ご相談内容
【ご依頼者】Xさん(30歳代 女性)
【ご家族構成】夫Yさん、子1人
Xさんは、Yさんとの離婚を望み、お子さんを連れて別居を開始。
離婚調停の対応をフォレスト法律事務所に依頼しました。
Yさんは、株式のデイトレーダーを専業で行っていましたが、財産分与でYさん名義の財産をどのように評価するか問題となりました。
弁護士の活動
Yさんは、婚姻前から株式投資を繰り返し行っていました。
Yさんは、毎日数百回の株式の売買を繰り返していたことから、「婚姻前の株式を売却した金銭」、「婚姻後にXさんが稼いだ金銭」、「婚姻後に株式が値上がりした分の利益」が混ざり合い、それぞれを分別することは事実上、不可能でした。
よってYさんが現在持っている株式の購入原資を特定することはできないことは仕方ないとしても、これをどのように金銭評価するかが問題となりました。
Yさんは、「婚姻後の日経平均株価指数が右肩上がりに上がっていることから、婚姻前の資金が相場の影響で増え続けたのであって、夫婦の協力で増えた部分はない=財産分与の対象とならない」と主張しました。
一見すると正しそうに見えるYさんの主張ですが、Yさんが取引していた銘柄には、日経平均の構成銘柄以外のものも含まれていました。また、日経平均の構成銘柄であっても、必ずしも指数と連動するとは限らず、Yさんの主張は説得的ではありませんでした。
もっとも、ある程度大まかな計算にならざるを得ないことは事実であったため、私は、Yさんが婚姻前に保有していた総資産額、Xさんが婚姻後に稼いだ金額、株式市場が大まかにどの程度の水準で上昇したのか等の事情から、財産分与としてXさんが受け取るべき金額を算定しました。
相当高額な金額となったものの、Yさんも最終的には納得し、Xさんは十分な金額の財産分与を獲得することができました。
本件のポイント
財産分与の対象となるのは、「夫婦の協働により得た資産」ですので、婚姻前に保有していた資産や配偶者の協力と無関係に増えた資産は財産分与の対象とならないことが通常です。
通常の物品(例:家具、電化製品)の場合、購入した金額や購入資金がどこから出たか等ははっきりしていますし、基本的には価値が徐々に減っていくものなので金銭評価しやすいといえます。
しかし、株式の場合、毎日金額が上下しますし、株自体の売得金と証券口座に入金した金銭が混じってしまう場合、これを区分けしなければならないという点が特徴的です。
特に、デイトレード(1日の中で株式の売買を完結する取引手法)やスイングトレード(短期間で売買を完結する手法)の場合、取引数が極めて膨大であり、正確に区分けしようとすれば、際限なく時間がかかってしまいます。
よって、本件のように双方が納得する金額を概算することが現実的な解決方法です。



