残業時間記録アプリをもとに残業代を請求し、交渉で解決できたケース

スマホカレンダ―

・30代男性

・営業職

・タイムカードなし

・スマホアプリで労働時間を記録

・交渉により約300万円の残業代を獲得

目次

ご相談内容

Aさんは営業の管理職としてある会社に勤めていました。

会社にはタイムカードがなく、日報の提出もなし。

Aさんはスマホのアプリで労働時間を記録していました。

このアプリの記録をもとに残業代請求ができないか、フォレスト法律事務所に相談されました。

弁護士の活動

① スマホアプリの記録を精査

Aさんが使っていたスマホアプリは、GPSで位置情報を管理しており、あらかじめ設定していた場所にいた時間、離れた時間を記録するものでした。

GPSは精度がそこまで高くなく、休日に近隣を通った場合も会社にいたと記録されます。

また、スマホを家に忘れてしまった場合は当然ながら会社にいたという記録は残りません。

アプリの記録を見てみると、一部の期間は記録が一見して不正確でした。

そこで、記録が確かな部分、不正確な部分を区分けし、不正確な部分は記録がないものとして扱い、計算をする方針を立てました。

② 会社との交渉

上記の精査をもとに算定した結果を会社に伝え、未払い残業代の支払いを求めました。

Aさんは管理職手当の支払いを受けていましたが、会社はこの管理職手当が固定残業代であると反論。

交渉の結果双方が譲歩をし、会社が約300万円の残業代を支払う内容の和解が成立しました。

本件のポイント

労働時間で大きく争いとならなかった理由

本件はスマホの労働時間管理アプリ以外に労働時間を記録したものが何もありませんでした。

アプリの記録も上記のとおり全て正確に記録されたものではありませんでした。

通常、このようなケースでは労働時間について大きな争いとなります。

しかし、Aさんが早期の解決を希望していたこと、アプリの記録が完全に正しいと主張することはかえって事実に反することから、請求初期の段階でかなり手堅く計算をしていました。

会社側も当方が手堅く計算したことを理解していたため、労働時間が大きな争点とはなりませんでした。

交渉では「大きく請求をしておいて、減額して落としどころを探る」という方法を取ることが一般と考えられています。

しかし、一見して過剰な請求と見られる場合には、大きく請求しておく意味がなく、解決から遠ざかる原因となってしまいます。

手堅く計算をし、交渉幅を持たせずに交渉を進めることが有効な場合があり、本件はこれが上手く当てはまりました。

スマホアプリを利用する場合の注意点

Aさんが使用していたアプリは、GPSの位置情報を利用し、会社にいる時間、いない時間を記録するものでした。

GPSの精度が高くないと正確な位置情報は記録できません。

また、スマホを携帯していなければ当然ながら位置を把握することはできなくなります。

Aさんのケースでは、全ての記録を利用できるという考えを初めから捨て、利用できる部分を拾っていくという作業が功を奏しました。

管理職手当が固定残業代?

本件では大きな争点となりませんでしたが、管理職手当が固定残業代であるとの反論はよく見られます。

規定の仕方によって結論は異なりますので、「管理職=残業代はない」という先入観は厳禁です。

弁護士 森 圭
フォレスト法律事務所代表弁護士。これまで累計800件以上の労働問題に関するご相談を受けてきました。管理職、運送業、飲食店など、幅広い業種、業態の取り扱いがあります。残業代請求に関する情報を、豊富な経験をもとに、分かりやすく解説します。
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