外国人を相手とする裁判 嫡出否認、離婚の裁判で全面的に主張が認められたケース

出生届
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ご相談内容

【ご依頼者】Aさん(30代男性)

【家族構成】妻Bさん、子1人

Aさんは、外国人であるBさんと職場で知り合い、結婚しました。

結婚した当時、二人は同居しておらず、性行為をしたこともありませんでした。

Aさんは、Bさんと定期的に会い、買い物に行くことはありましたが、突然、Bさんと連絡が取れなくなりました。

Bさんは、長期間に渡り母国に帰国していたようですが、帰国すると妊娠していることが分かりました。

妊娠した子はAさんとの子でないことは明らかでしたが、出生した子はAさんの子として届出がされました。

Bさんは出産した後、行方が分からなくなってしまいました。

Aさんは、Bさんとの離婚を求めると共に、産まれてきた子が自分の子でないことを明らかにしたいと考え、その対応をフォレスト法律事務所に依頼しました。

弁護士の活動

① 嫡出否認緒亭、離婚調停の申立て

Bさんの行方は分からなかったものの、Bさんが離婚問題について依頼をしている法律事務所を書類の送付先として、嫡出否認調停と離婚調停を申し立てました。

Bさんは、調停の中で、産まれてきた子とAさんとの間には生物学上の親子関係にないことは認めつつ、Aさんの同意のもと、母国での精子提供を受け出産をしたことから、子はAさんと(法律上の)親子関係にあると主張しました。

Aさんが精子提供に同意をした事実はなかったため、病院に提出したと言う同意書を提出するよう求めましたが、Bさんは以後、調停に参加しなくなってしまったため、調停は不成立となり終了しました。

② 嫡出否認、離婚の裁判

調停が終了して間もなく、嫡出否認と離婚を求める裁判を申し立てました。

子とAさんとの生物学的つながりがないことを示す客観的な資料はありませんでしたが、調停でのやり取りを詳細に訴状に記載したところ、判決ではAさんと子の間に生物学的親子関係がないと認定され、子がAさんの嫡出諮であることの否認が認められました。

同時にBさんとの離婚も認められました。

本件のポイント

① 嫡出否認

Bさんは、婚姻中に妊娠したため、妊娠した子はAさんの子と推定されます(嫡出推定といいます。)。

よって、自分の子供ではないとして、戸籍から子の記載を外すためには嫡出否認の訴えという手続が必要となります。

嫡出否認の手続では、生物学上の親子関係があるかどうかについて、DNA鑑定等を用いて判断がなされます。

しかし、本件は、生物学上のつながりがないことには争いがなく、Aさんが第三者からの精子提供による妊娠に同意をしていたか否かが争点となるという点が特徴的でした。

現在は、「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」という法律ができ、第三者の精子提供による妊娠に同意した夫は、子が嫡出でることを否認することができないとされています。

当時は、法整備がされていなかったものの、上記法律と同様、精子提供に対する同意の有無を要素とするものと考えられていたため、「同意がなかったこと」を具体的に説明し、裁判所の理解が得られました。

② 外国人との裁判

外国人を相手とする裁判では、日本の裁判所で裁判を行うことができるか(国際裁判管轄)の問題と、どちらの国の法律により判断すべきか(準拠法)の問題があります。

離婚については、日本法が準拠法となりますが(法の適用に関する通則法27条但書き)、嫡出の問題については日本法だけでなく、外国の法も確認する必要がありました(同28条1項)。

Bさんの国の法律は、日本の法律と仕組みが異なり、文献も出回っていないものでした。

調べる手段も限られており、この法律を調べる点に一番苦労しました。

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