モラハラの証拠は日記のみ。裁判でモラハラ離婚を実現したケース

目次

ご相談内容

【ご依頼者】Xさん(30歳代 女性)

【ご家族構成】夫Yさん、子

Xさんは、夫Yさんのモラハラを理由に離婚を望んでいました。

Xさん夫妻は、飲食店を営んでおり、Xさんは妊娠していましたが出産直前まで店を手伝っていました。

店を手伝うこと自体はXさんも望んで行っていましたが、YさんはXさんの体調を気にかけず、店を手伝うのは当然のこと、立っていることがきつくて座っていたXさんを見て「客の前で座るな!」と怒鳴るなど、Xさんに対しての態度は非常に酷いものでした。

Xさんは出産した後、Yさんとの関係を見つめなおし、このまま婚姻生活を続けていては一生モラハラの被害に悩まされてしまうと思い、生後間もなくのお子さんを連れて別居を開始。すぐに弁護士に離婚の対応を依頼しました。

弁護士の活動

Xさんは、結婚前から日記をつけていました。

日記は非常に細かく記載されており、Yさんの暴言や酷い言動が事細かく記載されていました。

記載された内容、記載方法を見ても、事後的に作成されたものとは思えず、本当に起こったことを記載していることはすぐに分かりました。

私はXさんの日記を見て、正面からモラハラを離婚原因として離婚を請求するという方針を立てました。

① 調停

これまでのYさんの態度を見るに交渉を始めても功を奏しないと思われたため、最初から調停を申し立てることにしました。

離婚調停と婚姻費用分担調停を申し立てましたが、婚姻費用分担調停はスムーズに合意に至りました。

他方、離婚調停では、離婚については合意が得られたものの、生後間もない子どもの親権をYさんが主張し、Xさんが勝手に出て行ったことを根拠に多額の慰謝料の請求をしたため、離婚は合意に至らず。Xさんは裁判を申し立てることにしました。

② 裁判

離婚調停が早期に終結してしまったため、離婚裁判を申し立てた時点で別居期間は半年程度でした。

裁判で離婚が認められる原因の一つとして「長期間の別居」がありますが、当時の状況では明らかに別居の期間が短かったです。

しかし、私はXさんが作成した日記によって、世間一般で見られる以上に酷いモラハラがあったことを裁判所に理解してもらえると思ったため、裁判手続ではXさんの日記を分かりやすくピックアップし紹介することに努めました。

Yさんは裁判でも自分が正しいとしてXさんに慰謝料を請求し、子どもの親権を渡すように主張し続けていました。

裁判は尋問手続へ移行しましたが、尋問を行った裁判官がYさんに対して「このままでは離婚が認められるから早く和解すべき」と強く説得したため、Xさんを子どもの親権者として離婚を成立させる和解が成立しました。

本件のポイント

① モラハラの証拠収集の難しさ

Xさんのケースでは、経営する飲食店内でモラハラが行われていたので、完全な密室での出来事ではありませんでしたが、一般的にモラハラは室内という密室内で行われるものですので証拠を集めることが非常に困難です。

当初、Xさんは自分の日記が証拠になるとは考えておらず、証拠がないと言われていました。

私がXさんと話をする中で、何気なく日記の話が出てきたため、試しに読ませてもらったところ、予想外に詳細な記載であり、証拠となり得るものと判断しました。

何が証拠になるのかの判断は難しいので、ご自身で証拠とならないと思っても、ダメ元でいいので弁護士に見せてみてください。中には重大な証拠が紛れているかもしれません。

② モラハラも離婚原因となり得る

モラハラは、それ単独では離婚原因になりにくいと言われており、別居期間などと合わせて離婚原因(婚姻を継続し難い重大な事由)になると言われています。

Xさんのケースでは、裁判を始めた時点で別居期間は半年程度であり、別居期間としては非常に短い状況で裁判を始めました。

その後、尋問を行った段階でも別居期間が長期間になっていたとは言えず、モラハラが無ければ離婚は認められていなかったと考えられます。

このように、別居期間が短い場合でも、モラハラを具体的に主張することによって離婚が認められることがあるという意味で、同じ境遇でお悩みの方には励みとなる事例であると思います。

この記事を書いた人

フォレスト法律事務所代表弁護士。
弁護士資格の他、ファイナンシャルプランナー、証券外務員一種、宅地建物取引士の資格を保有しており、不動産を含む経済的な問題を得意としています。
離婚・男女問題について、豊富な経験をもとに分かりやすく解説します。

目次