株式は離婚時の財産分与の対象? 具体的な手順を分かりやすく解説します

株式

離婚する際、夫婦が結婚生活で協力して築いた財産は「財産分与」として分け合うことになります。

この財産の中に株式等の有価証券が含まれる場合、どのように処理すべきでしょうか。

有価証券は家や車のように目に見える現物があるわけではなく、イメージがしにくいものです。

また預貯金と違い、株式は日々値段が動くため、金額の算定がしにくいという特徴があります。

近年、株式や投資信託を購入する人は増えているものの、株式等を全く購入したことがないという方も多いのではないでしょうか。そのような方にとっては、「株式」は「難しい・よく分からない」ものでしょう。

そこで、このページでは、株式等の有価証券について全く知識のない方でも財産分与の処理方法を理解できるよう、証券外務員一種の資格を持つ弁護士が解説していきます。

目次

財産分与とは何かを簡単に確認

財産分与とは、「夫婦が結婚生活の中で協力して築いた財産を公平に分け合う」ことをいいます。

このような性質から、有価証券が財産分与の対象となるかどうかは「結婚生活の中で協力して築いた財産」に当たるかどうかで判断します。

財産分与の詳細な解説については、以下のページを参照ください。

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財産分与の対象となるもの・ならないもの

財産分与は、「夫婦が結婚生活の中で協力して築いた財産を公平に分け合う」ものですから、結婚後に取得した株式等が財産分与の対象となります。

逆に、財産分与の対象とならない株式は以下のようなものが挙げられます。

① 結婚前に取得した株式等

「夫婦が協力して築いた財産」に当たらないので、財産分与の対象とはなりません。

② 結婚後に株式を取得したが、購入資金は独身時代の貯金

株式等の購入が結婚後であっても、購入資金が独身時代の貯金であれば「夫婦が協力して築いた財産」とはいえません。

もっとも、お金に色はついていませんので、購入資金が「独身時代の貯金」なのか、「結婚後の貯金」なのかについて明確にする必要があります。

③ 相続により取得した株式等

相続は夫婦の協力とは無関係に生じるものですので、相続により取得した株式は財産分与の対象とはなりません。

上場株式等の財産分与について

ここからは、上場されている株式等について解説していきます。

上場株式等の種類・確認方法

保有する上場株式等の内訳は証券会社が作成する証券残高証明書等で確認することができます。

よくある有価証券は以下のようなものです。なお、以下の説明は一般的な説明であり、個別商品により内容は異なります。

① 国内株式

日本国内の企業の株式です。1株当たりの値段は会社によって異なります。

100株単位で購入することが通常です。

② 外国株式

日本国外の企業の株式です。

1株の金額は外貨(ドル、ユーロ等)で表されるため、財産分与に当たっては円に換算する必要があります。

③ 投資信託(投信)

投資信託は、多くの投資家が資金を出し、集まった資金を運用の専門家が運用・管理し、運用の成果を持ち分に応じて投資家に還元する仕組みです。

証券会社で1口から購入することが可能です。

投資信託の評価額は「保有口数×基準価格÷1万口」で算定することが一般的です。

④債券

債券は、国、会社、金融機関が投資家から資金を調達し、その見返りに発行する証券です。

日本国が発行する国債がイメージしやすいでしょう。

上場株式等は「いつの価格」で評価するのか

上場されている株式、投資信託、債券には価格があります。

価格は動きますので、財産分与時(協議であれば離婚時又はこれに近い一定の日、裁判であれば審理終結日(口頭弁論終結日))の価格で評価します。

理屈としては上記のとおりですが、株価は日々動くため理屈通りに処理すると不公平な結果となってしまうことがあります。

事例

Aさん夫妻は、X社の株式を1000株保有している。

X社の株価は、以下のとおり変化した。

20XX年5月1日(別居日) 1株5000円

20XX年11月1日     1株3500円

20XX年11月2日     1株4200円

上記の事例で、11月1日の株価を基準とした場合、全株式の評価額は、3500円×1000株=350万円です。

しかし、1日後の11月2日を基準とした場合、全株式の評価額は4200円×1000株=420万円となります。

基準日が1日異なるだけで70万円の差が生じてしまうこととなります。

基準となる日を11月1日とするか2日とするかは偶然のものですが、それで財産分与の金額が大きく異なることは公平ではありません。

そこで、このように株価が大きく上下するようなケースでは、過去数か月の株価の平均値を算出したり、双方が主張する株価の平均値を算出するなど、偶発的な株価の上下によってどちらかが得をし、どちらかが損をするという結論が出ないように調整します。

上場株式はどのように分割するのか

株式を具体的に分割するには大きく3種類の方法があります。

まず、株式を売却することなく、現物のまま分ける方法です(現物分割)。

次に、株式をどちらか一方が取得し、その対価として現金等を他方に支払う方法もあります(代償分割)。

また、株式を売却し、売却金を分け合う方法もあります(換価分割)。

一概にどの方法が優れているということはなく置かれた状況に応じて分割方法を選んでいくことになります。

例えば、「夫は日常的に株式取引をしているが、妻は株式に興味がなく、取得しても運用できない」というケースでは、「夫が全株式を取得、妻が代償金を取得」という代償分割の方法が良いでしょう。

逆に「株式の優待を使うのが専ら妻だけ」というケースでは、妻が株式を取得し、夫が現金を取得するという方法もあり得ます。

現物分割、代償分割によって、株式の名義人が変わる場合、証券会社の名義変更を申請します。

非上場株式の財産分与

ここからは、上場していない株式(非上場株式)について見ていきます。

日本全国の企業のうち上場企業の割合は0.1~0.2%程度ですので、大半の企業が非上場企業です。

「会社経営者が離婚する場合」、「親族が経営する会社の株式を相続で取得し後に離婚する場合」において、非上場株式の財産分与が問題となります。

 非上場株式は市場で売買ができないため、「株式の価値をどのように評価するのか」、「具体的にどのように分割すべきか」が問題となります。

非上場株式の評価方法

非上場株式の価値を評価する方法については、決まった方法があるわけではなく、様々な手法があります。

正確に算定するのであれば、会社の会計資料を基に公認会計士等の専門職に算定してもらう必要があります。

もっとも、上記正確な算定を専門職に依頼する場合、算定費用が発生してしまうため、フォレスト法律事務所では以下解説する相続税を算定する際の評価基準等をもとに、会社価値を簡易的に算定する方法を採用しています。

相続税の算定における株価の評価方法

相続財産に非上場株式が含まれる場合、以下の方法により株式の時価を算定します。

離婚の財産分与にダイレクトに当てはまるものではありませんが、参考になるためご紹介します。会社の規模に応じて、以下の評価方法を組み合わせて算定します。

評価方法内容
類似業種比準方式上場企業のうち、類似業種の株価を基に、一株当たりの利益、配当、純資産価額を比較して評価する方法。
純資産価額方式純資産価額を基準に、法人税等相当額(含み益37%)を控除した金額で評価する方法。
併用方式類似業種比較方式と純資産価額方式を併用して評価する方法。
配当還元方式配当がある場合に、過去2年間の配当平均額を一定の利率で還元して評価する方法。
非上場株式の評価方法
会社の規模評価方式
大会社類似業種比準方式
中会社の大類似90%、純資産10%
中会社の中類似75%、純資産25%
中会社の小類似60%、純資産40%
小会社類似50%、純資産50%
会社の規模ごとの評価方法

上記はあくまで相続税の算定方法ですので、実際のケースに合わせて適宜評価方法を検討する必要があります。

具体的な分割方法

「具体的に株式をどのように分割すべき」ですが、会社経営者の離婚において、離婚後に配偶者が会社経営にかかわることは稀であることから、経営者が全株式を取得し、代償金を配偶者に支払うことが一般的です。

例外的に配偶者が株式を取得する必要がある場合であっても、会社を安定的に運営する必要があるため、持株比率について配慮する必要があるでしょう。

よくある質問

株式関連でよく頂くご質問についてご紹介します。

夫(妻)が株式取引をしているか分かりません。株式の取引をしているかどうか簡単に見分ける方法はありますか?

上場株式の場合、決まった時期に株主総会や配当・優待の通知が郵便で届きます。このような郵便物を見たことがある場合は株式取引を行っている可能性があります。なお、外国株式、投資信託、ETFなどは上記通知がありませんので、郵便物がないからといって金融商品を持っていないとは限らないため注意が必要です。

自分の名義で株式を持っていますが、どの証券口座か分かりません。どの口座に権利があるか確認する方法はありますか?

証券保管振替期間(ほふり)に、上場株式等の口座を開設している証券会社を照会することが可能です(有料)。 照会した結果、証券会社が特定できれば証券会社に保有する金融商品を照会することができます。

弁護士へのご相談をお勧めします

以上、離婚時の財産分与について解説してきました。

理屈としては、上記解説したとおりですが、実際のケースではどのように処理すべきかについては難しい問題であり、弁護士でも頭を悩ませるものです。

当事務所の弁護士森圭は、証券外務員一種の資格を持ち、各種金融商品取引の経験も豊富ですので、株式の財産分与について専門的なご相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

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