【こんな方におすすめ】
☑ 「管理職だから残業代が出ない」と言われたが、なぜ出ないのか分からない
☑ 昇進したはいいが、昇進前よりも手取りが減ってしまった。
☑ 管理職の仕事にやりがいは感じているが、割に合わないとも感じている。
☑ 「課長」、「部長」、「リーダー」「店長」など、法律上どこから残業代が発生しないのか知りたい。
☑ 自分や家族が、「名ばかり管理職」に該当するのではないかと思っている。
「管理職に残業代はつかない」
一度は、このような言葉を聞いたことがあると思います。
では、「なぜ管理職に残業代がつかないのか」という理由をきちんと説明できる人は非常に少ないのではないでしょうか?
一般的に「管理職」という言葉は、「課長」や「部長」、「店長」、「部門長」、「リーダー」などの役職を指して使われています。
しかし、法律上の「管理職」とは、一般的な役職者とイコールではありません。
法律上の管理職と一般的な管理職が、一律に同じ意味合いで使われる結果、冒頭の「管理職に残業代はつかない」という言葉が独り歩きしてしまっています。
このページでは、法律上の管理職とはどのような人を言うか、いわゆる「名ばかり管理職」かどうかのチェック方法を解説します。
「管理職になったはいいけど、増えた忙しさや責任が給与と見合っていない」という悩みをよくお聞きします。
「名ばかり管理職」の制度は、「やりがい搾取」の原因となる非常に大きな問題です。
本ページをご覧になって、自分や家族が「名ばかり管理職」になっていないか、チェックしてみることをお勧めします。
1 (法律上の)管理職とは?
(1)(法律上の)「管理職」の意味
管理職というと、一般的に「課長」や「部長」などの役職についている方が思い浮かびます。
しかし、会社で管理職と呼んでいるからといって「管理職=残業代の支払いをしなくていい立場」というわけではありません。
では、法律(労働基準法)では管理職をどのように定めているのでしょうか。
労働基準法41条2号では、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」といいます。)について、労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないとしています。
つまり、「管理監督者」に該当する場合には、残業代が発生しないということになります。
逆に、「管理監督者」に該当しない役職者(係長、課長、部長など)は「名ばかり管理職」であるということです。
(2)管理監督者に該当するのはどのような場合?
では、管理監督者に該当するのは、どのような場合でしょうか?
法律は、管理監督者かどうかを判断する基準を定めていません。
しかし、裁判所は概ね、以下の基準で判断をしています。
① 会社の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権があること
② 労働時間に裁量があること
③ 管理監督者にふさわしい待遇を得ていること
これらの基準を総合的に見て「経営者と一体となる立場にあり権限を持っていると言える」場合、管理監督者に該当すると判断されます。
2 管理監督者を判断する基準
管理監督者に該当するかどうかは、概ね3つの基準で判断することをご説明しました。
ここからは、各基準の意味を細かく見ていきます。
①「会社の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権があること」
「どれだけの権限や責任を持っていたか」という基準です。
役職についている場合でも、役職者に与えられている権限は様々です。
役職者であっても、何も権限が与えられていないということもあります。
例えば「1000円以内の備品購入だけは、決裁する権限がある」のように、一部分だけ権限が与えられていることもあります。
このように、役職者に与えられた権限を具体的に見て、
・会社の経営を左右するような重要事項の決定に影響力を持っていたか
・労務管理(部下の採用、人事考課等)において、最終的な決定権があったか
という観点で、実質的な管理者であったかどうかが判断されます。
例えば、
「経営会議に参加し、経営方針の決定に影響を与える役割を担っていた」「採用面接で自分の判断で採否を決定できた」
といった場合であれば、管理者に該当する方向で判断されます。
逆に、
「経営会議に参加していたが一切発言することはできなかった」
「採用面接に立ち会ってはいたが人事に関して意見を言うことができなかった」
といった場合には該当しない方向に判断されます。
②「労働時間に裁量があること」
そもそも、管理監督者に労働時間や休憩、休日の規定が適用されないのはなぜでしょうか?
これは、管理監督者であれば、自分で労働時間や休憩・休日について調整をすることができるため、法律で保護をする必要がないからです。
よって、自分の労働時間について裁量が認められているかどうかは重要な基準となります。
例えば、
「遅刻・早退・欠勤をすると賃金が控除される」
「残業をするのに上長の許可が必要である」
といった事情があれば、裁量がないと判断されるでしょう。
逆に
「勤務時間が自由であり何時に出勤しても構わない」
「実際の出退勤も日によってバラバラである」
というような場合は、自由な裁量があったと考えられます。
③「管理監督者にふさわしい待遇を得ていること」
一般の社員と比べて給料などの待遇が優遇されているかどうかという基準です。
分かりやすい例を挙げると、
「基本給の金額が一般社員の倍以上ある」
「基本給と同額の役職手当が支給されている」
場合を想像してみてください。
このような好条件があるのであれば、わざわざ法律で保護してあげなくても、構わないと思われるのではないでしょうか?
④ 注意点
以上見た3つの基準をもとに、管理監督者に該当するかどうかが判断されます。
注意すべき点は、全ての要素を満たさなければならないというものではないということです。
総合判断ですので、1つの要素を満たしていないとしても総合的にみて管理監督者に該当するということもありえます。
3 「名ばかり管理職」が生まれてしまう理由
一般の社員から管理職に昇進すると残業代が支払われなくなるという方は多いです。
ここまで見てきたように「管理監督者」に昇進したのであれば残業代が支払われないこともやむを得ません。
しかしフォレスト法律事務所にご相談に来られる方を見る限り、管理監督者に該当すると思われる方はほぼいらっしゃいません。
このような方はいわゆる「名ばかり管理職」ですが、なぜ名ばかり管理職が生まれるのでしょうか?
まず、会社の就業規則や賃金規定などで「課長職以上に残業代を支給しない」ような規定されていることが考えられます。
就業規則にこのような規定があれば、残業代が支払われないものと考えてしまうことも無理はありません。
しかし、就業規則に記載がされていれば当然に管理監督者に該当するわけではありません。
課長・部長にどのような権限・職務を与えるか、どのような裁量を与えるかは会社の自由ですので、管理監督者に該当しない課長・部長も存在します。
労働基準法の管理監督者に該当しなければ、会社は時間外労働に対する賃金を支払う義務を負います。
就業規則に規定があったとしても請求できる可能性はありますので、会社の規定を読んで諦めてしまうのではなく、弁護士にご相談されることをお勧めします。
次に「管理職は残業代をもらえない」と一般的に考えられていることです。
このページをご覧になっている方は法律問題や労働問題に関心があり、情報を収集されています。
しかし、世間の大半の方は「管理監督者」や「名ばかり管理職」が何かを知りませんし、知ろうと思うこともないのではないでしょうか。
このような理由から、まだまだ「管理職は残業代がもらえない」という認識が一般的となっています。
本当は残業代をもらえる立場にありながら、これを知らず、もらわないままとなっている方は非常に多いと考えられます。
この他、ご自身で残業代を請求することは非常に難しく弁護士に対応を依頼をする必要がありますが、弁護士に依頼する敷居が高く請求をしないという方もいらっしゃると思います。
フォレスト法律事務所では、弁護士を利用するハードルを低くするため、残業代請求の着手金を原則無料としておりますので、お気軽にご相談下さい。
4 管理監督者に該当しても請求できるもの
ここまで管理監督者に該当しないため残業代が請求できる場合を想定してきました。
ここからは、もし管理監督者に該当し、残業代は請求できないとなった場合でも、請求できるものについてご紹介します。
・深夜割増賃金
管理監督者に該当した場合、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外になり、会社は残業代や休日手当を支払う義務を負わなくなります。
しかし、管理監督者であっても、深夜に労働した時間についての割増賃金の規定は適用されます。
深夜とは、22時以降翌朝5時までの時間のことを言います。
この時間に勤務した場合、会社は深夜割増賃金を支払わなければなりません。
「管理職には残業代が出ない」と見過ごされがちですが、深夜労働に対しての割増賃金は発生します。
もし、深夜まで働いているにもかかわらず、割増賃金が支払われていないようであれば、請求することを検討してみてください。
・有給休暇
休日についての規定は適用されなくても、有給休暇についての規定は適用されます。
管理監督者であっても、他の従業員と同じ条件で有給休暇は発生するため、同じように取得することができます。
5 弁護士へのご相談をお勧めします
ここまで見てきたように、管理監督者であるかどうかは、肩書ではなく実態で判断されます。
もっとも、実際に判断するなると、具体的な事情をどのように考えればいいのか、迷われると思います。
弁護士であれば、管理監督者に該当するのかどうか、該当しないのであればどの程度の金額を請求できるのかを判断することができます。
請求を考えたものの請求金額が少なくなる可能性が高いと判断されれば、「請求をしない」という選択も可能となります。
残業代請求をお考えの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
フォレスト法律事務所では管理職の方の解決実績が豊富にあります。関連する解決実績の一部をご紹介しておりますので、こちらもご参照ください。
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