面会交流の頻度、取り決めの割合、行わない理由 「相場」を統計データから分析

面会交流の頻度や条件を決める際「他の人はどうしているのか?」と考える方は多いと思います。

実際、私もご依頼者から「相場の回数は何回ですか?」と質問されることが多いです。

しかし、インターネットや書籍調べてみても、相場の回数がどうなっているのか決まった答えはなく、参考にすべき情報は見つかりません。

私は面会交流の事件に多く携わる中で、「相場に頼らず、自分の状況に合った条件を設定すべき」と考えていますが、一方で、具体的な回数を決めるにあたっては、どうしても「相場」を把握しておきたいという気持ちは非常に共感できます。

また、一部「相場」として伝わっている情報も、統計の数字を見てみると思った程の割合を占めておらず、結局は「ご家庭の状況次第」で解決されていることも理解できると思います。

そこで、本ページでは本日現在(2024年7月)の最新の統計である厚生労働省の調査の結果(令和3年度「全国ひとり親世帯等調査」)を基に、面会交流の頻度、取り決めをしている割合、面会交流を行わない理由など、多数の方が興味を持たれているであろう項目について、統計資料を弁護士が分析し解説していきます。

本ページを読むことで、単なる相場ではなく、具体的な割合に基づいた状況把握をできるはずです。

なお、統計の原データを確認されたい方はこちらのページを参照ください。データ量が膨大なので、本ページを一読されてからデータを確認することをお勧めします。

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目次

統計データは、母子世帯、父子世帯に分けて調査された結果

具体的な結果を見る前に、統計データがどのようなものであるかについて簡単に説明します。

厚生労働省が約5年に1度、全国の母子世帯父子世帯、父母共にいない子が祖父母などに養育されている養育者世帯を対象に、各種の調査をした結果を集計したものです。直近では平成28年、令和3年11月1日に調査が実施されており、このページを執筆した2024年7月時点では令和3年分が最新のデータとなります。

対象とした 4,105 の母子世帯、1,329 の父子世帯、123 の養育者世帯のうち、2,653 の母子世帯、866 の父子世帯、93 の養育者世帯から有効回答が得られ集計したデータです。

面会交流の取り決めをしているのは全体の約3割

まず、面会交流の取り決めをしている割合について見ていきましょう。

母子世帯のうち全体の30.3%が、父子世帯の31.4%が面会交流の取り決めをしています。約7割の方は取り決めをしていません。

取り決めをしている方のうち、文書で取り決めをしている割合は母子世帯が68.4%、父子世帯が63.5%であり、取り決めをする場合には何らかの文書が作成される傾向にあることが分かります。

取り決めをしない理由は父母で異なる

面会交流について取り決めをしていない方が全体の7割程度と割合としては大きいことが分かりました。

では、取り決めをしない理由(最も大きな理由)ですが、母子世帯、父子世帯で割合が異なりました。

母子世帯の場合、最も多い理由は「相手と関わりたくない」(26.4%)で、次いで「取り決めをしなくても交流できる」(16.4%)、「相手が面会交流を希望しない」(12%)でした。

対して、父子家庭の場合の最も多い理由は、「取り決めをしなくても交流できる」(30.3%)、「相手と関わりたくない」(17.5%)、「取り決めの交渉がわずらわしい」、「相手が面会交流を希望しない」(それぞれ9.8%)でした。

このように、取り決めをしないことにした理由は父子家庭、母子家庭で異なる点は無視できません。

面会交流の実施状況は母子家庭と父子家庭で大きく違う

では、面会交流の具体的な実施状況について見ていきます。

面会交流の実施状況

母子家庭、父子家庭の別で見た面会交流の実施状況は以下のとおりです。

総数現在も行っている過去に行ったことがある行ったことがない不詳
母子家庭100%30.2%20.9%45.3%3.7%
父子家庭100%48.0%15.7%31.6%4.6%
母子家庭・父子家庭全体の面会交流の実施状況

数字だけを見た場合、父子家庭は、母子家庭と比して面会交流を行う割合が多く、継続して行う割合が高いといえます。

次に、面会交流の取り決めをしている世帯のみに限った場合(取り決めをしていない世帯は考えない場合)の面会交流の実施状況は以下のとおりです。

総数現在も行っている過去に行ったことがある行ったことがない不詳
母子家庭100%48.5%26.2%23.5%1.1%
父子家庭100%64.8%19.9%14.8%1.8%
面会交流の取り決めをした場合における実施状況

このように、一見して面会交流の取り決めをしておいた場合の方が、していない場合と比べ、面会交流が実施される傾向にあります。

これは、合意の時点(多くは離婚時点)で、合意ができる程度の仲は保てていたことから、離婚後も継続して面会交流を実施することができたとみることもできます。

また、取り決めをした以上は面会交流を実施しようと考えた結果、面会交流の実施につながったと見ることもできます。

いずれにしても、面会交流の実施を望む側にとって、離婚後の面会交流に関する取り決めは絶対に行うべきであるといえるでしょう。

面会交流の実施頻度は、母子家庭、父子家庭とも月1~2回が最多だが・・・

次に面会交流の実施頻度(回数)について見てみます。

母子世帯

頻度(回数)月2回以上月1以上2回未満2~3月に1回4~6月に1回長期休暇中
全体の割合14.0%24.2%16.9%11.3%6.6%
母子家庭における面会交流の頻度(回数)

父子世帯

頻度(回数)月2回以上月1以上2回未満2~3月に1回4~6月に1回長期休暇中
全体の割合(%)23.8%27.7%10.1%9.4%5.1%
父子家庭における面会交流の頻度(回数)

父子世帯、母子世帯とも、「月1回以上2回未満」が最多でした。

もっとも、父子世帯は月2回以上の割合が23.8%と高く、父子世帯の方が面会交流の実施頻度が多くなる傾向にあります。

面会を実施しない理由も、父子・母子家庭によって違いが見られる

現在面会交流を実施していない家庭を対象に、面会交流を実施していない理由(最も大きな理由)を調査した結果は以下のとおりでした。

母子家庭

理由相手が面会交流を求めてこない子どもが会いたがらないその他相手が養育費を支払わない面会交流によって子どもが精神的又は身体的に不安定になる
全体の割合28.5%16.1%16.0%8.6%4.0%
母子家庭における面会交流を実施しない理由

父子家庭

理由子どもが会いたがらない相手が面会交流を求めてこないその他相手が養育費を支払わない面会交流によって子どもが精神的又は身体的に不安定になる
全体の割合30.4%26.2%12.1%7.5%3.0%
父子家庭における面会交流を実施しない理由

大まかな傾向を掴んだ上で自分の状況に当てはめてみる

以上、最新の統計データから見た面会交流の頻度・回数、取り決めの割合、行わない理由について、父子世帯・母子世帯に分けて割合を見てきました。

ここまでデータを見ることで、大まかな相場観のようなものは実感できた一方で、「自分の場合は実際どうすべきか?」と悩まれた方も多いと思います。

このような悩みを持たれることはごく自然なことであって、結局は自分の状況に合わせて最適な条件を設定するしかありません。

以下のページでは、面会交流の回数のみに絞って、実際に回数を決定すべき方法について詳しく解説していますのでぜひ参照ください。

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この記事を書いた人

フォレスト法律事務所代表弁護士。
弁護士資格の他、ファイナンシャルプランナー、証券外務員一種、宅地建物取引士の資格を保有しており、不動産を含む経済的な問題を得意としています。
離婚・男女問題について、豊富な経験をもとに分かりやすく解説します。

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