ご相談内容
【ご依頼者】Xさん(30歳代 男性)
【ご家族構成】妻Yさん、子1人
妻Yさんは結婚後間もなくXさんとの子を妊娠しました。
出産予定日が間近に迫ったある日、XさんとYさんは些細なことから口論となり、Yさんは実家に帰り、別居を開始。
Yさんは、家に戻ることなく、婚姻費用の分担と離婚を求める調停を申し立てたため、Xさんはその対応をフォレスト法律事務所に依頼しました。
弁護士の活動
① 面会交流調停の申し立て
XさんはYさんとの離婚を望んでいなかったため、夫婦関係円満調停を申し立て、夫婦関係の再構築を目指すことにしました。また、別居後に出生した子どもと一度も会っていなかったため、面会交流を求める調停も合わせて申立てました。
離婚、円満調停は早々に不成立で終了、婚姻費用も合意が成立。面会交流の調停のみが残りました。
Yさん側は、「離婚の問題が残っており、夫婦間の葛藤が大きい」ことを理由に面会交流の実施を強く拒絶。
私は、離婚問題と切り離して面会交流を実施できないか、粘り強く求め続けましたが、Yさんの考えは変わらず、協議は平行線のままでした。
② 裁判官の不当な働きかけ
私とXさんが調停室に入ると、中央に男性裁判官(以下「M氏」といいます。)が座っていました。
M氏は、この調停を担当する裁判官ではありませんでしたが、M氏が無関係な調停の調停室にいる理由も明らかにされませんでした。
M氏は、私たちに「担当ではないですが、面会に詳しい裁判官です。」と自己紹介をした後、「直接の面会を求めているようだけど、夫婦間で離婚することについて紛争になっているんだから直接の面会は認められないです。このまま直接の面会にこだわるなら、間接交流もできなくなります」とまくしたてました。
調停室には、調停委員2名の他、家裁調査官も在室していましたが、異様な雰囲気に誰も武藤氏を制止することはできず。
Xさんは、反論することも許されず、「このままでは、子どもの写真すら見ることができない」と脅されたことに悔しさから嗚咽が止まらなくなってしまいました。
M氏は、Xさんの様子に配慮することなく、「どうするんですか。このまま主張を続けるんですか。」と更にまくしたてたため、私は、「一旦退席して検討する」と告げ、Xさんと部屋を出ました。
Xさんは、M氏の発言に疑問を持ちつつも、生まれた子どもの顔を見たことはなく、万一写真ですら顔を見られないなどということは耐えられないと考え、定期的な写真の送付を約束するという間接交流による面会交流を行うとの調停を成立させました。
③ 再度の面会交流調停と離婚の成立
全ての調停が終了した後、YさんはXさんに対し、離婚を求める裁判を申し立てました。
この頃、Xさんは、Yさんとの復縁を求める気持ちをなくしていたため、基本的に離婚に応じる考えではあったものの、どうしても子どもと直接会いたいと願い、再度面会交流調停を申し立てました。
結果、離婚をする和解が成立するのと同時に、第三者機関を利用した面会交流に応じるという調停も成立しました。
本件のポイント
① 「夫婦間の高葛藤」が面会交流の障害となるか
Xさんのケースに限らず、「夫婦間の高葛藤」が面会交流の障害事由として主張されることがあります。
確かに具体的な状況次第では、高葛藤下で面会交流を実施することが現実的でない場面があることは事実です。
ただし、そのような状況にあるのであれば、面会交流が拒否する側としては、面会交流を実施することの不具合、不都合さを具体的に主張する必要があります。
具体的に主張することで、解決すべき問題は何か(例:夫婦間の感情の問題なのか、父子・母子の問題なのか等)、そもそも解決できる問題なのかといったことを含め、双方が具体的な課題を設定することができるようになるので、いたずらに感情をぶつけ合ったり、疑心暗鬼になるような事態を回避することにつながります。
② 「裁判所が間違うこともある」ということを意識すること
調停手続は、当事者が調停委員を介して話合いを続け合意を目指す手続きであって、裁判所が一方の立場に肩入れし、特定の結論を押し付けることや「直接交流が認められない」と結論を断定することは許されません。
この点で、M氏の調停での上記振舞いは明らかに不当なものでした。
しかし、私自身反省すべきは、裁判所(官)が間違えることはない、裁判官の言うことに強く反論してはいけないと思い込んでいた節があり、目の前で裁判官から不当な扱いを受けている依頼者を守ることができなかったことです。
この経験から、私は裁判官、裁判所でも誤ることはある、間違ったことをされればその場で抗議しなければ不当に権利が侵害されてしまうこともあるということを学び、実際に行動に移しています。
真面目な方、争いを好まない方など、一般的に「いい人」と言われる方ほど、同じような被害に遭いやすいため、本ページを参考に自らの権利を守られる行動を取ってください。