株式投資家(トレーダー)との離婚

2024年1月から新しいNISA制度が始まり、株式投資が推奨されたことも相まって株式投資信託を購入する方が増えました。

株式や投信は、日々評価額が変動するという特性があります。

また、株式等を購入する原資をどこから支出したかによって離婚する際の財産分与の有無も異なります。

株式投資で利益を上げた方は通常の会社員の給与では考えられない水準の利益を獲得することも可能ですが、離婚によって利益の半分を取られてしまうとなれば、そのダメージも極めて大きくなってしまいます

本ページでは、離婚を考えている株式投資家(トレーダー)トレーダーとの離婚を考えている配偶者に向けて、トレーダー特有の離婚問題を解説していきます。

なお、株式を含む財産分与については、以下のページで詳細に解説しています。

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目次

株式投資家が離婚時に抱える特有の問題

財産分与で利益の半分が取られる?

株式投資家が離婚に直面する最も重要な問題が財産分与です。

婚姻期間中に得た財産は、夫婦の共同財産として扱われますが、株式投資による利益や株式そのものも財産分与の対象となります

株式投資を行っていたのが夫婦一方のみであり他方が投資に関与していなかった場合であっても、株式は財産分与の対象となり、夫婦で等しい割合で分け合うこととなります。これは、投資に直接関与していなかった配偶者も、他の部分で夫婦生活を支えており、いわば内助の功があったことが巡り巡って投資活動に寄与したという考え方によるものです。

株式が夫婦共同財産に含まれるケースとは?

株式投資による資産が夫婦共同財産に含まれるかどうかは、購入時期や資金源によって異なります。

婚姻後に夫婦の共有財産で購入した株式は、共有財産と扱われることが一般的です。

一方、婚姻前の個人資産で購入した株式や、相続によって得た株式は、原則として共有財産ではなく財産分与の対象から除外されます。

理屈としては上記のとおりですが、株式購入の原資が、婚姻前の預貯金、株式の売却金なのか、婚姻後の共有財産であるのかを判別することは容易ではありません

特に、デイトレードやスイングトレードのように取引回数が多いケースでは原資の特定が困難となるので、的確に財産を処理することが求められます。

株式の評価

上場株式の特徴として、当然のことではありますが、日々評価額が変動することが挙げられます。

このように日々時価が異なる特性から、離婚時の財産分与においては最新の株式評価額を基準にして財産分与の金額が算定されます。

しかし、株価の値動きによっては財産分与として支払うべき金額が短期間で大きく変動してしまうことが生じてしまいますが、株価の変動という偶然の事情によって財産分与で大きく得する側/損する側が存在することは好ましくありません。よって、そのような場合は評価額に適宜の調整が加えられることもあります。

弁護士を選ぶ際の重要なポイント

株式投資に明るい弁護士であること

財産分与の対象として上場株式等が含まれる場合、当然ながら株式や投信などの金融商品についての知識がなければ的確に事件処理をすることは不可能です。

誤解されがちな部分ですが、全ての弁護士が株式等について詳しいわけではなく、全く知識のない弁護士も存在します。

よって、離婚問題だけでなく金融商品の知識も豊富に備えた弁護士を探しましょう。

専門知識のある弁護士の見極め方

弁護士を選ぶ際には、株式投資に関連する法律知識や過去の実績を確認することが重要です。

最も分かりやすい基準は、過去に株式等の分与について取り扱った経験を聞いてみて具体的な話が返ってくるかどうかです。

経験、実績を聞くことは何も問題ありませんので、積極的に聞いてみましょう。

よくある質問

私は、会社員のかたわら株式投資をしていますが、幸い自分の給与額以上の利益を出せています。妻は私が株をやっているのを知りませんが隠し通すことは可能でしょうか?

難しいと思います。

国内の現物株であれば株主総会や優待関連の郵便物が届くため配偶者が目にすることもあるでしょう。

また、銀行と比較して証券会社の数は少なく絞り込みも不可能とは言えないので、当たりをつけて照会されれば株式を持っていることが発覚する可能性は相応にあると思います。

財産分与は2分の1ずつ分け合うということですが、どんな場合も半分ずつなのでしょうか?株式投資によって数十億の資産を築きましたが、これが半分取られてしまうと割に合いません。

半分ずつ分けることが原則ですが、例外的に財産形成に一方の特別な才覚、能力が大きく寄与している場合、取得割合が修正されることがあります。上で解説したように、財産分与が等しい割合で分け合うこととされているのは、直接的には財産形成に関与していなくても内助の功として寄与していることが認められるため、等しい割合で分け合うことが公平であると考えられるためでした。

しかし、夫婦の一方に類まれな才覚、能力があり、これによって大きな財産を築いた場合、他方の配偶者が等しい割合を取得するという結論はかえって不公平となってしまいます。

質問のケースでは、数十億円の資産を築いたとのことですので、ここまでの資産を築くには自身の能力や才覚によるものであり、この能力が世間一般に見られる程度を大きく超えたものであることなどを主張・立証していくことになるでしょう。

夫が株式投資をしています。離婚に際して、夫が財産を隠すために株式を売却してしまった場合、どう対処できますか?

売却した金銭が急に消えることはなく、何らかの痕跡が残ります。

他の株式の購入に充てられているのか、売得金を証券口座から引き出して別の預金口座に送金しているのか、金銭の痕跡をたどって行先を特定していきます。

まとめ

ここまで株式投資家の離婚について解説してきました。

投資家の中には会社員では築けない規模の財産を保有していることがあり、そのような場合、主張が認められない部分が少し増えるだけで分与すべき金額は莫大な金額となってしまいます。

株式を含む財産分与についてはどの弁護士でも対応できるわけではなく、離婚事件と金融商品について豊富な知識を有する弁護士しか適切な処理はできません。

フォレスト法律事務所の弁護士は、株式等の財産分与事件を多数扱うだけでなく、証券外務員一種の資格も保有しており、安心して対応をお任せいただけます。

お悩みの方はフォレスト法律事務所までご相談ください。

この記事を書いた人

フォレスト法律事務所代表弁護士。
弁護士資格の他、ファイナンシャルプランナー、証券外務員一種、宅地建物取引士の資格を保有しており、不動産を含む経済的な問題を得意としています。
離婚・男女問題について、豊富な経験をもとに分かりやすく解説します。

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