管理監督者が争われ請求額のほぼ満額の基準で裁判上の和解が成立したケース

副工場長

・40代男性

・管理職(副工場長)

・裁判で約400万円の残業代を獲得

目次

ご相談~ご依頼

Aさんは、金属加工をする会社で副工場長として勤務していました。

副工場長につくまでは残業代がしっかり支払われていたものの、昇進してからは全く支給されず、僅かばかりの管理職手当が支給されるのみ。

労働時間と責任が増すばかりで待遇が全く見合わず、退職しました。

Aさんは、未払いとなっている残業代があるのではないかと疑問に思い、フォレスト法律事務所に相談しました。

弁護士の活動

① 会社との交渉

タイムカードを見たところ、土日も含め朝から夜遅く働いていたことが確認できました。

弁護士はタイムカードに基づきAさんの残業代を計算し、内容証明郵便で支払いを求めました。

会社の代理人弁護士は「副工場長は管理職に該当するから残業代は発生しない」、「管理職に該当しないとしても管理職手当を残業代として払っていたから未払いはない」と反論し、一切の支払いを拒否しました。

会社の反論には無理があったものの、交渉を重ねても会社の態度に変化が見られなかったことから、Aさんと相談し、裁判を申し立てることにしました。

② 裁判

裁判では「副工場長が法律上の管理監督者に該当するか」、「管理職手当が残業代として支払われたものか」の2点が争われました。

副工場長は一部の部品の購入権限は与えられていたものの、その他は一般職員と同等の権限しかなく、法律上の管理監督者に該当しないことは明らかでした。

また、管理職手当を残業代と支払うという取り決めも一切ありませんでした。

会社の主張が認められないことは明らかでしたが、裁判所もこの点を理解し、結果、Aさんの請求額の約9割に相当する約400万円の残業代を会社が支払うことで和解が成立しました。

本件のポイント

① 管理監督者について

「副工場長」のように役職者に昇進したことをきっかけに残業代が支払われなくなるケースは頻繁に見られます。

残業代のかわりに十分な手当が支払われればいいですが、大半は僅かな手当が支給されるだけで(中には全く手当が支給されないケースも)、責任や労働時間が増えたことに比べ割に合わないことが多いです。

一般的に使われる「管理職」という言葉と法律上の「管理職(管理監督者)」は意味が異なります。

以下のページで詳しく解説していますので、ぜひ参照ください。

② 裁判か、労働審判か

交渉が決裂するに当たり、労働審判か裁判かの選択が必要となります。

Aさんもどちらにするか迷われましたが、メリットが大きいと考えられる裁判を選択しました。

労働審判・裁判のメリットデメリットについては、以下のページを参照ください。

弁護士 森 圭
フォレスト法律事務所代表弁護士。これまで累計800件以上の労働問題に関するご相談を受けてきました。管理職、運送業、飲食店など、幅広い業種、業態の取り扱いがあります。残業代請求に関する情報を、豊富な経験をもとに、分かりやすく解説します。
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