面会交流を拒否された状況から宿泊付きの面会交流調停を成立させたケース

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ご相談内容

【ご依頼者・家族構成】Aさん(40代男性)妻Bさん、子1人

Aさんは、妻Bさんと性格の不一致から離婚を前提として別居をすることになりました。

Bさんが小学生の子どもを連れていくことになりましたが、子どもがAさん、Bさんどちらにも懐いていたので、夫妻は話合いの末、「平日はAさん宅、土日祝日はBさん宅」といったように、子どもが互いの家を行き来しながら生活する方法を選択。

このような生活が数か月続き、特に大きな問題も起こりませんでしたが、離婚の問題も平行線のまま進展せず。

そのような状況でBさんが弁護士に離婚協議の依頼をしたところ、状況が急転し、子どもがAさん宅に行くことを禁じられるようになりました。

Aさんは、急に中止されてしまった面会交流を再開するため、フォレスト法律事務所に相談しました。

弁護士の活動

監護者指定と面会交流調停の申し立て

Aさんは複数の法律事務所を回っていたともあり、フォレスト法律事務所に来られた時点で面会交流は数か月中断され、婚姻費用と離婚の調停がBさんから申し立てられている状況にありました。

Aさんのお話をお聞きしたところ、ちょっとした誤解がきっかけで面会交流が中止されてしまったが、そこまで重大視すべきものではなく、むしろ早期に再開しなければ子どもの精神状態に悪影響が心配される状況にありました。

既にBさんが申し立てた離婚や婚姻費用の調停が始まっていたことから、この調停と同時に審理できるように監護者指定と面会交流の調停を申し立てました。

裁判所の判断

別居した直後は子どもが互いの家を行き来し、この状況こそがベストと思われました。

そこでAさんは、これまで通りに、子どもが互いの家を行き来するという、「あえて監護者を定めない」方法により監護することを希望。

弁護士は、Aさんの希望に沿う裁判所の判断を見つけ、本件でも同様の処理をすべきであることを訴えかけました。

家裁調査官による調査において、子どもは父母共に暮らしたいと希望を述べ、Aさんの考えが子どもの意向にも合っていました。

これに対し、Bさんは、Aさんの意見に猛反対。あくまで、自分の家で子どもを育て、Aさんとは面会交流の機会を与えると反論。

裁判所は、「互いの家を行き来することが子どもの負担になる」、「家が二つあるということは子どもの混乱を招く」といった理由からAさんの主張を否定しました。

裁判所の理屈は一般論としては成り立つとしても、実際に互いの家を行き来していた本件に当てはまらないことは明らかであり、「イレギュラーないことは認めたくない」という考えが前面に出たものといえます。

Aさんの決断

Aさんは「自分の主張を通す」か「親権・監護権の部分で譲歩する代わりに面会交流を充実させる」のいずれかを選ぶ必要がありました。

当時、子どもとの面会交流が実施されるようになりましたが、面会交流自体は毎回うまくいっており、全く問題はなかったです。

Aさんとしては、早く夫婦間の問題を解決し、子どもに安心して面会交流の機会を与えてあげたいと考え、親権・監護権の主張をせず、子どもが強く望んでいる宿泊付きの面会交流の実施を提案しました。

当初、Bさんは宿泊に大反対でしたが、協議の末、長期休みに宿泊することを認める調停が成立しました。

本件のポイント

①宿泊を伴う面会交流

宿泊を伴う面会交流(宿泊付きの面会交流)はどの程度の割合で認められているのでしょうか?

公式のデータは見当たりませんが、両親が離婚をした経験のある20代~30代の男女2000人を対象に、ある機関がアンケート調査をした結果によると、全体の約3割程度が宿泊を伴う面会交流の取り決めをしているようです(詳細なデータは「未成年期に父母の離婚を経験した子どもの養育に関する全国実態調査とその分析(日本加除出版)」に掲載されています。)。

ただし、このデータでは父母が円満に離婚したケース、面会交流で対立が生じなかったケースも含まれているため、家庭裁判所で調停・審判をするようなケースで宿泊付きの面会交流が認められる割合はそこまで多くないと思われます。

Aさんのケースでも、当初は妻Bさんが宿泊に猛反対をしていました。

最終的にBさんが宿泊に応じたのは、子どもが宿泊を強く望んでいたことはもちろんですが、調停間に実施された面会交流が毎回うまくいき、Bさんが安心して子どもを任せられると思ったことによります。

②共同親権・共同監護

この文章を作成した現在、離婚後の共同親権について活発に議論がされており、賛否の立場で様々な意見がぶつかっています。

しかし、Aさんの調停がされていた当時は、共同親権が立法化されるような雰囲気は一切なく、共同親権、共同監護を主張する私に対し、裁判所は「非常識な弁護士」といった態度で接していたことが非常に印象的でした。

当時と現在で、何か社会常識が大きく変わったということはなく、時代が違えばこちらの主張が認められたのではないかとも思われます。

今後、共同親権・監護の法制度がどのようなものになるのか確定しておらず、法改正がされた後も争いが生じることは予想できますが、「子どもの利益」を最大化する方法として共同親権・監護も選択肢の一つとなる状況(選択肢から排除されない状況)は好ましいといえるでしょう。

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