ご相談内容
【ご依頼者】Xさん(30代 女性)
【ご家族構成】夫Yさん、子2人
Xさんは、夫Yさんと2人の子供の4人家族でした。
XさんとYさんは夫婦仲が悪く口論が絶える日はありませんでした。
ある日、Xさんが1人の子を連れ買い物に出かけ、その間もう1人の子をYさんがみていることになりました。
しかし、Xさんが自宅に戻るとYさんと子供の姿は見えず。
Yさんは、子供を連れて実家に帰り別居を開始してしまいました。
Xさんは、子供を返すように求めましたが、Yさんは「お前が悪い」の一点張りでXさんの要望を聞かず。
Xさんは子供を取り戻すべく、フォレスト法律事務所に対応を依頼しました。
弁護士の活動
① 監護者指定・子の引き渡しの仮処分審判を申立て
Xさんの相談を受けた私は、緊急で対応する必要があるとすぐに分かったため、他の予定を別日に移動してもらい、監護者指定、子の引き渡しの仮処分審判の申立書の作成に当たりました。
Xさんには連日事務所に来てもらい打合せを重ねたことで、依頼を受けてから約3日で裁判所に申立書を提出することができました。
② 長期化する手続
仮処分手続の審問期日は早期に開かれましたが、双方の言い分は激しくぶつかりました。
調査官調査を実施し、双方の家の家庭訪問、子と監護補助者の聞き取り等が行われました。
調査事項は非常に多く、調査報告書が出来上がるまでに4か月が経過していました。
その後、双方が主張を尽くした結果、家庭裁判所はXさんを監護者と指定し、Yさんに対し、子供を引き渡すよう命じる審判を出しました。
Yさん側はこの審判に即時抗告を申し立て。
しかし、即時抗告も棄却され、Xさんを監護者と指定する審判が確定しました。
③ 強制執行の準備と引き渡しの実現
子供をXさんに引き渡すよう命じる審判が確定しましたが、Yさんは子供を引き渡そうとしませんでした。
そこで、私は、強制執行の準備を進め、申し立てる前段階でYさんに引き渡さなければ強制執行を申立てることを強く警告しました。
結果、YさんはXさんに対し子供を引き渡したため、強制執行は申し立てずに済みました。
本件のポイント
① 仮処分手続でも時間がかかる
子供の連れ去り等が起こり、取り戻しを求める緊急の必要性がある場合、仮処分手続という手続を利用します。
仮処分手続は、本来慎重に審理をして結論を出す調停や審判手続を待っていては権利が実現できない場合に、暫定的に結論を出すものです。
暫定的に結論を出す分、慎重を取ることができないといえる程度の緊急性が必要となりますが、必要となる緊急性の程度は非常に高く、容易に認められるものではありません。
また、緊急性が認められるとしても、仮処分の申立て→審問手続→調査官による調査というプロセスを経れば、あっという間に2か月程度の時間は経過してしまいます。
本件は、緊急性の高いケースだと判断されたため、ご依頼を受けてから3日という極めて短い時間で全ての資料を調え、全ての事情を説明する文書を作成裁判所に提出しました。しかし、上記のとおり、調査官調査が終了するまでの間、結果的に4か月の期間を要してしまいました。
仮処分手続は暫定的な手続であるとはいえ、いい加減に結論を出すことができないのは確かですが、緊急性の高いケースに対応できるように、より早く完結する手続が必要であると痛感させられた事例でした。
② 子供を連れ去ったことによる代償は非常に大きい
本件では、Yさんが子供を連れ去った後、手続を経て、Xさんのもとに子供が引き渡されました。
その後、Yさんは、子供との面会交流を求めましたが、子供が再度Xさんの元に帰れなくなることを怖がってしまっていたこと、XさんもYさんに子供を引き渡すことに強い恐怖感を持ったことから、面会交流を実施することができなくなりました。
仮に、Yさんが面会交流調停/審判を申し立てたとしても、直接交流の実施を命じる審判を獲得することは難しかったと思います。
このように、子供を連れ去ってしまった場合その代償は極めて大きかったです。
③ 監護者としての適格性を端的に説明する難しさ
監護者指定の手続では、相手が監護者として適格でないことを言うだけでは不十分であり、積極的にこちらが適格性を有することを説明する必要があります。
また、相手が子供を監護養育している状況にあることから、監護者の審理は短期間で終結することが望ましく、端的に当方の適格性を説明する必要があります(逆に、相手の主張も端的に反論することが求められます。
簡潔な主張は同種の事件の経験を積み重ねる他ありませんが、フォレスト法律事務所では監護者指定の事件を多数扱ってきた経験があるため、的確な主張を行うことができたと自負しております。





