。

調停が、原則として、「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」であったのと異なるため、注意が必要です。

裁判ではどのようなことが行われるか

裁判は、調停と異なり、書面のやり取りが中心となります。

代理人の弁護士が就任している場合、当事者が出頭することは基本的にありません。

裁判では、事前に提出された書面の内容が確認され、次回期日までに準備すべき事項が確認され、次回期日が設定され、終了します。

このように、提出書面を前提とした手続であるため、確認事項が少ない場合は、1回の期日が5分程度で終了してしまうこともあります。

確認事項が多く、提出証拠の読み合わせ等を行うような期日では、1回の期日で1~2時間を要することもあります。

このような期日を数回繰り返すと、双方の主張が出尽くす段階が来ます。

その時点で和解ができないか試みられますが、和解が成立しない場合には、双方当事者が法廷で話をする尋問手続が行われることになります。

尋問手続

尋問手続は、原告・被告本人が法廷に出向き、裁判官の前で話をする手続です。

尋問手続は、自身の代理人からの質問に答える「主尋問」、相手側の代理人からの質問に答える「反対尋問」、裁判官からの質問に答える「補充尋問」の順番で行われます。

尋問手続では、自分の記憶に基づいてありのままをお話することになりますが、いざ裁判所に行って、自分の思ったことを整然と話せる人はいません。

尋問前の段階で入念に準備をしておく必要があり、準備をしておけばそこまで心配をする必要はありません。

判決

尋問手続が終了すると、裁判所は、判決によって離婚の可否、離婚条件について決定します。

判決に対しては、判決書を受け取った翌日から14日以内に、高等裁判所に控訴をすることができます。

この14日以内の期間は、判決が確定するかどうか分からない不確定な状態となりますので、離婚判決が出たとしても、判決が確定するまでは離婚の届出をすることはできません。

離婚の判決が確定した場合、判決書謄本と判決の確定証明書(家庭裁判所に申請し、作成してもらいます。)を役所に持参し離婚届を提出すると、離婚の事実が戸籍に反映されることとなります。

【まとめ】手続の選択は重要!

離婚に至るまでの道筋はケースによって異なります。

手続の選択によっては、必要以上に時間がかかってしまうため、「協議を打ち切るタイミング」、「裁判へ移行するタイミング」を適切に判断することが重要です。

この手続選択の判断は非常に難しいものであるため、弁護士へのご相談を強くお勧めします。

フォレスト法律事務所では、ご依頼をお受けする初期の段階から、各手続選択のタイミングについてご説明をした上で、離婚までの道筋をご案内しております。

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