裁判を申し立てるためには、
・裁判所に収める収入印紙、郵便切手
・弁護士費用
など、多くの費用が発生します。
仮に、裁判で完全に勝訴した場合、「これらの費用も、全部相手に払わせたい」と思うのではないでしょうか?
結論から言ってしまうと、残念ながら全ての費用を相手に支払わせることはできません。
このページでは、裁判費用として、相手に負担させることのできる範囲について解説します。
1 負担させることのできる費用は法律で決まっている
裁判費用として、相手に負担させることのできる費用は、「民事訴訟費用等に関する法律」という法律に規定されています。
(参考:民事訴訟費用等に関する法律)
この法律に規定されている範囲でしか、相手に請求することはできないということです。
法律の条文はわかりにくいため、以下、認められる範囲を抜き出していきます。
2 訴訟費用を相手に請求できる場合
裁判が、和解で終了した場合「訴訟費用は各自の負担とする。」となるため、訴訟費用を相手に請求することはできません。
あくまで、訴訟費用を相手に請求できるのは、「訴訟費用は被告(原告)の負担とする。」と、判決文中に訴訟費用に関する定めが記載されている場合に限られます。
3 認められる費用
実務上、よく出てくるものは以下のとおりです。
① 訴え提起の手数料(収入印紙額)
訴状、控訴状には、請求額に応じた収入印紙を貼ることになっています。
この収入印紙額が訴え提起の手数料として、訴訟費用に含まれます。
印紙額は数万円になるため、これが認められることは大きいですね。
② 書類の送付・送達費用(郵券代)
訴状や控訴状は、被告(被控訴人)に送達されます。
その他、裁判所から被告に書類を送付する郵便代についても訴訟費用に含まれます。
③ 代表者事項証明書の交付費用(被告が法人の場合)
被告が法人の場合、代表者の登記を取得する必要があります。
この登記を取得するためにも費用が発生します。
法律は、登記取得費用+160円を訴訟費用として認めています。
④ 出頭日当(当事者、代理人が裁判所に出廷した日当)
1日当たり3950円です。
なお、電話会議の方法で期日に出頭したとみなされる場合も、この日当は発生します。
⑤ 出頭旅費
裁判所に出頭した旅費は、原則として1回300円とされています。
但し、裁判所から半径500メートル以内の場所から出発した場合は0円です。
また、電話会議の方法の場合は、当然ですが旅費は発生しません。
⑥ 書類作成・提出の費用
訴状、準備書面(陳述されたものに限る)について、5通までは1500円、6通~20通まで1000円加算、以後15通ごとに1000円加算となります。
また、証拠書類についても、16通~65通までは1000円、以後50通ごとに1000円加算の提出料が発生します。
4 認められない費用(弁護士費用)
「弁護士費用を相手に請求することはできますか?」
「訴訟費用=弁護士費用」というイメージがあると思いますが、法律上、弁護士費用は訴訟費用に含まれていません。
不法行為に基づく損害賠償請求権の一部については、弁護士費用(一般的に損害額の1割)の請求が認められることがありますが、
残業代請求のように賃金支払請求の場面では、弁護士費用は自己負担となります。
5 訴訟費用の取り立ての手続
判決で「訴訟費用は被告の負担とする」とされた場合であっても、これだけで訴訟費用について強制執行ができるわけではありません。
訴訟費用について強制執行を行うためには「訴訟費用額確定処分」を申し立てる必要があります。
なお、当事者間双方が訴訟費用額に合意し、任意に支払われる場合は上記申立は不要となります。
よって、訴訟費用額確定処分の申立てがなされるケースはそれほど多くありません。