大学生の子がいる共働きの夫婦が別居をした場合、夫婦が共に子を自分の「扶養親族」として申告するという事態が起こり得ます。
このような「扶養の重複」が離婚問題で生じることがあります。
離婚問題の大きなテーマとはなりにくい一方、扶養の問題は感情的な対立や経済的な損得が生じるため、無視できる問題ではなく、思った以上にストレスがかかってしまいます。
このページでは、あまり触れられることのない扶養の重複について解説をしていきます。
扶養控除の重複とは?
扶養の重複とは、1人の扶養されている親族(上記の例で言えば子)を、複数の納税者(上記の例では夫婦の2名)の「扶養親族」として申告する結果、扶養控除の申告が重複してしまう状態をいいます。
扶養親族に該当する親族は、以下の4つの要件に全て当てはまる人です。
(参照)国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
扶養の重複が起こる原因
扶養の重複申告がなされると、通常は税務署又は市役所から「重複してるので、どちらかにしてください」と指導されます。
夫婦関係が円満な状態であれば、誤って重複申告してしまっても、どちらかが取下げをすることになりますので、大きな問題とはなりません。
しかし、離婚を前提として別居をしている間や離婚後に一方が養育費を支払っているような場合には、夫婦間で意思疎通を取ることが難しく、問題化してしまうことがあります。
扶養申告が重複するとどうなるの?
扶養申告が重複した場合、以下の順で解決方法を検討していきます。
(以下、夫婦ともに扶養控除の要件を満たしていることを前提としています。)。
① まずは、協議でいずれか一方を扶養者とできないか試みる
法律は、扶養控除の要件を満たしている限りは、どちらを扶養者として申告するかを当事者の選択に委ねています。
よって、夫婦共に要件を満たす場合、いずれとするかについて、まずは協議した上で、どちらを扶養者とするか決めることになります。
② (「協議ができないor協議がまとまらない場合」)→先に「扶養の申告をした方」を扶養者とする(先後が分からない場合は、所得が多い方とする)
所得税法施行令219条2項は以下のように規定しています。
(二以上の居住者がある場合の扶養親族の所属)
第219条 法第85条第5項(扶養親族等の判定の時期等)の場合において、同項に規定する二以上の居住者の扶養親族に該当する者をいずれの居住者の扶養親族とするかは、これらの居住者の提出するその年分の前条第一項に規定する申告書等(法第195条の2第1項(給与所得者の配偶者控除等申告書)の規定による申告書を除く。以下この条において「申告書等」という。)に記載されたところによる。ただし、本文又は次項の規定により、その扶養親族がいずれか一の居住者の扶養親族に該当するものとされた後において、これらの居住者が提出する申告書等にこれと異なる記載をすることにより、他のいずれか一の居住者の扶養親族とすることを妨げない。
2 前項の場合において、二以上の居住者が同一人をそれぞれ自己の扶養親族として申告書等に記載したとき、その他同項の規定によりいずれの居住者の扶養親族とするかを定められないときは、次に定めるところによる。
① その年において既に一の居住者が申告書等の記載によりその扶養親族としている場合には、当該親族は、当該居住者の扶養親族とする。
② 前号の規定によつてもいずれの居住者の扶養親族とするかが定められない扶養親族は、居住者のうち総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額又は当該親族がいずれの居住者の扶養親族とするかを判定すべき時における当該合計額の見積額が最も大きい居住者の扶養親族とする。
所得税法施行令
要するに、①先に扶養控除を申告した方が優先する、②申告の先後が分からない場合は、所得が大きい方とする
ということです。

上記法律の規定は、非常に杓子定規なものであり、そのまま適用してしまうと実態と大きく異なる取り扱いがされてしまう場合も出てきます。
実務上、どのように処理されているかについて税務署、市役所に問い合わせてみたところ、上記の法律によって一刀両断的に決めてしまうことはなく、極力話合いによる解決を試みるようにしており、それで解決できるケースが大半であるとのことでした。
上記回答は、非公式なものであり、ケースによって結論は異なると思いますが、法律によって「どちら」と決めてしまうよりは、実情を踏まえて柔軟に決定する方が好ましいことから、まずは「協議」と考えることは非常に合理的であると思います。


