(2021年12月24日 更新)
労働審判手続は、特別の事情がある場合を除いて、原則「3回」以内の期日で終了するというスピーディーな手続です。3回と指定されてはいるものの、1回、2回目で終結するケースが多いです。
第1回目(初回)の期日では、事実関係、労働者・会社の言い分が確認されるため、初回の審理が圧倒的に重要といえます。
初めて労働審判をする方は、どのように手続が進んでいくのか分からず、非常に緊張された状態で手続に臨まれます。そこで、労働審判手続の流れをまとめました。
裁判所によって、若干運用は異なりますが大きく流れが異なることはありませんので、労働審判の流れをつかみ、リラックスした状態で手続に臨んでいただければと思います。
1 裁判所での受付について
裁判所に到着すると、労働審判を担当する部署の部屋(書記官室)で受付をします。受付を済ませると、開始までの間に待機しておく場所が案内されます。裁判所によっては、直接、手続が行われる部屋に案内されることもあります。
少し早めに受付を済ませ、申立書や答弁書の内容をざっと確認しておくとよいでしょう。
2 労働審判手続の開始
手続が行われる部屋は、ドラマに出てくるような法廷では行われず、裁判所内の一室で行われます。部屋の中の位置関係は以下の図のようになります。
手続は、労働審判官(裁判官)が中心となって進めます。
簡単な自己紹介や提出された書面が確認された後、早速本題に入っていきます。
争点(労働者・会社の主張で争いのある点)について、事実を確認する質問が労働者側、会社側に質問されます。
次々に質問がされますので、争点に関する事実関係を整理してから臨まないと、慌ててしまい思うように回答することができませんので十分に準備をして臨みましょう。
一通りの事実関係が確認されたところで、当事者の一方から話を聞かれることになります。
労働者側の話を聞く際は、相手方である会社側は席を外し、待合室で待機することになります。この際、裁判所が考える解決案が示されたり、当事者が考える解決案を説明することもあります。
その場で解決案を考え出すことはできませんので、ある程度の解決案の概要を準備し、持って行くことが望ましいです。
当事者双方が和解案を検討し、折り合いがつけば調停が成立します。
和解案を検討するために一旦持ち帰ったり、追加で証拠を提出する必要がある場合には、次の期日に持ち越しとなります。
初回の期日は、事件の事実関係を確認し、双方の和解条件まで検討することになるので、通常は長時間となることが多いです。初回期日の日は、余裕を持ってスケジュールを調整するようにしてください。
3 2回目、3回目の期日
2回目の期日は、1回目で検討することとなっていたことを引き続き話合うこととなります。初回期日と比較すると話合う内容は限定されているため、所要時間も短くなる傾向にあります。
話合いの結果、条件の折り合いがつかない場合、労働審判委員会が妥当と考える結果として労働審判が出されます。判決のようなものと考えて構いません。
労働審判に対して不服がある場合、労働者側、会社側ともに、2週間以内であれば異議を出すことができます。異議が出された場合、裁判手続(訴訟)へ自動的に移行することになります。
なお、手続きに出席し、労働審判が読み上げられた場合、その日から2週間が異議を申し立てる期限となりますので、異議を出す場合は期限が過ぎてしまわないように注意しましょう。 また、異議を出した後に撤回することはできませんので、異議を出すかどうかはしっかり検討した上で判断すべきです。
4 労働審判の流れについてのまとめ
労働審判手続は、迅速な解決が図れる点でメリットが大きい反面、準備をせずに望んでしまうと、あっという間に終わってしまい、思うような結果が得られなくなってしまいます。
長い期間かけて、じっくり審理がされる裁判手続の制度と比較すると、その場での対応を迫られる労働審判の方が難しく、代理人を選任する必要は大きいと考えます。
「労働審判と裁判の違い」については、こちらのページをご覧ください。
また、「労働審判で気を付けるべきポイント」については、こちらのページをご覧ください。