・30代男性(元従業員)
・飲食店
・タイムカードなし
・約450万円の請求を約150万円の支払いに減額
ご相談~弁護士への依頼
飲食店の代表者Yさんより、元従業員Aさんから残業代を請求されたとのご相談を頂きました。
Yさんの会社では従業員の労働時間を管理していませんでした。
Aさんの弁護士が作成した請求書面を確認したところ、営業時間外の深夜まで労働したことを前提に計算がされていることが分かりました。
Yさんによると、Aさんは、営業時間中も仕事をせず、顧客からクレームが入ったこともあるなど勤務態度は悪く、深夜まで残業していた事実はありませんでした。
Aさんの請求は過剰な請求であると考えられたため、適正な金額へ是正するよう、ご依頼をお受けしました。
弁護士の活動
① 交渉
まず、Aさんの請求が過剰なものであることから、適正な金額に計算をし直しました。
この結果をAさん側に伝えたところ、AさんはLINEで帰宅時間を知らせる画面を根拠に、深夜まで労働していたと反論。
しかし、LINEの文面を見たところ、Aさんは店舗の営業時間中にもLINEを送信していたり、帰宅する時間も仕事が終わってから飲みに行った後に送信したものであることが分かりました。
LINEは深夜労働の根拠にならないことは明らかでしたが、Aさんは譲らず、労働審判を申し立てました。
② 労働審判
労働審判でもLINEの文面が提出されましたが、裁判所もAさんが深夜まで労働していたとは考えませんでした。
結果、当方の計算額に近い金額で和解が成立しました。
当初Aさんが請求してきた金額が450万円でしたが、その3分の1の150万円と大きな減額に成功しました。
本件のポイント
① LINEが証拠として使用できない場合
タイムカードがない会社では、LINEで帰宅時間を知らせるメッセージを証拠利用することがあります。
しかし、AさんのLINEは、帰宅後に飲みに行った後に送信していたものでしたので、証拠としての価値はありませんでした。
それどころか、勤務時間中にもLINEを送信していたことが判明してしまい、Aさんにとっては逆効果なものになってしまいました。
LINEを利用する際は、一部分だけでなく全体を確認し、自分に不利になる部分がないかを確認すべきです。
② 労働審判の準備
労働審判では、仕事内容・労働時間管理の方法・残業に対する会社の指示など、残業代の算定に当たって考慮すべき事情が質問されます。
会社側・労働者側問わず、何の準備もせずに労働審判に臨んで、完璧に答えられる方はいません。
本件では、Yさんと何度も予行演習を重ねたことで、想定される質問に対しては思う通りに回答することができました。
③ 会社・労働者側の代理人をするメリット
フォレスト法律事務所では、会社側・労働者側問わずご依頼をお受けしています。
両側の代理人をすることにより、他方の考えていることを想定しやすくなりますが、このメリットは大きいため、両側のご依頼をお受けするようにしています。