親権者変更の判断基準|家庭裁判所が重視するポイントを解説

離婚時に決めた親権者について、離婚後に変更したいと思った場合、家庭裁判所で調停又は審判を行う必要があります。

親権者の変更について、父母双方の意見が対立する場合、調停での解決は難しく、審判によって変更の可否が決まりますが、「家庭裁判所がどのような基準で判断をしているか」をあらかじめ把握しておくことが重要です。

しかし、家庭裁判所の判断基準は非常に分かりにくく、インターネットで調べてもよく分からないと思っている方も多いのではないでしょうか。

このページでは、家庭裁判所が親権者変更の判断をする際にどのような事情を見ているか(見ていないか)について解説していきます。

ご自分の事情に当てはめて読み進めてください。

なお、親権者変更の流れについては、以下のページをご覧ください。

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目次

家庭裁判所の判断基準

まず、親権者変更について、法律がどのように定めているか見てみましょう。

民法819条

6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

法律は、親権者を変更することができる場合を、「子の利益のため必要があると認めるとき」としか規定していません。

「子の利益」という目に見えないものを基準とすることはできませんので、家庭裁判所は、以下の具体的な事情を総合的に考慮して、親権者を変更することが「子の利益」のためとなるか判断しています。

「子の利益」の判断基準
  • 監護態勢、意欲、能力の優劣
  • 監護の継続性
  • 子の意思、年齢
  • 親権者変更を望むに至った動機、目的

それぞれ、具体的に見ていきましょう。

監護態勢、能力、意欲の優劣

離婚時に親権者となった方の監護態勢や監護能力・意欲と、変更後に想定される親の監護態勢等を比較し、どちらがより子の利益のためになるかを判断するものです。

監護態勢」とは、親が子どもに対して行う養育の行動、親が子どもに対して提供できる養育環境をいいます。

具体的には、居住環境や経済状況、通学(通園)先等の教育環境、子どもの交友関係など、家庭外の環境も含まれます。

上記の他、子どもの監護を補助してくれる親族がいるか、親族に期待できる補助はどの程度のものかも監護態勢に含まれます。

監護能力・意欲」は、文字通り、親が子どもを監護する能力や意欲のことを指しますが、実務上よく見られるのが、子どもの日常の世話(食事、着替え、入浴、寝かしつけ、遊びの相手、定期健診や予防接種など)について、具体的に何を、どこまでできるかという点です。

また、子どもに持病、障害などがある場合、治療に対応できるかといったことが問題となるケースもあります。

監護態勢や監護能力があることを示す際、過去の監護実績は重要な判断要素となります。

しかし、子どもの成長に伴って、必要となる監護態勢、能力にも変化が生じるため、過去の実績のみで判断されることはなく、今後の生活で必要となる監護態勢、能力を具体的に説明していくことが重要です。

近年は、共働きも珍しくなくなり、父母双方が育児を分担しているケースも多く、双方が監護態勢や能力が優れていると主張しあう事案も多くなりました。
監護態勢や監護能力があることを、家庭外の第三者(=裁判官)に理解してもらうことは簡単ではありません。
父母共に育児を分担してきたようなケースでは、写真や動画、過去に投稿したSNSの画面などを引用しつつ、具体的に態勢や能力が優れていることを説明していくことが重要です。

監護の継続性

現在、子どもが置かれている環境を継続しておくこと(現状維持)が、子どもの利益につながるか否かという視点です。

特に、子どもの年齢が高い場合、学校や部活動、習い事など、家庭外で交友関係ができあがっているため、親権者の変更に伴って、転校等をする必要がある場合は子の利益に反すると考えられる可能性があります。

他方、現在の親権者が養育をしない場合はもちろんのこと、同居する親族と子の折り合いが悪い持病の治療をするにあたって専門医療を受けることができない場所に住んでいるといった場合、現在の生活を継続するよりは、環境を変更する方が子の利益に資すると判断されることもあるでしょう。

なお、父母双方の監護態勢、監護能力に優劣が見られない場合、現状維持が子どもの利益に即しているとして、親権者変更が否定される傾向にあるといわれています。

子の意思、年齢

親権者変更についての子どもの意思は、状況に応じて取り扱いが異なります。

一般に子どもが15歳以上の場合、物事の判断や自分の気持ちを表現できるようになると考えられているため、本人の意向に沿って変更の有無が判断される可能性が高くなります。

逆に、子どもがまだ幼い場合、自分の気持ちを的確に表現することは難しく、外部的な要因によって感情も変化しやすいため、子どもの希望が変更の有無に与える影響は小さくなります。

子どもの意思は家庭裁判所の調査官が、裁判所や子の自宅で意見を聴取する方法で確認されます。

子どもの意思は、家裁調査官が子どもと会って確認をし、その結果を調査官が調査報告書の形式にまとめ、裁判官と当事者が結果を知らされることになります。
私は、数多くの調査報告書を見てきましたが、よく調査されていると思うこともあれば、「なぜこんな結果が出てきた?」と驚くようなこともあり、調査の良し悪しにバラつきがあることは事実です。
子どもの意思確認は、調査官が質問をし、子どもが回答するというやりとりを繰り返して行われますが、質問の仕方によって子どもの回答も変わります。
調査結果は真摯に受け止める必要があるものの、不自然な調査結果に対しては、具体的にどのようなやり取りがあったのか、「〇△の質問はしたのか?」など、調査方法が妥当なものであったのか確認することが重要です。

親権者変更を望むに至った動機、目的

離婚時に親権者を決めた後、変更を希望するに至った動機や目的も重要な要素となります。

中には、離婚後に特段事情の変更はないものの、「気に食わない」という感情的な理由で親権者変更を申し立てるケースもありますが、そのような理由で変更が認められることはありません。

では、離婚後に事情の変更がない場合は一切変更が認められないか?というとそうでもありません。

協議離婚において、父母共にあまり深く考えず親権者を決めたものの、その後生活をしてみて、やはり親権者が他方であるべきと考えたようなケースでは、そこまで厳密に事情変更は要求されず、実際にどちらが親権者となるべきかを考慮して判断するものとされています。離婚時に深く考えずに決めたケースにおいて事情変更が必要と厳密に考えてしまうと、かえって子どもの利益に反することにもなります。

ただ、当然のことですが、変更することが子どもにとって利益になるといえる事情は必要です。

このように、親権者変更の申立てが、子どもの利益を目的としたものかどうかという視点から判断されます。

親権者変更が認められやすいケース、認められにくいケース

ここまで裁判所の判断基準を見てきましたが、親権者変更が認められやすいケース、認められにくいケースを見ていきましょう。

親権者変更が認められやすいケース

① 親権者の虐待、育児放棄(ネグレクト)

現在の親権者が子を虐待する、食事を与えず、身の回りの世話をしないといった育児放棄(ネグレクト)がある場合、親権者変更が認められる可能性は高いです。

② 親権者が監護することが難しくなった

親権者側の事情で子どもを監護することが難しくなった場合も、変更の必要性は大きいといえます。

例えば、親権者が肉体的・精神的な病気を患ってしまい、自分の治療に専念しなければならなくなった、親権者の親族の介護が必要となってしまい、育児をするだけの余裕がなくなってしまったといったケースです。

③ 子の病状が悪化してしまった

子どもに持病や障害がある場合で、離婚後、明らかに病状や症状が悪化してしまったようなケースです。

この場合、現在の親権者において養育するよりも、他方の親が治療に当たる方が症状の改善が見込めるのであれば、変更の必要性は大きいと考えられるでしょう。

親権者変更が認められにくいケース

① 変更すべき理由が具体的でない

親権者変更は、子どもの生活環境に大きな変化をもたらすものですので、簡単に認められるべきものではありません。

親権者を変更すべきと考えられるとしても、その理由が「何となく自分の方が良さそう」、「根拠はないが、相手が育てられるはずがない」といった漠然としたものであれば、変更が認められることはないと考えていいと思います。

② 面会交流(親子交流)が実施されない

離婚時に面会交流の取り決めがされたものの、取り決め通りに面会が実施されないということがあります。

面会交流の有無は、親権者の所在を判断する際の事情となるものの、面会交流を実施しないことだけで親権者の変更が認められる可能性は極めて低いです。

このような問題に直面された方は、再度面会交流調停を申し立てるなどの方法を取った方が問題解決に近いといえます。

③ 変更すべきか判断しがたい

諸事情を考慮した結果、双方の能力や環境が甲乙つけがたい場合、現状を維持しても問題がないともいえますので、変更を認めないという判断に傾きやすいといえるでしょう。

親権者変更の審判が難しい理由

親権者変更の審判が難しいと言われる理由は主に以下のとおりです。

判断基準が曖昧で抽象的

法律が定める基準は「子の利益のため」だけであり、非常に抽象的です。

また、実務上は上で見たような「監護態勢、意欲、能力の優劣」、「監護の継続性」、「子の意思、年齢」、「親権者変更を望むに至った動機、目的」を総合的に見て判断がされますが、具体的な事情がどのように評価され、各基準がどの程度の比重で判断されているかは、判然としません。

財産分与や養育費のような金銭請求の場合は、資産や収入といった明らかな基準があることと比べると、親権者変更の判断基準は非常に曖昧・抽象的であり、当事者の活動も難しくなります。

事実を的確に主張することが難しい

「子の利益のため」に変更が必要であることを説明していく必要がありますが、膨大な事実を的確に取捨選択し、整理して主張をしていかなければなりません。

親権者変更を求めるに至った背景には、沢山の事情が積み重なっていることが通常ですが、そのような場面では、どうしても全ての事情を主張したいと思いがちです。

しかし、その結果、膨大な事情が主張されるものの、「なぜ変更が必要なのか」という最も重要な点が説得的に伝わらず、請求が認められないということも少なくありません。

何を主張し、何を主張しないか」、「どのような優先度でどのように主張するのか」の判断は、非常に難しいです。

事実を証明することが難しい

主張すべき事実が選定できたとしても、次に証拠で事実があったことを証明する必要があります。

しかし、親権者変更で主張すべき事実は、大半が家庭内で起こったことであり、必ずしも客観的な証拠で証明できるわけではありません。

このように、証拠収集が難しいということも、親権者変更を難しくする大きな要因といえます。

短期間で的確に活動することが必要

親権者変更の手続が続いている間も、子どもは現在の親権者の元で生活をし、生活環境は強固なものとなっていきます。

そのため、変更を望む側としては、短期間で必要な事情を全て主張しつくし、早期に結果が出るように行動する必要があります。

この短期間で的確に活動することは容易ではなく、実際に活動する中でも苦労する点です。

弁護士に依頼するメリット

親権者変更の問題を弁護士に依頼するメリットは以下のとおりです。

手続に必要な準備を短期間で整えられる

親権者変更の手続は、短期間に申立まで至る必要があります。

「どの裁判所に申立てるの?」、「必要書類は?」、「必要書類以外に何を提出すると好ましい?」といった悩みは、時間を掛けて調べれば一定の答えにたどり着くと思いますが、弁護士に依頼することによって最短で答えにたどり着くことができます。

専門家の視点から主張や証拠の選別ができる

具体的な事情のもと、「何を主張し、何を主張しないのか」、「どのような証拠を提出すべきか」の判断は非常に難しいものです。

弁護士であれば、過去の経験や審判例から、法的に有利な判断をすることが可能です。

また、当事者ではなく、第三者の視点で事案を見ることで、当事者が気付いていない事実や証拠を発見することにつながることもあります。

審判期日や調査期日の準備も可能

審判期日では、裁判官が直接当事者に対し話を聞き、心証を形成していきます。

また、調査官の調査においては、調査官が父母から直接話を聞き、事情を把握します。

当事者としては、嘘偽りなく話をしたとしても、短時間の対話では誤解を招く話し方をしてしまうこともあり、的確に話をすることは簡単ではありません。

弁護士が代理人であれば、審判期日、調査期日に立ち会いますので、弁護士が補足説明をすることもできますし、事前に想定される質問について準備をすることも可能です。

親権者変更についてよくある質問(FAQ)

親権者変更にかかる時間は?

親権者変更にかかる時間は、ケースによって異なりますが、早いケースでは2~3か月程度、長期のものとなると1年以上かかることもあります。

親権者変更の費用はどれくらい?

親権者変更にかかる費用は、裁判所に支払う収入印紙(子1人につき1200円)、郵便切手(裁判所によって異なります。)の他、弁護士に依頼する場合は弁護士費用が含まれます。
弁護士費用は依頼する弁護士によって異なりますので、事前に確認してください。

父親に親権者を変更するのは難しいですか?

以前は、母親が親権者となるべきという考え方(母性優先の原則)がありましたが、現在はこの考え方だけで判断がなされることはありません。

事情によっては、父親に親権者を変更するという事案も存在しており、父親だから難しいということではありません。

まとめ

親権者変更は、子どもの未来に大きな影響を与える重要な手続です。

これまで見たように簡単な手続ではありませんが、本当に変更が必要なケースであれば諦めることなく、変更を求めるべきです。

本ページで解説した事項は、手続を進める際に必要な考え方の一部に過ぎませんので、ご自身の問題で具体的にどう対応すべきかお悩みの方はフォレスト法律事務所にご相談下さい。

友だち追加

この記事を書いた人

フォレスト法律事務所代表弁護士。
弁護士資格の他、ファイナンシャルプランナー、証券外務員一種、宅地建物取引士の資格を保有しており、不動産を含む経済的な問題を得意としています。
離婚・男女問題について、豊富な経験をもとに分かりやすく解説します。

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