・20代女性
・タイムカードの過少打刻
・労働審判により約100万円の残業代を獲得
ご相談~ご依頼まで
Aさんは、テレビ番組の制作会社でAD(アシスタントディレクター)として働いていました。
毎晩終電の時間まで、時には徹夜明けに早朝のロケに行くなど非常に過酷な働き方。
しかし、会社は、定時になると従業員に一斉にタイムカードを打刻するよう命じていました。
会社は、このタイムカードの記載に基づき、僅かな残業代を支払うだけでしたので、納得のいかないAさんはフォレスト法律事務所に残業代の請求を依頼しました。
弁護士の活動
① 交渉
タイムカードの記載は、実際の労働時間を示したものではなかったので、他の方法で労働時間を示していく必要がありました。
Aさんは、一部の期間で日記をつけていたこと、終電に間に合わない日は家族にLINEで帰宅時間を連絡していました。
これらの資料とタイムカードを比較してみると、タイムカードでは定時に帰宅していたのに、LINEでは仕事で終電に間に合わないという記載がされた日があり、タイムカードが過少打刻されていたことが明らかに。
会社側にタイムカードが過少打刻されたものであることを主張しましたが、会社側はタイムカードの記載が正しいと譲らず。
交渉での解決は難しいと思われ、労働審判を申し立てることになりました。
② 労働審判
労働審判では、Aさんの過酷な仕事の仕方、タイムカードとLINEや日記の記載が矛盾することを説明しました。
結果、Aさんの主張が正しいことを前提として約100万円の解決金を支払う内容で和解が成立しました。
本件のポイント
① タイムカードが事実と違う場合
タイムカードは、始業・終業時刻が明確に記載される分、この記載が誤りであることを証明することは難しいです。
当初、Aさんはタイムカード以外の資料は証拠にならないと考えていたため、証拠は全くないと勘違いしていました。
しかし、弁護士と話をしていく中で、帰宅時間を知らせるメールや日記の存在が明らかとなり、徐々に真実を明らかにする資料が集まっていきました。
タイムカードと違い、日記やメールは端的に労働時間を示す資料ではないため、資料の確認や整理に要する労力も大きいです。
また、LINEで帰宅時間を知らせる文面が全て証拠になるとは限りません。
帰宅時間が遅くなるとしても、仕事が終わってから他のことをして遅くなってしまった可能性もあるからです。
もっとも、タイムカードが事実と違うことを証明する資料として、LINEなどのメッセージが有用であることは間違いありません。
② 労働審判と裁判、どちらを選択するか
交渉が決裂した際、労働審判と裁判のどちらを選ぶかは難しい問題です。
Aさんも迷っていましたが、各手続のメリット・デメリットを理解し、労働審判を選択しました。