遺留分とは?割合・計算方法・請求の流れを弁護士が解説

このような方が対象です

・ 遺言で自分だけ遺産をもらうことができなかった

・ 遺留分を取り戻すためにはどのような手続きが必要かを知りたい

・ 遺留分減殺請求の期限やその期間内に何をすべきかについて悩んでいる

・ 遺留分を請求する通知が届いてしまい、どうしていいか分からない

亡くなった方の遺言を開けてみたら、財産のすべてを長男に相続させると書かれていた。あるいは、生前に特定の子だけが多額の贈与を受けていた。こうした場面で、法律は一定の相続人に「遺留分」という最低限の取り分を保障しています。

ただし、遺留分は黙っていて自動的にもらえるものではありません。自分から請求して初めて受け取れる権利です。また、請求には期限があります。

このページでは、遺留分が認められる人と割合、実際にいくら請求できるのかという計算方法、請求の進め方と期限について解説します。あわせて、遺留分を請求された側がどう対応すべきかについても説明します。愛知県名古屋市のフォレスト法律事務所が、請求する側・される側の双方の立場から解説します。

遺留分とは|兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の取り分

遺留分とは、「一定の範囲の相続人に対して法律が保障している、遺産の最低限の取り分」をいいます。

人は本来、自分の財産を自由に処分できます。生前に誰かへ贈与することも、遺言で特定の人にすべてを譲ることもできるのが原則です。

しかし相続には、のこされた家族の生活を支えるという側面もあります。財産処分の自由をそのまま貫いてしまうと、生活の基盤を失う家族が出てしまいかねません。

そこで法律は、亡くなった人(被相続人といいます)の意思による財産の処分を認めつつ、一定の相続人には最低限の取り分を確保する、という調整を図りました。これが遺留分の制度です。

なお、2018年の民法改正により、この権利は「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」へと変わりました。改正法が適用されるのは2019年7月1日以後に開始した相続で、それより前に亡くなった場合は改正前の規定によります。改正前は財産そのものを取り戻す仕組みでしたが、現在は金銭の支払を求める仕組みとなっています。

遺留分が認められる人・認められない人

遺留分が認められるのは、被相続人の配偶者、子(子が先に亡くなっている場合の孫などの代襲相続人を含む)、直系尊属(父母や祖父母)です。

注意が必要なのは、兄弟姉妹には遺留分がないことです(民法1042条)。

被相続人に子も直系尊属もおらず、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、「配偶者にすべてを相続させる」という遺言があれば、兄弟姉妹は何も請求できません。

また、法定相続人であっても次の場合には遺留分がありません。

  • 相続欠格に当たる人
  • 廃除された人
  • 相続放棄をした人(初めから相続人でなかったことになります)

遺留分と法定相続分の違い

遺留分と法定相続分は混同されやすいのですが、別のものです。

法定相続分は、遺言がない場合に法律が定める基本的な相続割合のことです(相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合で遺産を分けることもできます。)。

これに対して、遺留分は、遺言や生前贈与によって取り分を奪われたときに、法定の相続人に最低限これだけは確保できるという下限を意味します。

つまり、法定相続分は「法律が定める基本的な相続割合」、遺留分は「遺言や生前贈与があっても請求によって確保できる最低限の取り分」と整理すると分かりやすいでしょう。

遺留分を侵害する遺言も無効ではない

「遺留分を侵害する遺言は無効なのではないか」というご質問をよくいただきます。

結論から言えば、遺留分を侵害する内容の遺言であっても、その遺言が無効になるわけではありません。遺言はそのまま効力を持ちます。

では遺留分に意味がないのかというと、そうではありません。遺留分を侵害された相続人は、多く受け取った人に対して、侵害された金額に相当するお金を支払うよう請求できます。遺言の効力を覆すのではなく、あとから金銭で調整する仕組みになっているのです。

したがって、遺言があるからと諦める必要はありません。逆に、請求しなければ何も動かない、ということでもあります。

遺留分の割合|相続人の組み合わせ別の早見表

遺留分の割合は、相続人が誰かによって決まります。まず遺産全体に対する遺留分の総枠を出し、それを各相続人で分ける、という二段構えになっています。

総体的遺留分と個別的遺留分

遺産全体に対する遺留分の総枠を「総体的遺留分」といいます。割合は次のとおりです(民法1042条1項)。

  • 直系尊属だけが相続人の場合……3分の1
  • それ以外の場合……2分の1

この総枠を、各相続人の法定相続分に応じて分けたものが、その人が実際に請求できる「個別的遺留分」です。計算式にすると次のようになります。

個別的遺留分=総体的遺留分×その人の法定相続分

相続人の組み合わせ別 遺留分早見表

主なパターンごとの個別的遺留分は次のとおりです。

  • 配偶者のみ……2分の1
  • 配偶者と子1人……配偶者4分の1、子4分の1
  • 配偶者と子2人……配偶者4分の1、子は各8分の1
  • 子のみ2人……各4分の1
  • 子のみ3人……各6分の1
  • 配偶者と直系尊属……配偶者3分の1、直系尊属6分の1
  • 直系尊属のみ(父母2人)……各6分の1
  • 配偶者と兄弟姉妹……配偶者2分の1、兄弟姉妹なし
  • 兄弟姉妹のみ……なし

子が複数いる場合は、子全体の遺留分を人数で等しく分けます。子の人数が増えれば、一人あたりの割合はその分小さくなります。

代襲相続人や養子がいる場合

子が被相続人より先に亡くなっている場合、その子(被相続人から見た孫)が代襲相続人となり、亡くなった子が持っていたはずの遺留分をそのまま引き継ぎます。代襲相続人が複数いれば、その中で等しく分けます。

養子も実子と同じ扱いで、遺留分を持ちます。養子の人数によって他の子の遺留分が変わるため、養子縁組がある事案では相続人の確定作業が特に重要になります。

遺留分侵害額の計算方法

遺留分を侵害された場合に、具体的にいくら請求できるのかは、次の手順で計算します。ここが遺留分の問題で最も間違いが生じやすいところです。

① 遺留分を算定するための財産の価額を出す

まず、遺留分を計算する土台となる財産の総額を出します(民法1043条1項)。

遺留分を算定するための財産の価額=相続開始時に持っていた財産+算入される贈与-債務の全額

注意していただきたいのは、亡くなった時点で残っていた財産だけが対象ではないという点です。生前に贈与された財産も、一定の範囲で加算されます。借入金などの債務は差し引きます。

「遺産がほとんど残っていないから請求しても無駄だろう」と諦めてしまう方がいますが、生前贈与を加算すると土台の金額が大きく変わることは珍しくありません。

② 加算される生前贈与の範囲(10年・1年)

どの贈与まで加算されるかは、贈与を受けた人によって異なります(民法1044条)。

  • 相続人に対する贈与……相続開始前の10年間にされたもののうち、婚姻や養子縁組のため、または生計の資本として受けたもの
  • 相続人以外に対する贈与……相続開始前の1年間にされたもの

この期間制限には例外があります。贈与した人と受け取った人の双方が、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、期間の制限なく加算されます。

この区別は結論を大きく左右します。20年前に長男へ渡された住宅購入資金は原則として加算されませんが、8年前のものであれば加算される可能性がある、ということになります。

また、相続人以外の人に全財産を生前贈与したような場合も、事情によっては、遺留分を侵害することを知ってされたものに該当することもあり得ます。

③ 遺留分侵害額を計算する

土台となる財産の価額が出たら、そこに自分の個別的遺留分の割合を掛けて、自分の遺留分額を求めます。そこから調整を行い、実際に請求できる金額を算出します(民法1046条2項)。

遺留分侵害額=遺留分額-遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益に当たる贈与-相続によって取得すべき財産の価額+遺留分権利者が承継した相続債務の額

式にすると複雑に見えますが、要するに、遺留分権利者がすでに受け取った財産は差し引かれ、承継する相続債務がある場合はその額が加算される、という考え方です。なお、遺留分権利者自身が受けた特別受益に当たる贈与をここで控除する場合、基礎財産に贈与を算入する際の10年という期間制限とは扱いが異なる点に注意が必要です。

計算例|遺産3,000万円・5,000万円のケース

具体的な計算方法を見てみましょう。

相続人が子2人(長男・次男)で、「全財産を長男に相続させる」という遺言があった場合を考えます。生前贈与や債務はないものとします。

【遺産が3,000万円の場合】

子2人のみが相続人なので、総体的遺留分は2分の1。次男の法定相続分は2分の1ですから、次男の個別的遺留分は4分の1です。

3,000万円×4分の1=750万円

次男は長男に対し、750万円の支払を請求できます。

【遺産が5,000万円の場合】

同じ計算で、5,000万円×4分の1=1,250万円となります。

ここに生前贈与が加われば土台の金額が増え、請求できる額も増えます。

たとえば長男が7年前に1,000万円の贈与を受けていた場合、遺産3,000万円の事案でも土台は4,000万円となり、次男の遺留分侵害額は1,000万円(4000万円×4分の1)になります。

遺留分が問題になる典型的なケース

実際にご相談をいただくのは、次のような場面です。

第1に、遺言による指定です。「全財産を長男に相続させる」、「同居していた子にすべてを譲る」といった内容の遺言が見つかるケースです。なお、遺言が公証役場で作成された公正証書遺言であっても遺留分の請求はできます。

第2に、生前贈与です。特定の相続人だけが生前に多額の資金援助や不動産の名義移転を受けていた場合です。遺言がなくても遺留分の問題は起こります。

第3に、死因贈与です。亡くなったら財産を渡すという契約が結ばれていた場合も、遺留分の対象になります。

生命保険金は遺留分の対象になるのか

死亡保険金請求権は、受取人として指定された人が固有の権利として取得するため、原則として相続財産ではなく、遺留分を算定するための基礎財産にも当然に含まれるものではありません。

もっとも、最高裁判所は、遺産分割における特別受益の問題について、保険金受取人である相続人と他の共同相続人との不公平が到底是認できないほど著しい特段の事情がある場合には、死亡保険金請求権を特別受益に準じて持戻しの対象とし得ると判断しています。保険金額と遺産総額の比率だけでなく、同居の有無、介護への貢献、各相続人の生活実態など、様々な事情を総合して判断されます。

この最高裁の判断を前提とすると、保険金も遺留分の対象となる可能性があります。

生命保険金が特別受益に該当するか否かについては、様々な裁判例が出ています。客観的な基準、例えば「遺産のうち、保険金が〇%以上であれば、特別受益に該当する」というようなものがあれば分かりやすいですが、現時点で、割合の確たる基準は存在しません。
多額の保険金を一部の相続人のみが受け取ったケースでは、しっかりとした対策が必要となります。

不動産が遺産の中心にあるときの遺留分

遺産の大半が実家の土地建物というケースの場合、争点は「その不動産をいくらと評価するか」が中心となります。

評価額が1,000万円変われば、子2人の事案では請求できる額が250万円変わります。ここは結論を最も左右する部分でありながら、一般的な解説記事ではほとんど触れられていません。

路線価・固定資産税評価額・時価のどれを使うのか

不動産の価格には複数の物差しがあります。相続税の申告で使う路線価による評価額、固定資産税の納税通知書に記載された固定資産税評価額、そして実際に売買される価格である時価です。

遺留分の計算で用いるのは、相続税評価額ではなく時価です。路線価による評価額は時価より低く出ることが一般的ですので、固定資産税評価額や相続税評価額をそのまま前提にしてしまうと、本来請求できるはずの金額を取り逃すことになりかねません。

実務では、まず不動産業者の査定書を複数取得して幅を把握するところから始めます。査定書の記載によって折り合いが付かない場合は、不動産鑑定士による鑑定を依頼することもあります。

仲介業者の査定書には、査定の根拠となる事実が記載されていますので、当事務所では査定書の前提条件が妥当かどうかまで確認したうえで交渉に臨んでいます。
不動産仲介業者の査定額には幅があるため、双方が持ち寄った査定額が大きく異なることも珍しくありません。
このような場合、不動産鑑定士に鑑定を依頼することもありますが、鑑定にかかる費用(数十万円)が大きく、鑑定を依頼するケースは限られます。

評価の基準時はいつか

遺留分侵害額の算定では、相続開始時の価額を基準とするのが原則です。

これは遺産分割の場面と異なります。遺産分割では分割時の価額を基準としますので、同じ不動産であっても、どの手続で問題になるかによって用いる価額が変わることがあります。相続開始から時間が経っている事案ほど、この違いが金額に表れます。

評価で折り合えないときの進め方

当事者の主張する評価額が離れて交渉がまとまらない場合、最終的には不動産鑑定士による鑑定を行うことになります。

ただし鑑定には相応の費用と時間がかかります。争っている金額の差が鑑定費用に見合わないのであれば、双方の査定額の中間で折り合う方が合理的なこともあります。鑑定に進むべきか交渉で決着させるべきかは、争点となっている金額の幅、双方の主張の根拠の強さ、解決までにかけられる時間を踏まえて判断しています。

非上場株式や事業用資産が含まれる場合

被相続人が会社を経営していた場合、遺産に同族会社の株式が含まれます。市場価格がないため評価が難しく、どの評価方式を用いるかで金額が大きく変わります。

また、事業承継の場面では、経営承継円滑化法に基づく遺留分に関する民法の特例が用意されています。推定相続人全員の合意のうえで、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を得ることで、自社株式を遺留分の算定から除外したり、価額を合意時点で固定したりすることができる制度です。承継を予定しているのであれば、生前に検討しておく価値があります。

遺産の使い込みが疑われるときの遺留分請求

「亡くなる前の数年間、同居していた兄が預金を自由に引き出していた」というご相談は少なくありません。遺留分の事案では、もともと相続人同士の関係が良くないことが多く、生前の出金に疑いが向くのは自然なことです。

引き出された金銭の扱いは、その使途によって変わります。被相続人の意思に基づいて特定の相続人へ渡されていたのであれば贈与と評価できる場合があり、生計の資本としての贈与にあたれば10年以内のものが遺留分の計算に加算されます。他方、被相続人の意思によらず無断で引き出されていたのであれば贈与ではありませんので、不当利得の返還請求などとして、遺留分とは別に追及することになります。

どちらの構成を取るかで、請求できる金額も、請求する相手も変わります。預金の取引履歴を取り寄せて資金の流れを特定する作業が必要になりますので、詳しくは遺産の使い込みのページをご覧ください。

遺留分侵害額請求の進め方

遺留分の請求は、一般には交渉から始め、話合いで解決できなければ調停、調停でも合意に至らなければ訴訟へ進みます。手続が進むほど費用も時間もかかりますので、交渉で解決できるものは交渉で終わらせることが望ましいです。

1 まず相手方に請求する

最初にすべきことは、とにかく請求の意思を相手方に伝えることです。

遺留分に関する権利は、期限内に請求の意思表示をすることで、民法1048条の1年・10年の期間制限による消滅を防ぐことができます。財産の全容がまだ分からなくても、金額を確定できていなくても、請求すること自体は可能です。ただし、意思表示によって発生した金銭債権には別途、一般の消滅時効が適用されるため、請求後も放置せず、交渉や法的手続を進める必要があります。

調査を終えてから請求しようと考えているうちに期限が来てしまう、というのが最も避けたい事態です。順序は逆で、先に請求してから調査を進めます

請求の方法に法律上の決まりはありません。口頭でも成立します。

しかし期限内に請求したことが後々の争点になりますので、いつ、誰に、どのような内容を伝えたのかを証拠として残しておく必要があります。そのため実務では、配達証明付きの内容証明郵便を送る方法が一般的です。

記載すべきは、誰の相続に関するものか、自分が遺留分権利者であること、遺留分侵害額を請求する意思です。金額を書けない段階であれば、金額を特定せずに請求の意思を明示する形でも構いません。

2 相手との交渉

遺留分侵害額を算定し、支払いを請求します。

この段階で解決できることが望ましいですが、解決できない場合には、どの部分で折り合いが付かなかったかを特定できると、後の調停や裁判で効率的に手続を進めることができます。

3 遺留分侵害額の請求調停(名古屋家庭裁判所の場合)

交渉がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。遺留分の争いは、いきなり訴訟を起こすのではなく、まず調停を経ることとされています。

申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で定めた家庭裁判所です。相手方が名古屋市内にお住まいであれば名古屋家庭裁判所となります。費用は収入印紙と連絡用の郵便切手で、数千円程度に収まります。

必要となる主な書類は次のとおりです。

  • 申立書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)一式
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書の写しまたは検認調書の写し
  • 不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書
  • 預貯金の残高証明書

申立てから第1回期日までは1か月半程度、その後の期日はおおむね1か月から2か月ごとに入ります。争点が評価に絞られている事案であれば数回で終わることもありますが、財産の範囲自体が争われていると1年を超えることもあります。

4 遺留分侵害額請求訴訟

調停でも合意に至らなければ、訴訟を申し立てることになります。遺留分侵害額請求の裁判は、家庭裁判所ではなく地方裁判所(請求額によっては簡易裁判所)に提起します。

訴訟では、遺留分を算定するための財産の範囲、不動産や株式の評価額、生前贈与が加算対象にあたるかどうかが主な争点になります。主張を裏づける資料をどれだけ揃えられるかが結論を分けますので、調停の段階から訴訟を見据えた資料の収集を進めておくことが大切です。

遺留分侵害額請求の期限|1年と10年

遺留分でご相談をいただくとき、私が最初に確認するのは期限です。ここを過ぎてしまうと、内容にかかわらず請求できなくなってしまいます。

期限には2種類あり、どちらか早く到来した方で権利が消滅します(民法1048条)。

相続の開始と侵害を知ってから1年

ひとつめは、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年です。

起算点は、相続が開始したことに加え、遺言や贈与の内容と、それによって自分の遺留分が侵害されていることを知った時です。亡くなったことは葬儀の時点で知っていても、自分の取り分を奪う遺言の内容が後になって分かることは少なくありません。その場合は、単に遺言の存在を知っただけでなく、遺留分を侵害する内容を認識した時が問題になります。

1年と聞くと長く感じられるかもしれません。しかし相続直後は諸手続に追われ、落ち着いて話ができる状態ではありません。ようやく落ち着いた頃に遺言が見つかり、動揺したまま身内と交渉することになります。もともと関係が良くない相続人同士であればなおさら話は進みません。そうしているうちに1年は過ぎてしまいます。

相続の開始から10年

ふたつめは、相続の開始から10年です。

こちらは、遺言の存在も遺留分の侵害も知らないまま10年が経過した場合に、権利が消滅するというものです。知っているかどうかに関係なく期限が来ますので、長期間連絡を取っていなかった親族の相続では、この10年が問題になることがあります。

「遺留分の時効は5年ではないか」というお問い合わせをいただくことがあります。ここでは、権利を行使するまでの1年・10年と、権利行使によって発生した金銭債権に適用される消滅時効を区別する必要があります。

期限内に遺留分に関する権利を行使すると、侵害額に相当する金銭債権が発生します。この金銭債権には民法166条の一般的な消滅時効が適用され、原則として、債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い時点で時効が完成します。相続開始時期や権利行使時期によって経過措置が問題になることもあるため、個別の確認が必要です。

したがって、「内容証明郵便を送れば、その後はいつまでも請求できる」というわけではありません。権利行使後も速やかに金額を確定し、交渉、調停または訴訟を進める必要があります。

期限が迫っているときにすぐすべきこと

期限が近い場合は、調査や交渉より先に、請求の意思表示を相手方に到達させてください

金額が分からなくても、財産の全容が把握できていなくても請求はできます。まず配達証明付きの内容証明郵便を送り、到達の記録を残すことが最優先です。その後は、発生した金銭債権の消滅時効にも注意しながら、財産調査、金額の確定、交渉や法的手続を進めます。

期限まで日がない状態でのご相談も承っています。残り時間が少ないほど打てる手は限られますので、お早めにご連絡ください。

遺留分侵害額請求を受けた側の対応

ここまでは請求する側の説明でしたが、内容証明が届いて困っておられる方からのご相談も多くいただきます。

まず申し上げたいのは、放置しても問題は消えないということです。相手方は調停を申し立て、それでもまとまらなければ訴訟を提起します。支払義務が認められれば差押えを受ける可能性があり、遅延損害金も加算されます。

もっとも、相手方が提示してくる金額がそのまま正しいとは限りません。請求してきた人に本当に遺留分があるか、期限が過ぎていないか、不動産の評価額が過大でないか、相手方自身が受けた生前贈与が差し引かれているか。確認すべき点は少なくありません。手元に現金がない場合には、裁判所に支払の期限を与えるよう求める制度もあります。

請求を受けた場合の対応については、別のページで詳しく解説しています。

生前にできる遺留分対策

ここまでは相続が起きた後の話ですが、遺言を作る立場から、あらかじめ争いを防ぐこともできます。

基本は、各相続人の遺留分に相当する分は確保したうえで配分を決めることです。あわせて、遺留分侵害額は金銭で支払わなければなりませんので、不動産を承継させる場合には、生命保険などで支払の原資を用意しておく方法があります。

このほか、家庭裁判所の許可を得て生前に遺留分を放棄してもらう方法(民法1049条1項)や、要件は厳格ですが推定相続人の廃除という制度もあります。なお遺留分の放棄は相続放棄とは別の制度で、放棄しても相続人であることに変わりはありません。

遺言書の作成については、遺言書のページで詳しく解説しています。

遺留分の問題でフォレスト法律事務所ができること

遺留分の事案では、まず請求の意思表示を速やかに行い、期限で権利が失われることのないよう確保します。そのうえで、遺産を漏れなく把握し、適切に評価する作業に入ります。

当事務所の代表弁護士は、弁護士としての業務に加え、司法書士、宅地建物取引士、証券外務員一種の資格を有しています。遺留分の争点が不動産の評価に集約される事案、同族会社の株式が遺産に含まれる事案では、この点が直接活きてきます。相続登記や名義変更についても、その場で具体的な手続についてご説明が可能です。

また、生前の預金の動きに疑いがある事案では、取引履歴を取り寄せて解析し、贈与として遺留分に加算すべきものと、不当利得として別途請求すべきものを切り分けます。当事務所では、数千万円規模の返還請求を求める裁判の取り扱いがあり、過去の経験から最適な方法を選択します。

手続の面では、交渉で終えられるものは交渉で終わらせることを重視する一方、まとまる見込みが乏しいと判断すれば、調停・訴訟へ速やかに移行します。

弁護士費用について

遺留分の事案における弁護士費用は、着手金と報酬金を基本とし、請求する金額や取り戻した金額に応じて算定するのが一般的です。

請求する側か請求を受けた側かによっても考え方が変わります。具体的な金額は料金ページに掲載していますので、そちらをご確認ください。ご相談の際には、見込まれる費用と回収可能性を踏まえ、依頼された場合の見通しを率直にお伝えします。

よくある質問

遺産が3,000万円の場合、遺留分はいくらになりますか。

相続人が子2人で、一方にすべてを相続させる遺言があり、債務、生前贈与、請求者自身が取得する財産などがない場合、請求できる遺留分侵害額は750万円です。3,000万円に個別的遺留分4分の1を掛けて計算します。実際の金額は、相続人の構成、債務、生前贈与などによって変わります。

遺言書と遺留分では、どちらが優先されますか。

遺言は有効なままです。遺留分を侵害する内容であっても遺言が無効になることはありません。ただし侵害された相続人は、多く受け取った人に対して、侵害額に相当する金銭の支払を請求できます。

遺留分の時効は5年ですか。

遺留分に関する権利を行使するまでの期間は、相続の開始と遺留分の侵害を知った時から1年、または相続開始から10年です。一方、期限内に権利を行使して発生した金銭債権には、別途、民法166条の一般的な消滅時効が適用され、原則として権利を行使できることを知った時から5年などが問題になります。内容証明郵便を送った後も放置しないことが重要です。

遺留分の請求を無視したらどうなりますか。

調停、訴訟へと進み、支払義務が認められれば預金や不動産の差押えを受ける可能性があります。遅延損害金も加算されます。内容に納得できない場合は、放置ではなく反論という形で対応する必要があります。

兄弟姉妹に遺留分はありますか。

ありません。遺留分が認められるのは配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属に限られます。配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合、配偶者にすべてを相続させる遺言があれば兄弟姉妹は請求できません。

公正証書遺言がある場合でも遺留分は請求できますか。

できます。公正証書遺言は方式の面で争いにくい遺言ですが、遺留分の請求とは別の問題です。遺言の種類にかかわらず、侵害された遺留分は請求できます。

遺留分の放棄と相続放棄はどう違いますか。

相続放棄は相続開始後に家庭裁判所へ申述することで、初めから相続人でなかったと扱われるものです。遺留分の放棄は生前でも家庭裁判所の許可を得れば可能ですが、放棄しても相続人であることに変わりはありません。

遺留分侵害額請求は弁護士に依頼せずにできますか。

請求の意思表示自体はご自身でも可能です。ただし財産の調査、不動産や株式の評価、生前贈与が加算対象にあたるかの判断には専門的な検討が必要で、金額に大きな差が生じます。期限の管理もありますので、早い段階でのご相談をお勧めします。

まとめ

遺留分は、請求して初めて実現する権利です。そして期限があります。遺言の内容に納得できないまま時間が経過すると、それだけで請求できなくなってしまいます。

請求を受けた側も同様です。届いた金額が正しいとは限らず、確認すべき点は少なくありません。放置すれば不利になるだけです

フォレスト法律事務所は、名古屋市中区丸の内で相続の紛争を取り扱っています。遺留分について気になることがありましたら、期限が迫っている場合も含め、お早めにご相談ください。

遺産分割、遺産の使い込み、遺言書の作成については、それぞれのページで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。