養育費が支払われない!強制執行の方法、必要書類、注意点を解説します。

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このようなお悩みを持つ方を対象としたページです

・ 公正証書で養育費の支払いを取り決めたが、支払いがされなくなってしまった。

・ 養育費の調停が成立したが支払いがされなくなってしまった。強制執行まではしたくないが方法はないか?

・ 相手の給与や銀行預金から養育費を回収したい。

・ 相手の勤務先や財産が分からないが、強制執行をすることはできないか?

養育費の支払いについて、公正証書を作成したり、調停・審判で支払額が決められた場合、絶対に養育費が支払われると思ったはずです。

しかし、公正証書や調停・審判を経ても、残念ながら支払いが途絶えてしまうケース(中には1度も支払われなかったケースもありました。)が散見されます。

せっかく苦労をして獲得した公正証書・調停、審判調書も使い方を間違ってしまえば水の泡となってしまいます。

このページでは、公正証書や調停・審判によって養育費の支払いを取り決めたにもかかわらず、支払いが途絶えてしまった場合に行うべきことを一挙に解説するものです。

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目次

強制執行以外の方法

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まずは、強制執行以外の方法について見ていきます。

ここからの説明は、家庭裁判所の調停・審判調書を持っている方が対象となります。

公正証書を作成した方は、強制執行以降の箇所をご覧ください。

履行勧告  

家庭裁判所で成立した調停や審判について、調停条項や審判主文に記載された義務を守らない人に対して、家庭裁判所が義務を履行するように勧告する手続です。

履行勧告のメリット・デメリット   

メリットは、「履行勧告の申し出に費用が掛からないこと」です。

コピー代等、事務作業に付随して発生する費用を除けば、費用がかかりませんので、非常に安価に申し出をすることができます。

また、強制執行と比べると相手との軋轢も生じにくく、この点がメリットとなるケースもあります。

デメリットですが、強制力がないということです。

履行勧告はあくまで「勧告」ですので、相手が勧告を無視してしまえば、履行勧告はそこで終了してしまい、支払いを確保することはできません。

この「強制力がない」というデメリットは非常に大きいものです。

養育費の支払いが途絶える場合、通常は勧告があったくらいで支払うようになることは考えにくく、結局差し押さえを検討しなければならなくなってしまいます。

履行勧告の方法    

履行勧告は、調停・審判が行われた家庭裁判所に申し出をすることにより行われます。

履行勧告の申し出の際に提出する書面は以下のとおりです。

  •  履行勧告申出書 (家庭裁判所によって様式が異なりますので、申し出予定の家庭裁判所に問い合わせください)。
  •  支払われていないことが確認できる預金通帳の写し等

履行命令 

履行勧告同様、審判で定められた金銭の支払いを怠った場合が対象となりますが、履行勧告と異なり、勧告にとどまらず、裁判所が相当の期間を定めて義務の履行を命令する手続です。

履行命令のメリット・デメリット

履行勧告同様、申立てに費用はかかりません

また、履行勧告と異なり、正当な理由なく義務を履行しない場合は10万円以下の過料処分が課されるため、間接的に支払いを強制するものとなります。

しかし、相手が履行命令が出ても支払いをしないとして、過料の処分が課されても、その過料は自分に支払われるものではありません

また、履行命令を無視した場合、結局は強制執行をしなければならないため、遠回りな手続であるともいえます。

ここまで見たように、履行勧告・履行命令は、手続費用が掛からない点で申立てをしやすいと言えますが、この手続によって支払いをするかどうかは相手次第ですし、相手が支払いをしなければ強制執行をしなければなりません。

そういった意味で、私は養育費の未払いの問題については履行勧告・履行命令にメリットを感じる場面が少なく、このあと解説する強制執行を行うことが多いです。

強制執行  

強制執行は、養育費の未払いがあった場合に、相手の財産から未払いとなっている養育費を回収する手続です。

養育費の強制執行では、①相手の給与、②相手の預金を差し押さえることが多いです。

給与の差し押さえ   

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相手の勤務先を知っている場合、相手の毎月支払われる給与を差し押さえることができます。

給与の差し押さえがされると、勤務先である会社に差し押さえをしたことが通知されます。

この通知がされると、会社は、差し押さえられた範囲では従業員(=相手)に給与を支払うことができず、仮に相手に給与を満額払ってしまっても、その効果を申立人に主張することができません。

差し押さえできる範囲

一般の債権は、手取り給料の4分の1までしか差押えができないのに対し、養育費は手取り給与の2分の1まで差押えることができます(民事執行法152条3項)。

また、債権の差押は、支払期限が過ぎて未払いになったものが対象になるのが通常ですが、養育費については一度支払いが滞れば、滞った部分に限らず、将来支払われる養育費についても継続して差押えることができます

よって、一度差し押さえの申し立てをすれば、申立てを取り下げない限り、効果が継続するため、再度差押えの申立てをする必要はありません。

差押えをするのに必要な書類

給与を差し押さえるにあたっては、以下の書類が必要です。

※以下は最低限必要となる書類であり、状況によっては他の書類が必要となることがあります。

  • 債権差押命令申立書
  • 執行力ある債務名義の正本(判決、和解調書、公正証書の場合、執行文の付与を受ける必要があります。他方、家事調停、家事審判については執行文の付与は不要です。)
  • 債務名義の送達証明書(相手が債務名義を受け取ったという証明書が必要です。公正証書の作成や調停成立時において、送達の申請をしていれば、再度送達をすることなく送達証明書を入手できます。しかし、成立時に送達がされていない場合には、再度送達をする必要が生じることになります。)
  • 確定証明書(債務名義が判決や審判の場合、これが確定したことを証明する確定証明書が必要となります。公正証書や調停調書の場合は不要です。)
  • 法人の資格証明書(相手の勤務先が法人(会社)の場合、法人の資格証明書(登記事項証明書又は代表者事項証明書)を法務局で取得することになります。勤務先が個人事業主の場合は不要です。)

預金の差し押さえ

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相手名義の銀行、信用金庫の預貯金を差し押さえる手続です。

差し押さえできる範囲         

給与と異なり、「2分の1」という制限はなく、全額を差し押さえることが可能です。

他方、将来の養育費は対象とならないため、既に未払いとなっている部分のみが対象となり、未払いがある都度、申立てをする必要があります。

差押えをするのに必要な書類

給与の差し押さえで挙げたものと同様です。

相手の居場所、勤務先も財産も分からない場合

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差押えをするにあたっては、相手の現住所、相手の勤務先や財産を特定する必要があります。

これらの情報がない場合は、以下の方法で調べることができます。

住民票、戸籍の附票をたどる

相手が住民票を異動していることが前提となりますが、現住所を住民票や戸籍の附票で調べることができます。

弁護士であれば、住民票、戸籍の附票を取り寄せることが可能です。

金融機関に対する全店照会を行う

預金口座を差し押さえる場合、銀行名の他、支店名、口座番号を特定する必要があります。

「銀行名は分かるけど、支店名や口座番号が分からない」という場合は、弁護士会を経由して銀行に照会することにより、金融機関からこれらの情報が開示されることがあります。

財産開示手続

裁判所の手続の中で、相手の財産を明らかにするよう求める手続があります(財産開示手続)。

この手続自体は2003年に新設されましたが、相手が手続に参加しなかった場合のペナルティが軽かったこと、公正証書を作成した場合は利用できなかったことから、非常に使い勝手が悪いものでした。

このような問題点を改善するため法律が改正され、2020年4月以降は不参加に刑罰が課されるようになりました。

また、「第三者からの情報取得手続」という制度が新たに設けられ、裁判所から市区町村や年金事務所に照会し、相手の勤務先を特定することができるようになりました。

強制執行は弁護士に依頼することをお勧めします

ここまで、養育費の支払いが滞った場合の選択肢について解説してきました。

強制執行や財産開示手続は、申立書の作成が容易でなく、用意する書類も膨大です。

差押え手続は、遅くなればそれだけ回収できないリスクが大きくなってしまうため、迅速に行う必要がります。

養育費の不払いにお悩みの方は弁護士に相談され、一刻も早く不払いの状態を改善してください。

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この記事を書いた人

フォレスト法律事務所代表弁護士。
弁護士資格の他、ファイナンシャルプランナー、証券外務員一種、宅地建物取引士の資格を保有しており、不動産を含む経済的な問題を得意としています。
離婚・男女問題について、豊富な経験をもとに分かりやすく解説します。

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