・40代男性
・営業職
・タイムカードなし。Googleマップのタイムラインを記録。
・労働審判により約400万円の残業代を獲得
ご相談~ご依頼まで
Aさんは、営業職として勤務していました。
Aさんの業務は、外回りが中心で、始業と終業の際は事業所に行くものの、他の時間は顧客先を車で回っていました。
会社はタイムカードはおろか、従業員の労働時間を一切管理せず。Aさんは、自らの行動履歴をGoogleマップのタイムラインを用いて記録に残していました。
Aさんは、退職を機に自らの労働時間が長時間であったにもかかわらず、一切残業代が支払われていなかったことに疑問を持ち、フォレスト法律事務所に相談。
Aさんのお話を聞き、未払いの残業代が発生している可能性があること、労働時間を証明する手段として、タイムラインの表示が解決の肝になると考え、まずタイムラインを全て確認することから始めました。
弁護士の活動
① タイムラインから行動履歴の拾い出し
タイムラインはGPSを基に記録がされるため、正確に位置情報が記録されていないことがあります。
Aさんのタイムラインを見ても、川の中を走っていたり、建物の周辺を徒歩で2時間程度グルグル回っているような記録がありました(実際は、建物内で商談をしていたもの)。
このように、誤作動を起こしている箇所も散見されたため、誤作動なのか、イレギュラーな移動なのか、Aさんと何度も打ち合わせを重ねて特定する作業を行いました。
上記作業の後、未払残業代の金額を算定し、会社側に支払いを請求しましたが、会社側は、タイムラインに記載された時間や位置が正確でなく、残業代の支払義務はないと反論。
弁護士は、タイムラインの記載から推測される業務内容を一覧化し、タイムラインの記録と業務内容が一致すると反論しました。
しかし、会社側が支払いに応じる様子が見られなかったため、Aさんと相談の末、労働審判を申し立てることにしました。
② 労働審判
労働審判は、3回以内に終結する迅速な手続きです。
タイムラインの記録は、紙に印刷すると数百枚と膨大な量となりました。よって、この膨大な資料を「分かりやすく、簡潔に」説明することを意識し、申立書を作成しました。
この他、労働審判で質問されそうな事項をAさんと打ち合わせを行い、審判日当日に備えました。
結果、労働審判では想定外の質問はなされず、結果的に会社側が約400万円を支払うとの和解が成立しました。
上記結果はAさんの希望通りのものであり、努力が報われる結果となりました。
本件のポイント
① タイムラインを使い労働時間を証明する難しさ
タイムラインは、GPSの誤作動等が理由で、不自然な記録が残ってしまうことがあります。
このような場合、単に誤作動であると片付けてしまうことは簡単ですが、「本当は●●(場所)にいたけど、●●の理由で誤作動を起こしていたと思われる」のように、実際はどこで何をしていたかを示せるとより説得的です。
Aさんが、全てのデータについて行動の説明をしていただけたことで、誤作動と思われる部分についても説得的な説明をすることができました。
但し、Aさんの営業が決まった顧客のもとに定期的に訪れるルート営業のスタイルであったため特定は可能でしたが、日によって飛び込み営業を重ねるようなスタイルの場合は特定は難しくなってしまうでしょう。
また、タイムラインを共有する方法にも苦労が伴います。
タイムラインの閲覧は本人のみが可能なものとなっているようです。
データをエクスポートすることは可能ですが、このデータを開く方法が見つかりませんでした(何か方法はあるかも知れませんが、色々な方法を試したものの開けませんでした。)。
裁判や労働審判では、タイムラインを証拠として提出する場合、データではなく紙での提出を求められるため、いずれにしても紙の印刷は避けられないでしょう。
タイムラインを使用する場合の注意点については以下の解説ページも参照ください。
② 「労働審判の準備」
労働審判は「3回の手続」で終了する迅速な手続であるため裁判よりも事前準備が重要です。
大半の方にとって裁判所に行き話をすることは初めてですから、十分な準備をせずに臨めば伝えたいことを伝えることはできません。
Aさんのケースのように資料が膨大な場合、審判手続の中で資料を見ながら質問をされることが想定されます。事前に資料を見ながら想定質問に対する回答を検討しておくことで、当日も慌てることなく的確に回答をすることができました。
労働審判で気を付けるポイントについては以下のページを参照ください。