別居や離婚を機にお子さんと離れて暮らす父母が、お子さんと会って話をしたり電話や手紙でやり取りすることを面会交流といいます。
子どもと別々に暮らす父母にとって、面会交流はお子さんの成長を確認するための重要な機会であり、定期的、継続的に行うことを希望します。
他方、子どもと一緒に暮らす父母としては、子どもの幸福を考えながらも面会交流について積極的になれない、面会交流を拒否したいと思うことも少なくありません。
面会交流は、法律で「こうしなければならない!」という確たる基準のようなものがなく、どのように解決すべきかは悩ましい問題です。
このページでは、面会交流の種類、取り決め方、面会実施までの流れなど、面会交流の問題で理解しておくべき事項を徹底解説します。
面会交流は「誰の」「どのような」権利?
そもそも、面会交流は「誰の権利」なのでしょうか?
また、「どのようなことを求める権利」なのでしょうか?
まず、面会交流に関する法律の規定を見てみましょう。
民法では、面会交流について次のとおり規定しています。
第766条 父母が協議上の離婚をするときは、(略)父又は母と子との面会及びその他の交流(略)は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
法律の規定が非常に簡素であるため、条文の記載からは、「誰の」「どのような」権利かは明らかとなりません。
実は、この「誰の」「どのような」権利かという問題について、判例、学説上種々の対立があり、確定的な答えは出ていません。
もっとも、最高裁判所は、面会交流権を「子の監護のために適正な措置を求める権利」とする立場を取っていると言われています(最決平成12年5月1日)。
実務上、「誰の」「どのような権利」かが問題となることは少ないです。
これは、どのような立場を取ったとしても、「面会交流が子の利益となるのであれば行うべきであり、そうでなければ行わない」という大枠の考え方は共通することによります。
面会交流の種類
「面会交流」と言っても、その方法にはいくつかの種類があります。
大きく分類すると以下の4つに分けられます。
① 直接交流
別居する親と子どもが直接会い、交流する方法です。
この方法での面会交流が上手く機能すれば、「子どもは別居する親の愛情を感じることができ、別居や離婚で生じた喪失感を和らげる」ことが期待できます。
もっとも、上手く機能しない場合は、同居親の負担感が大きくなってしまったり、両親との間の板挟みとなり面会自体に罪悪感を覚えてしまう可能性があります。
② 親族や専門機関などが関与する直接交流
別居する親と子が直接会うことは①と同じですが、親族や専門機関(FPIC等の第三者機関)の職員が関与する点で異なります。
両親の関係が悪く面会交流の調整ができないような場合に、親族や専門機関が介入することによって、直接やり取りをせず面会交流を実施できるというメリットがあります。
また、DVや連れ去りを心配する同居親から見れば、面会に親族や専門機関の職員が立ち会うことで、このような不安を解消できるというメリットもあります。
もっとも、第三者が関与する度合いが強い場合、別居親としては窮屈な面会となってしまい、お子さんとしても面会に集中できなくなってしまう可能性があります。
また、専門機関を利用する場合は費用が発生しますが、定期的に面会を行う場合には費用の負担感が大きくなってしまうこともデメリットとなります。
③ 双方向的間接交流
zoomやLINE等のテレビ電話、電話、手紙のやり取り等を通じ、別居親と子がやり取りをする方法です。
テレビ電話による面会は、遠方に住む親子間での面会交流で利用されたり、②の方法を取りたいが協力してもらえる親族や第三者機関がないような場合に用いられてきました。
最近では新型コロナウイルスの影響で直接交流ができないときに、直接面会の代わりの手段として利用されることも増えています。
①②のデメリットを回避できる方法ではあるものの、直接的な触れ合いをすることはできませんので親子の関係を深めることには限界があります。
また、お子さんが小さい場合、長時間の通話や手紙のやり取りは難しく、そもそもこの方法を取りにくい場合もあります。
④ 一方向的間接交流
お子さんの写真や通知表など、お子さんの成長度合いや日常生活の様子を把握できるような情報を送付する方法です。
①~③の面会が難しい場合でも、お子さんの様子を把握することが可能となりますし、将来的に直接交流をすることとなった際には得られた情報を基にスムーズに面会交流を行うことが可能となる利点があります。
直接交流と比較すると、お子さんと別居親の関係は希薄となってしまいがちです。
また、定期的に写真を送ることは同居親にとっても負担となってしまい、写真の送付が途絶え、父母間の葛藤が大きくなってしまうことがあります。
面会交流はどのように取り決めすればいいか?
面会交流の日時・場所・方法について話合う
別居や離婚をする際、お子さんとの面会交流の方法を父母で話合い、取り決めをすることが基本となります。
また、お子さんがある程度の年齢に達していれば、別居親と子の間でやり取りをして自由に面会交流をするということも行われています。
父母で話合いができない場合は、「弁護士が代理人として話合いを行う」、「面会交流調停で話合いをする」方法があります。
話合いがまとまらない場合は調停・審判を申し立てる
面会交流の話合いがまとまらない場合は、面会すること自体に争いがあったり、面会の方法に争いがあることが考えられます。
いずれの場合も父母の感情が激しくぶつかり合うことが多く、問題の解決は困難です。
このような状況で話合いを行っても、時間だけが過ぎていってしまうため、次のブロックで解説する調停・審判を申し立てることを検討しましょう。
面会交流調停・審判
面会交流の調停・審判とは?
面会交流の具体的な内容・方法について、父母の話合いがまとまらない場合に、家庭裁判所で話合いを行い、合意を目指す手続きが面会交流調停手続です。
この調停手続で話合いがまとまらず、調停が不成立となって終了した場合には、自動的に審判手続が開始し、全ての事情を考慮して、裁判官が面会交流の具体的な内容、方法について判断を下します。
調停の申立先は「相手方の住所地」の家庭裁判所です。
事前に双方でどの裁判所で調停を行うか合意がある場合には、その合意をした裁判所で行うことも可能です。
なお、面会交流の審判に先立って調停を申し立てなければならないという決まり(調停前置主義といいます。)はありません。
しかし、調停を申し立てず、審判から申し立てた場合であっても、裁判所が「まずは話合いを行うべき」と判断し、事件を調停手続へ移行することが通常と思われます。
調停手続の流れ
調停手続では、男女1名ずつの調停委員のほか、家庭裁判所調査官が立ち会います。
家庭裁判所調査官とは、子どもの問題を専門に扱う裁判所の職員で、父母や子どもの調査を行います。
当事者は、別々に調停室に入り、調停委員や調査官に対し、状況や自分の考えなどを伝えます。
双方が調停委員を介し、話合いを行い、問題点をあぶり出していきます。
このような話合いを重ねた後、裁判官が調査の必要があると判断した場合には、調査官が父母の話を聞きとったり、子どもと会って話を聞くという調査が実施されます。
また、長らく面会交流がなされておらず、親子が面会した様子を調査官が観察する必要があると考えられる場合には、裁判所内で試行的に面会交流が実施されることもあります。
このようなプロセスを経て、最終的に合意が成立すれば約束事(調停条項)が作成され、調停は終了します。
面会交流調停の進行方法は事案によって異なるため、必ずしも上記の流れを取るとは限りません。
調停の進行に不安がある方は弁護士に相談されることをお勧めします。
調停が不成立となった場合
調停が不成立となった場合、自動的に審判手続へ移行します。
よって、別途、審判手続を申し立てる必要はありません。
審判手続では、これまで調停で提出された資料、調査官が作成した調査報告書など、一切の資料をもとにして、裁判官が妥当と考える判断を下します。
審判手続では、新たに期日が開かれて当事者が話をすることもあれば、期日が開かれず書面の提出だけ求められること、書面の提出すら求められないこともあり、ケースバイケースであるといえます。
必ず面会交流は行わなければならないか?
面会交流はお子さんにとって、両親からの愛情を実感し、両親との信頼関係を築いていくことによって健全に成長することに役立つものと考えられているため、基本的には実施することが望ましいと考えられています。
このように、面会交流はお子さんの健全な成長に役立つものであるという前提があるため、別居親が子どもや同居親に対して身体的・精神的暴力を行う恐れがある等、面会交流をすること自体が子どもの利益に反することとなってしまう場合は例外的に行わなくてもよいと考えられています。
祖父母にも面会交流をさせてあげたいが可能か?
別居親としては、自分だけでなく、自分の親(祖父母)にも子と面会させてあげたいと希望することは少なくありません。
同居親との話合いで祖父母の面会についても合意ができれば問題はありません。
では、話合いがつかない場合、祖父母が面会交流の権利を主張することができるかが問題となります。
近年、祖父母が孫との面会交流を求めて審判を申し立てたケースについて最高裁判所は「面会交流について定める審判を申し立てることができるのは父母に限られ、祖父母が申し立てをすることはできない」と判断しました(最判令和3年3月29日決定)。
この最高裁の判断は、面会交流について定める民法766条が、面会交流を協議する主体を「父母」としており、「祖父母」は含まれないということを根拠としています。
よって、法律が変更されない限り、祖父母から面会交流調停や審判を申し立てることはできません。
もっとも、祖父母が面会交流をしてはいけないということではありません。
父母の話合いの中で祖父母の面会交流について合意が得られれば面会交流を実施することは可能ですので、合意に向けて工夫や配慮をしていくことで合意を目指していくことになります。
面会交流に関するフォレスト法律事務所の考え
面会交流は、父母間にとって最も重要な問題の一つといえます。
財産分与や慰謝料のように金銭で解決できるものではないため、父母の感情が激しくぶつかり合ってしまうことも少なくありません。
弁護士森圭は、これまで多数の面会交流の事案に立ち会ってきました。
父母それぞれの立場で活動をする中で、面会交流の重要さ・解決の難しさを感じ、日々悩みながら最良の解決策を探してきました。
「どのような解決案を取るべきか」はご事情によって異なります。
また、面会交流の方法も様々ですので、ご事情にあった面会方法をご案内します。
面会交流の問題の解決でお困りの方は、お気軽にご相談ください。