・30代男性
・医療機器メーカー営業職
・タイムカードなし
・交渉により300万円の残業代を獲得
Aさんは、医療機器メーカーの営業職として勤務していました。
毎月の残業時間が100時間を超えていたにもかかわらず、20時間分の残業代しか支払われていませんでした。
Aさんは、過労により心身ともに疲弊してしまったため退職。未払いとなっていた残業代の請求をフォレスト法律事務所に相談しました。
弁護士の活動
① 資料の洗い出し
Aさんが勤めていた会社はタイムカードによる勤怠管理は行っていませんでした。
しかし、社屋の最終退出者を記録した管理表、共有PCのログイン・ログアウト時間を記録したログなど、Aさんの労働時間を断片的に示す資料は数多く存在していました。
Aさんはこれらの資料を一切持っておらず、会社に保管されていたため、まずは会社に対し、資料を開示するよう求めることにしました。
② 資料に基づく残業代の計算
間もなく、会社は弁護士が求めた資料を開示してきました。
開示された資料は非常に膨大なものでしたが、資料の中には手書きの出勤簿がありました。
会社は残業の時間を過少に処理するため、実際の退勤時間よりも早い時間を記入させていました。
案の定、会社は出勤簿を根拠に未払いの残業代はないと主張。
しかし、同時に開示された共有PCのログやビル退勤の管理表の記載と出勤簿に記載された退勤時刻を照合すると、出勤簿の退勤時刻が事実に反することは一目瞭然でした。
全ての資料からAさんの労働時間を抽出し、残業代を算定し会社に請求したところ、会社は当方の主張を概ね認め、約300万円の未払い残業代を支払うことで和解が成立しました。
本件のポイント
① タイムカードがない/断片的な証拠しかない場合の計算方法
本件ではタイムカードがなく、労働時間を示す確たる証拠がありませんでした。
もっとも、Aさんが働いていた痕跡は、様々な資料に残っていたため、これらを全て精査することにより、労働時間をある程度特定することが可能となりました。
このように断片的な資料が複数ある場合
・ 資料精査に膨大な時間がかかる
・ 資料の中には事実に反するものも混ざっている可能性がある
という点に注意が必要です。
資料精査にかかる時間ですが、どれだけ効率的に行ったとしても、労力をかけて行うことは避けられません。
Aさんのケースでは、弁護士と事務方で手分けをし、1か月ほどかけて資料精査を行いました。
資料の内、「役に立つもの」、「無価値なもの」、「事実に反する有害なもの」なのかについては、一見して明らかとはなりません。
この仕分けについては、Aさんとの打ち合わせをしながら行いました。
Aさんのケースは、タイムカードのような客観的な資料がない場合であっても、諦めず、思いつく限りの資料に当たってみることで、解決に至ることがあるという点で参考になる事例であると思われます。
② 請求する全期間の資料が存在しない場合
請求する期間の一部しか資料が存在しないというケースは少なくありません。
そのような場合は、存在する資料から算定できる期間と同程度の業務を行っていたと推測し計算できることも可能です(業務内容や忙しさが一定である等の事情は必要です。)。
一部の期間しか存在しない場合でも諦めずに請求してみるべきといえます。