【2024年改正法対応】離婚後の親権者変更は難しい?手続・調停・費用・期間|子供を取り戻す方法

協議離婚や調停離婚など、どのような方法で離婚した場合であっても子どもの親権者をどちらかに指定しなければなりません(2024年8月現在。法改正後は、父母の双方を親権者として指定することができるようになります(選択的共同親権制))。

離婚に際して、何らかの理由で子どもの親権を諦めたものの、その後に事情が変わったことで、親権を変更し子どもを取り戻したいと考える方もいらっしゃいます。

しかし、親権者変更は家庭裁判所の手続を利用する必要があるなど手続が複雑であるため親権者の変更を諦めてしまう方も少なくありません。

また、これまで親権者として子どもを育てていた側から見ると、急に親権者変更の調停や審判の申立書が届けば心理的な不安は大きく日々の生活に支障をきたすことになるでしょう。

そこで、本ページでは、親権者変更の手続、流れ、費用など親権者変更について気になる問題を解説していきます。

以下の解説は、親権者変更を求める側、求められる側、どちらの立場も理解ができるようにすることを目的としているので、解説も中立的なスタンスで記載するよう努めています。

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目次

親権者変更はどのくらい難しい?統計データから分析

まず、親権者変更の手続(調停、審判)がどの程度利用され、どの程度認められたのかについて、令和5年の1年間の統計データをもとに見ていきましょう。

【調停】

新規申立て数

項目新規申立て数書面による申立て審判から調停に付されたものその他
件数4,3183,97827862
比率(%)100.00%92.13%6.44%1.43%

終結事件数

項目終結事件数調停成立調停不成立取下げ調停に代わる審判調停をしないものその他
件数4,3662,609400815310116116
比率(%)100.00%59.75%9.16%18.67%7.10%2.66%2.66%

【審判】

新規申立て数

項目新規申立て数書面による申立て調停から係属したものその他
件数1,30389736838
比率(%)100.00%68.84%28.25%2.92%

終結事件数

項目終結事件数認容却下取下げその他
件数1,313593274206240
比率(%)100.00%45.17%20.87%15.69%18.27%

上記データによると、1年間で約5000件の調停又は審判が新たに申し立てられていることが分かります。

そして、終結した事件を見ると、親権者変更の調停が成立した件数が2609件(終結事件の約60%)、変更の請求を認めた審判が593件(終結事件の約45%)であることから、変更が認められた件数の方が多いことが分かります。

当然ながら、それぞれの事件で具体的な状況は異なるため、数字だけを見て変更が認められやすい、簡単に認められるということはできませんが、一方で変更が難しいといって諦める必要がないことも分かると思います。

離婚後の親権者変更は家庭裁判所の関与なしに行うことは不可能

協議離婚に際しては、離婚届に親権者を記載すれば記載通りに親権者が決まります。

しかし、離婚時に一度決めた親権者を変更する場合、当事者間の協議で変更することは認められず、家庭裁判所の調停又は審判の手続を経る必要があります(民法819条6項)。

これは2024年の改正法によっても変わりません。

なお、認知した父に親権者を変更したり、離婚後に生まれた子の親権者を父に変更する(このような場合を「親権者の指定」といいます。)には、父母の合意に基づき市区町村役場に届出をすることで変更することができますので、家庭裁判所の手続は不要です。

調停を申し立てることなく、最初から審判を申し立てることはできますか?

可能です。親権者変更は調停を必ず先行させなければならない(調停前置主義)ものではないので、最初から審判を申し立てることも可能です。

裁判所の判断で話合いを行うべきであると判断された場合、調停手続に移行されることもあり得ます。

親権者変更調停の申し立て方法

親権者変更の調停を申し立てる方法は以下のとおりです。

① 誰が?

子どもの親族(一般的に父または母)が申し立てることができます。

② どこの裁判所で行う?

調停の「相手となる人の住所地を管轄する家庭裁判所」又は、「当事者が合意して決めた家庭裁判所」です。

③ 必要書類は?

一般的に以下の書類が必要とされています。

  • 申立書とそのコピー1通(合計書面2通)
  • あなたの戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 相手の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

※記載が重複するものは、1通だけ提出すればいいです。

※このほか、個別の事情から必要と判断される資料を提出するよういわれる可能性があります。

④ 申立人に必要な費用

  • 収入印紙:子ども1人につき1200円(2人の子供の変更の場合は、1200×2=2400円)
  • 郵便切手:裁判所によって異なるので、個別確認が必要です。

親権者変更調停の流れ

親権者変更調停の流れについて見ていきます。

置かれているご事情や管轄裁判所の事情によって必ずしも以下記載する流れで進むとは限りませんが、大まかなイメージとして見てください。

① 申立書提出から第1回期日まで

申立書を提出してから、最初の調停期日が開かれるまでの期間は1か月~1か月半程度です(例:10月1日に申立書を提出したら、最初の期日は11月中のどこか)。

しばらく、日にちが空いてしまいますが、この期間で裁判所が書類の発送の準備をし、相手が調停の準備を始めることとなります。

なお、相手には最初の調停日時がいつであるかを指定して連絡がされるため、書類が届いた時点で相手に予定が入っており裁判所に来られないということもあります。

そのような場合、裁判所の判断次第ですが、調停期日自体を延期してしまうか、期日自体は開いて申立人のみが参加するかのいずれかになります。

調停期日

調停期日は双方が別々の時間に呼び出されます。

例えば、調停が午前10時開始の場合に、申立人を10時、相手方を10時30分に来るようと時間がずらされることが通常です。

まず申立人から話が事情を聞かれます。

  • なぜ親権者の変更を求めようと思ったのか
  • 離婚後の子供との交流態様
  • 変更について相手と協議したか、協議の内容

については最低限聞かれるでしょう。

事情が複雑な場合、調停期日で口頭で伝えても理解は得られにくいので、あらかじめ主張を整理した書面を提出しておくことが好ましいです。

申立人の話を一通り聞いた後は相手方と交代し、今度は相手方の言い分が確認されます。

このように何回か交代してそれぞれの言い分、具体的な問題点を把握した上で、次回までの準備事項を伝えられ、次回の期日の日時を決めたら、その日は終了です。

なお、調停には家裁調査官が立ち会っており、次の期日までの間に調査官が調査を実施することもあります。

調停の終了

調停期日で協議した結果、双方の意向が一致した場合、親権者を変更する調停が成立します。

他方、双方の意向が一致せず、これ以上話し合いを続けても平行線のままである状態になると調停は不成立となり、審判手続へ移行します。

調停が成立した場合は、裁判所から出される調停調書を役所に持参して、親権者変更の事実を戸籍に反映させる必要があります。

審判手続の流れ

調停が不成立となって事件が審判に移行した場合、審判では調停までに提出された双方の主張、資料、調査官調査が実施されていた場合はその調査報告書など、手続に出てきた一切の資料が判断の対象となります。

このほか、審判では両当事者が裁判所に呼ばれ、裁判所の面前で話をすることがあります(審問といいます)。各種資料、審問の結果を踏まえ、裁判官が親権者変更をすべきかどうかを判断する審判を出します。

審判に不服があるときは即時抗告

審判の内容に不服がある場合、審判所の謄本(裁判所の判断が記載された書面で、判決書のようなもの)を受領した日の翌日から2週間以内に即時抗告をすることができます。

即時抗告をすると、審判の内容が正しかったかどうか高等裁判所で判断がされます。

高等裁判所で判断が変わることは少ないですが、ケースによっては高等裁判所で調査官調査をやり直して判断が見直されることもあります。

親権者変更が可能と判断される理由

親権者変更をすべきと判断されるかどうかはケースバイケースです。

大枠で言えば、「親権者をこのまま親権者としておくことが子どもにとってよくないと思われる場合」に変更が認められるといえます。

なお、令和6年5月17日に成立した改正民法では、合意して定めた親権者を変更する場合

  • 協議の経過(暴力等の有無、調停の有無、公正証書の作成の有無)
  • その後の事情の変更

を考慮するものとされました。法改正前もこれらの事情は考慮されていましたので、法律の改正によって変更があるわけではありません。

以下、親権者変更が認められる典型的な場合を見ていきましょう。

① 現在の親権者が監護意欲・能力を失ったこと

現在の親権者が子どもを監護する意欲をなくしてしまったり、事後的に能力がなくなってしまった場合、親権者の変更が必要となります。

注意すべきなのは、意欲や能力の欠如は客観的になされる必要があるので、相手側から「監護の意欲がない」、「能力が足りない」と主張してもあまり説得的ではありません。

あくまで、中立的・客観的に見て意欲や能力が足りないということが必要です。

② 親権者の精神的・肉体的虐待、ネグレクト

親権者の子どもに対する精神的・肉体的虐待がある場合、ネグレクトがある場合は親権者を速やかに変更する必要があります。

ただし、本当に虐待があったかどうかは客観的な証拠資料に基づき慎重に判断され、一方の言い分のみで認められることはありません。

③ 子どもが親権者の変更を希望している

子ども自身が親権者変更の意思も重要な要素となります。

特に子どもの年齢が15歳以上であれば、子ども自身がある程度の判断能力を有しているものとして本人の意思が最大限尊重されます。

逆に年齢が低い場合の他、暴力や暴言などによる支配、物を買い与えるなどして歓心を買う行為等、子の意思に不当な影響が存在する場合には子の発言が結果に寄与する度合は低くなるでしょう。

④ その他、子どもの養育をすることが難しくなった事情が発生した場合

上記の他、子どもの持病に対応するために自宅で看病をしなければならない、監護を補助していた両親の助力を得られなくなってしまった等、子どもの養育をすることが難しくなった事情が発生した場合も変更の要否の判断要素となります。

親権者変更が認められた後の手続

親権者変更の調停や審判が成立した後は、以下の手続が必要となります。

① (審判の場合)確定証明書の入手

審判は、審判書が双方に送達された日の翌日から2週間は審判に対し即時抗告を申し立てることができるため、この期間が経過するまでの間は審判が確定していない状態となっています。

よって、審判書で手続をするためには、審判が確定していることが必要となるため、家庭裁判所で審判が確定したことの証明書(確定証明書)を入手する必要があります。

この確定証明書は審判書とセットで効力を有することとなります。

② 市区町村役場での手続

親権者の変更を認める調停や審判が成立しても役所は変更の事実を知りません(裁判所と役所はつながっておらず、情報共有はされていません。)。

よって、役所に調停、審判が成立することを知らせる必要があります。

そこで、調停調書、審判書(+確定証明書)を役所に提出し、戸籍の記載を訂正する申請をします。

この申請は、調停が成立した日又は審判が確定した日から10日以内に行う必要があります。

申請をすると数日~2週間程度で戸籍に変更の事実が反映されます。

③ 養育費の見直し(調停、審判で取り決めされなかった場合)

離婚時に養育費を取り決めていた場合、親権者変更の手続と並行して養育費の取り決めをしなかった場合、新たに養育費について協議をする必要があります。二度手間となってしまうことを避けるために、親権者変更の手続と合わせて養育費についても協議するようにしましょう。

④ その他、親権者変更の事実を知らせる

幼稚園、保育園、学校に対して、親権者が変更されたことを知らせる必要があります。

このほか、通院している病院、加入している健康保険に変更が生じる場合にも、親権者の変更を知らせておく必要があるでしょう。

よくある質問

18歳の子供について親権者変更をすることはできますか?

できません。子どもが18歳になった時点で成人し親権の対象から外れるため、変更することもできません。

公正証書で親権者の変更をすることはできますか?

できません。裁判所の調停、審判によらなければ親権者の変更をすることはできず、これは公正証書によって定めた場合でも変わりません。

親権者変更にはどの程度の期間がかかりますか?

ケースバイケースですが、双方が親権者の変更について争っていない場合は2~3か月程度で全手続を終結させることも可能です。

他方、争いが激しく、綿密な調査が必要なケースでは1年以上の期間を見るべきです。

親権者変更の手続は弁護士の関与が不可欠

親権者変更の手続は、統計データからも明らかなとおり、一般的な離婚調停のように事例が集積しているとはいえず、対応できる弁護士も限られています。

変更が認められるためになすべき活動も専門的な知識が必要となるため、親権者変更を望まれている方、変更を請求された親権者の方はフォレスト法律事務所にご相談ください。

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この記事を書いた人

フォレスト法律事務所代表弁護士。
弁護士資格の他、ファイナンシャルプランナー、証券外務員一種、宅地建物取引士の資格を保有しており、不動産を含む経済的な問題を得意としています。
離婚・男女問題について、豊富な経験をもとに分かりやすく解説します。

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