タコグラフや日報により労働時間を証明し、約700万円の残業代を獲得したケース

トラック

・40代男性 

・長距離トラック運転手

・裁判により約700万円の残業代を獲得

目次

ご相談~ご依頼

Aさんは、長距離トラックの運転手をされていました。

Aさんは、手持ちの資料として数枚のタコグラフ、手書きの日報、自作のメモを持参され、相談に来られました。

運行形態は、早朝に九州まで荷卸しに向かい、数件の先を回った後、荷積みした後にトラック内で寝て、翌朝荷卸しに向かうという毎日。家に帰れるのは、週に1度帰れるのは週に1度という極めて過酷な労働環境でした。

しかし、残業代は一切支払われていなかったため、弁護士に依頼し、残業代を請求することにしました。

弁護士の活動

① 資料の収集、会社との交渉

まず、請求期間のタコグラフ、日報の開示を会社に要求しました。

1か月ほどで会社はタコグラフや日報を開示してきましたが、段ボール数箱分という膨大な分量。

1か月ほどかけて、残業代を算定しました。

Aさんは実際の作業内容に合わせ、「待機」、「休憩」、「荷積み・荷卸し」のボタンを押していたため、タコグラフの表示こそがAさんの労働時間を表したもの。

しかし、会社は「待機」の時間が長すぎる、休憩時間も含まれているはずであると反論。

交渉によっても、双方の主張額の差は埋まらず、Aさんは裁判を申立てることにしました。

② 裁判

裁判の主たるテーマ(争点)は、「待機」の中に休憩が含まれていたかどうかです。

Aさんの「待機」が長時間となっていたのは、ある積み先での順番待ちと荷物の出来上がり待ちの時間が原因でしたので、これらの待ち時間が生じた原因を裁判官に分かりやすく説明しました。

結果、会社がAさんに対し約700万円の残業代を支払うという和解が成立しました。

本件のポイント

① 膨大なタコグラフ・日報の処理方法

運送業の残業代請求では膨大なタコグラフ、日報の処理は避けられません。

タコグラフや日報の形式は会社によって異なります。

また、ある会社ではタコグラフの一部を意図的に抜いて開示することもありました。

よって、開示された資料が正しいものかどうか、記載された意味が何かを明らかにするために、依頼者の方の協力は不可欠です。

なお、弁護士が経験を踏まえ、違和感を覚えたり、不自然だと思う点をピックアップすることは可能ですので、真っ新な状態でチェックするよりは時間を短縮することは可能です。

② 「待機」は休憩か?労働か?

Aさんは、実際の業務内容に合わせタコグラフのボタンを切り替えていたため、特に苦労しませんでしたが、多くの会社では「待機(荷積み・荷卸し)を押すな」、「走っている以外は休憩を押せ」と指示しているようです。

運送業の残業代請求の場合、「待機」が労働時間に含まれるかどうかという問題がほぼ全てのケースで出てきます。

「待機」の問題は、Aさんのように「待ち時間によるもの」、「会社からの指示によるもの」などケースによって様々です。

また、先行車の移動待ちのように目を離せない状況もあれば、長時間の停車を前提として仮眠を取れるような場合もあるでしょう。

「待機」=「労働」と主張する場合は、具体的な事情を説明し、裁判所に理解をしてもらう工夫をする必要があります。

弁護士 森 圭
フォレスト法律事務所代表弁護士。これまで累計800件以上の労働問題に関するご相談を受けてきました。管理職、運送業、飲食店など、幅広い業種、業態の取り扱いがあります。残業代請求に関する情報を、豊富な経験をもとに、分かりやすく解説します。
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