夫婦の連帯債務(連帯保証)|離婚時に解消するにはどうすればいいですか?

 質問

結婚してすぐに一戸建てを購入しました。

まさか離婚するとは思わなかったので、夫をローンの名義人(主債務者)、私を連帯債務者として住宅ローンを組みました。

不動産の持分は「夫が30分の29」、「私が30分の1」です。

今回、離婚することになり、夫が私の持ち分を買い取り、引き続き住み続けることになりました。

私は、家に住み続けるつもりはなく、持ち分を買い取ってもらうことに不満はありませんが、私が連帯債務者となったままの状態にいることに不安があります。

私にどのようなリスクがあって、どうすべきかを具体的に教えてほしいです。

不動産の共有名義と住宅ローンの連帯債務(連帯保証)をどう解消するかは、実務上良く出てくる問題ですが、具体的な方法は確立されていません。このページで、具体的に解説していきたいと思います!

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共有不動産の連帯債務(連帯保証)を残すリスク

冒頭のご相談事例では、離婚により夫が不動産の全ての所有権を取得することになりました。

そこで、所有権を移した場合、ローンはどうなるか(所有権と一緒にローンも移るのか?)という疑問が出てきます。

結論ですが、不動産の所有権を移しても、住宅ローンに影響は生じないため、妻は引き続き住宅ローンを背負ったままです(連帯保証であれば保証人のままです)。

不動産の権利を持っていないのにローンの支払義務だけ負うというのは割に合わないので、通常は連帯債務(連帯保証)から外してもらえるよう、住宅ローン債権者(銀行)と交渉することになります。

連帯債務(連帯保証)から外してもらう方法

そもそも、金融機関が連帯債務(連帯保証)契約をする理由を考えてみましょう。

これは、ローンの名義人(主債務者)が支払いを怠った場合に備えて、請求できる相手を増やすことによって確実に貸した金銭を回収できるようにするためです。

そうすると、債権者としては支払いを確保できるのであれば、連帯債務者(連帯保証人)が夫(妻)である必要はなく、支払いができる資力を持っている人であれば良いことになりそうです。

以上を前提に、債権者と交渉する方法を見ていきましょう。

① 代わりの連帯債務者/連帯保証人を立てる

債権者の関心が、債権の回収にあるとすれば、「代わりの連帯債務者(連帯保証人)を立てる」という方法が浮かぶと思います。

理屈としてはその通りなのですが、実際に「代わりとなるような人」を用意することが難しいです。

多額のローンを引き受けてもらうことになるので、友人に頼むことはできず、候補となるのは親族しかいないでしょう。

しかし、不動産を購入する年齢となると、父母はリタイアしているかリタイア間際であり、代わりにローンを引き受けることは難しいでしょう。

また、銀行の立場から見ると、わざわざ別の連帯債務者(保証人)に変更するメリットはありません。あえて契約を変更して債権を回収できなくなるリスクがあるのであれば、契約を変更せず、現状を維持する選択をします。

よって、連帯債務者(保証人)を新たに立てる場合、元の債務者(保証人)と同じ程度の信用では足りず、元の契約よりも明らかに優れた人を用意する必要があると考えるべきでしょう。

上記の考え方は、実際にある金融機関の担当者から言われたものです。もちろん金融機関ごとに考え方は異なるでしょうが、非常に説得的な内容であり、どの金融機関でも似た考えを持っているのではないかと思います。

② 追加の担保を差し入れる

上記の通り代わりの人を用意することが難しい場合、自身や親族が持つ不動産を新たに差し入れるという方法もあり得ます。

しかし、不動産をいくつも所有している方が限られており、そもそもこの方法が取れる方は多くありません

また、債権者からしても、担保に差し入れられる不動産の価値は控え目に算定するため、残存する住宅ローン額を大きく上回る不動産を差し入れなければ、連帯債務者(保証人)を外す了承は得られないでしょう。

ただ、このような不動産を追加担保に入れられる方が、わざわざ連帯債務(保証)によって住宅ローンを組む場合は限られており、この方法を取ることができる場面も相当限られると思われます(私が取り扱った事例で、この方法を取ったケースはありません)。

③ 住宅ローンを借り換える

これまで夫婦で住宅ローンを借りていたものを、上記の例であれば夫のみで住宅ローンを借り換えるという方法があります。

例えば、これまでは瀬戸信用金庫で住宅ローンを借りていたとして、新たに瀬戸信用金庫で住宅ローンを組みなおすこともあれば、別の金融機関である三菱UFJ銀行や尾西信用金庫などで住宅ローンを借り直し、元の住宅ローンを完済することで、借り換えを行うという方法です。

住宅ローンを組んで間もなくの場合はこの方法を取ることは難しいですが、既にある程度返済をしている場合は最も現実的な方法であり、私が取り扱った事例でもこの方法を取ることが多いです。

連帯債務・保証を解消することは簡単ではない

連帯債務、連帯保証を解消する基準は公表されておらず、上で見た方法を取ってもなぜか拒否されてしまうこともあります。

一方で、私が連帯債務を外す交渉に携わったケースでは、丁寧な説明を尽くした結果、住宅ローン債権者から感謝の言葉をもらい、進んで契約変更を実現できたこともありました。

連帯債務・保証を外せるかどうかは非常に大きな問題ですので、お悩みの方はフォレスト法律事務所までご相談下さい。

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この記事を書いた人

フォレスト法律事務所代表弁護士。
弁護士資格の他、ファイナンシャルプランナー、証券外務員一種、宅地建物取引士の資格を保有しており、不動産を含む経済的な問題を得意としています。
離婚・男女問題について、豊富な経験をもとに分かりやすく解説します。

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