ご相談内容
【ご依頼者】Xさん(30代 女性)
【相手】Aさん(不貞相手)、Yさん(不貞相手の妻)
Xさんは、既婚者であるAさんと不貞関係となりました。XさんもAさんも既婚者であるいわゆるW不倫の状況でした。
すぐに不貞の事実が発覚。YさんはXさんを呼び出しました。Yさんは激怒し、Xさんに「責任」を取るように要求。Xさんが「責任」の内容を聞いても、自分で考えるように言われてしまいました。
Xさんはどうしていいか分からず、フォレスト法律事務所に対応を依頼しました。
弁護士の活動
① Yさんの行動に対する警告
Xさんからの依頼を受けた直後、「弁護士である私が依頼を受けたこと」、「今後の連絡は私宛てにすること」などを書いた手紙をYさんに送付しました。
Yさんからの返答はありませんでしたが、Yさんが、Xさんと共通の知人に対し、Xさんとその夫の勤務先や実家の住所などを聞きまわっていることが分かりました。
私は、Yさんに対し、不貞行為の事実を第三者に触れ回ることは名誉棄損罪に該当し得るためすぐに止めるように警告する書面をYさんに送付。YさんがXさん夫妻の情報を探る行動はすぐに止みました。
② 慰謝料の減額交渉
Yさんの代理人は、500万円の慰謝料を請求していました。
本件の事情に照らせば金額が高過ぎるものの、Xさんは本件の早期終結を望んでいたため、若干高額と感じられたものの200万円の支払いを提示。Yさん側もこれに応じました。
③ Aさんに対する求償
Yさんは、Aさんに対する求償権の放棄を求めていました。
しかし、上記200万円はYさんがAさんと離婚することを前提としていたため、離婚するのであれば当方がAさんの求償権を放棄しようがしまいが、Yさんとは無関係なはずです。
この点を指摘したところ、Aさんの求償権は放棄しなくて構わないとの回答を得ました。
すぐに、私は200万円の支払いをする予定であることをAさんに対し知らせました。
Aさんは、不貞行為に対する責任を感じていたためか200万円全額をXさんに支払うと回答しました。
結果、「X→Yに200万円」、「A→Xに200万円」となり、Xさんが実質的に負担した金額は0円となりました。
本件のポイント
① 不貞被害者の誹謗中傷、名誉棄損
不貞被害者が、加害者の共通の知人に連絡をしたり、インターネットやSNS上に不貞行為の情報を書き込むということが、頻繁にとは言わないまでも時折目にすることがあります。
勘違いされがちなのですが、不貞行為があったという事実を公表することは名誉棄損に該当する可能性があり、これは不貞行為があったことが真実であったとしても結論は異なりません。
被害者が怒りに任せて不貞行為の事実を公表してしまえば、被害者側も名誉棄損という犯罪の加害者となってしまったり、慰謝料請求の対象となってしまいます。また、不貞加害者も不貞行為の事実が世間一般に広く知られるという大きな損失を被ることとなります。
このように、不貞行為を公表するということは双方にとって不利益でしかありません。
② 安易に求償権の放棄に応じるべきではない
不貞行為は、当然ながら1人で行うことはできず、男女で行うものです。
本件ではXさんとAさんが共同して違法な行為をした状況にあります。
よって、不貞行為の慰謝料を支払義務も法的には2人が一緒に負うと考えられます。
この考え方を前提とすると、不貞行為の慰謝料を一方の当事者(本件のXさん)が全額支払った場合、他方当事者(本件のAさん)は自分が支払うべき部分を代りに立て替えてもらった状態となりますので、全額支払った人(Xさん)に対し、肩代わりしてもらった自分の責任部分を支払う必要があります(この部分の支払いを求償といいます)。
Yさんは当初、Aさんに対しての求償権を放棄するよう求めていました。
Yさんが、Aさんと離婚をしないということであれば、Aさんに対しての求償請求は、同一世帯であるYさんに対する請求と同じ意味を有しますのでYさんの要求も合理的です。しかし、YさんはAさんとの離婚を前提として高額な慰謝料を請求していましたのでYさんのスタンスは一貫していないように見えました。
本件では、Aさんに対して慰謝料の支払いについてお話したところ、全額を負担するとの合意を取り付けることができました。仮にYさんの求めに応じて求償権を放棄していれば、Xさんが全額を負担しなければならなかったのですから、結論として大きな違いが生じることとなりました。