離婚とペット|財産分与・養育費・面会交流について

最近ではペットを「家族の一員」として大切にしている家庭も多く、離婚時に「ペットをどうするか?」という問題が大きな争点となるケースが増えています。

日本の法律(民法)では、ペットは「所有物・モノ」として扱われるため、子どものように親権や面会交流権が認められているわけではありません。それでも、ペットを愛してやまない夫婦にとって、ペットの引き取りや面会は重大な問題であり、法律で決まっているというだけで納得できるものでもありません。

このページでは、離婚時にペットがどのように扱われるのか、引き取りや面会、費用負担の現実的な解決策について、自身もペットを飼っており、ペットがいるご夫婦の離婚を多く取り扱っている弁護士が詳しく解説します。

なお、財産分与一般の解説は以下のページを参照ください。

友だち追加
目次

ペットが離婚の原因となるのはどのような場合?

ペットを飼うということは良い面ばかりでなく、責任や負担を伴います。

その結果、以下のような離婚原因が発生することがあります。

飼育の押しつけ

ペットの世話について分担が上手くいっていない場合、飼育の押し付け合いが生じます。

ペットの食事や散歩などの世話が一方に偏ることで不満が蓄積してしまった結果、喧嘩に発展してしまうということは珍しくありません。

経済的問題

経済的なトラブルは離婚の大きな原因となりますが、ペットの飼育費用・医療費・保険も家計に影響を与えるため、夫婦間でのトラブルが発生しやすいです。

ペットによっては、特別な環境や食事を用意しなければならず、人間と同等かそれ以上に飼育費用がかかってしまうこともあります。

夫婦で飼育費用について共通の認識を持っていればいいのですが、ズレがあると紛争の原因となってしまいます。

価値観の違い

ペットのしつけや飼い方に対する価値観の違いが、夫婦間の大きなトラブルに発展することがあります。

ペットを家族の一員として扱うか、外飼いするのか室内飼いをするのかなど、ペットの飼育に対する価値観が大きく異なることはあり、それが原因で大きな紛争に発展することもあります。

離婚時のペットは法律上どのように取り扱われる?

離婚する際、ペットをどちらが引き取るのかは双方の話し合いで決めることになります。

もっとも、話し合いがつかない場合や検討材料として、法律がペットをどのように扱っているのかを知っておくことが重要です。

日本の法律ではペットは「モノ」(財産)として扱われます。

よって、結婚後に飼い始めたペットは親権ではなく財産分与の対象となります。

ただし、自動車や絵画などの財産と異なり、ペットは感情のある生き物ですので、引き取り先を決めるにあたっては、通常の財産と異なった取り扱いがされます。

離婚時にペットをどちらが引き取るかを決める方法

婚姻後に購入したペットについて、離婚後どちらが引き取るかは、夫婦間で話し合い決めることが好ましいです。

しかし、どちらも引取りを希望し折り合いがつかない場合、裁判所は以下の事情を考慮してどちらが引き取るべきか決めます。

① これまで飼育していたのはどちらか、どちらがペットへの愛情が深いか

ペットとの愛情や絆が強い方が継続して飼育することが好ましいです。

主にどちらがペットの世話をしていたのかは、愛情の大きさを推認させる事情となりますし、今後も責任を持って世話を続けられるかどうかを判断する材料となります。

② 離婚後の飼育環境が整っているか

離婚後にペットを飼う環境を整えることができるかも重要な要素です。

離婚後の住居がペットの飼育可能であるか、同居する家族がペットの飼育に協力的であるかといった事情はペットの飼育環境に大きな影響を及ぼす事情です。

③ 経済的な余裕があるのか

ペットを飼育するには費用がかかります。

このあと記載しますが、ペットの養育費を請求する権利は法律上認められていないため、飼育費用は全て自分で負担する必要があります。

このように費用を自分で負担できるだけの経済的な余裕があるかどうかも判断の要素となります。

離婚後のペットとの面会交流

ペットとの面会交流は法律で認められているのか?

ペットは「モノ」として扱われるため、ペットと定期的に会う「面会交流」は法的な権利として認められていません。よって、相手が拒否をすればペットと会わせるよう法的に請求することはできません。

ペットとの面会を実現するための方法

上記はあくまで法律上の権利の話ですので、夫婦間での合意によって面会交流について取り決めすることは何ら問題ありません。

面会交流の頻度、方法が決まったら、公正証書や書面で取り決めをしておくと、離婚後の紛争を避けることができます。

ペットの引き取り後の費用負担(養育費)はどうなるのか?

ペットを引き取ったのちの費用(養育費)ですが、原則として引き取った側がペットの飼育費用を負担することになります。

これは、ペットが財産として扱われることから、その維持管理は所有者である引き取った側が負担すべきという考え方です。

もちろん、相手が費用を負担することに了承すれば任意に支払ってもらうことは問題ありません。

また、財産分与において、飼育費用の分を調整して計算するという方法もあり得るでしょう。

「離婚とペット」よくある質問

財産分与で私がペットの犬を引き取ることになりました。10歳の老犬で病院にもかかっていますが、この犬の財産的価値はどのように判断すべきでしょうか?

0円と考えていいです。

ペットは法律上「財産」と扱われるので、一方がペットを引き取った場合、その分の財産を取得したものと考えられます。

問題は、ペットをいくらと金銭評価するかです。

一般にペットを購入した価格や同種の動物の販売価格が基準となりますが、質問の事例では購入から時間が経過しており、同種の犬も販売されていないため、市場価格は参考になりません(病院にかかっているので費用もかかります)。これらの事情を総合すると、経済的な価値はないものと扱っていいと思います。

長年飼っていたペットを分けるもので、私がこれまで取り扱ったケースでは、当然に経済的価値がないものとして扱ったケースが多く、実務上も同様の処理がなされることが多いです

夫婦どちらも引き取りを拒否していますが、どうすればいいですか?

まずは、どちらかが引き取らなければならないことを前提として、引き取る方法がないか検討を尽くしてください。

事情によって、どうしても双方とも引き取らない場合、里親を探す方法や動物愛護団体に相談する方法があります。

最終手段として保健所に相談することもできますが、慎重に判断する必要があります。

なお、犬や猫、ウサギなどの愛護動物を捨てる(遺棄する)ことは動物愛護法に違反し、懲役や罰金に処せられますので、絶対にやめてください。

まとめ 離婚とペットの問題を適切に処理するために

ペットは、法律上「モノ」、「財産」と扱われるものの、生き物であるため、適切に処理することは簡単ではありません。

離婚時のペットを扱う特別な法律はないので、具体的な処理は夫婦の善意に任されている部分は大きいです。

しかし、善意で全てを解決できるほど単純なものではありませんので、離婚時のペットの問題でお悩みの方はフォレスト法律事務所までご相談ください。

友だち追加

この記事を書いた人

フォレスト法律事務所代表弁護士。
弁護士資格の他、ファイナンシャルプランナー、証券外務員一種、宅地建物取引士の資格を保有しており、不動産を含む経済的な問題を得意としています。
離婚・男女問題について、豊富な経験をもとに分かりやすく解説します。

目次