【初めての遺産分割】必要な知識をわかりやすく・丁寧に解説します

親、兄弟の相続は、誰しもが経験することです。

多くの人が経験する相続ですが、遺産分割の方法や手順が一般的な常識になっているか?といえば、逆に大多数の人が何も分からない状態のままで、その場面に立ち会うことになっています。

いざ「遺産分割」についてインターネットや書籍で調べてみると、難しい言葉や膨大な情報が出てきてしまい、「どうしていいか分からない」、「結局自分の場合はどうなの?」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?

このページでは、初めて遺産分割を行う方を対象に、「遺産とは何か」というところから、最低限知っておきたい基礎的な知識一般的な遺産分割の流れスムーズに協議を行うポイントまで、分かりやすさにこだわって解説しました。

このページを読むことで、遺産分割協議を始める前に最低限知っておきたい知識が身につくはずですし、逆に良く分からない部分があれば、ご遠慮なくフォレスト法律事務所までご連絡ください。

目次

 遺言書があった場合は、遺言書に従う(原則)

遺産分割の問題を考える上で、最初に出てくる重要な事情は、「遺言書があるかないか」です。

遺言書がある場合、基本的には遺言書の記載に従って遺産を分けるため、遺産分割の協議をしなくても分割をすることができます(遺産分割協議をしてはいけないということではなく、相続人全員が了承すれば遺言と違う内容の分け方をすることもできます。)。

よって、全相続人の同意がある場合を除けば、遺産分割協議は遺言書がない場合に必要となる手続であるといえます。

そもそも遺産分割とは?

遺産分割という言葉自体はよく耳にしますが、そもそも「遺産」とは何か?なぜ遺産分割が必要となるか?という根本的な部分から見ていきたいと思います。

遺産とは?

遺産(相続財産)とは、「亡くなった時点における亡くなった方名義の全ての財産」と理解すれば大丈夫です。

一般的には、不動産、銀行の預金、貴金属、株式などの有価証券、自動車などが遺産として出てきます。

注意すべきなのは、「プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(=借金などの負債)も含む」ということです。

また、税金の問題では相続財産として扱われる生命保険金や死亡保険金(「みなし相続財産」といいます)も、法律上は遺産に含まれないなど、法律と税金で考え方が違うことがあります。

なぜ遺産分割が必要なの?

「遺産分割」の手続をしなくていいのであれば極力避けたいものです。

実際、相続人全員の意向が一致し、協力して名義変更手続ができる場合などは分割協議は不要です。

逆に、「相続人の一部の協力が得られない場合」、「遺産の分け方で意見が合わない場合」には、じっくりと協議をしていく必要があります。

また、遺産に不動産がある場合、凍結された銀行預金がある場合などは、名義変更に遺産分割協議書が必要となるので、遺産の分け方に争いがない場合であっても「協議不要」とはなりません。

どのように遺産を分けたか書面化しておかないと、数十年後に紛争化することがあります。
実例としては、「父の相続で何となく遺産を分けたものの、数十年後に母が死亡し、母の相続が発生した時点で、父の遺産の分け方について兄弟間の記憶が大きく違い、母の相続で大きくもめてしまった」ということがありました。
後々の紛争を防止する意味でも遺産をどのように分けたかは協議書にきちんと残しておくべきでしょう。

誰が遺産分割に参加する?

遺産分割協議は、相続人全員の同意がなければ無効となってしまいます。

例えば、相続人の一部に「連絡が取れない」、「話し合いに応じない」という人がいたとしても、その人を除外して成立した協議は、法的に無効となってしまいます。

なお、全員で協議といっても全員が同じ場所に集まって話し合いを行うことまでは必要なく、協議の仕方も対面に限らず、電話・web会議、手紙の回覧等、方法は自由です。

メールやLINEでやり取りをしても良いですし、複数のグループごとに検討結果をまとめる、誰か一人がまとめ役となって意見を取りまとめるなど、最終的に全員の意見がまとまれば良いので、取りやすい方法を選択しましょう。

遺産分割はいつまでにすればいい?

相続税の申告は死亡を知った翌日から10か月という期限がありますが、遺産分割にはこのような期限はありません

なお、2024年4月1日から不動産の相続登記が義務化され、遺産分割がまとまらなくても、相続を知ってから3年以内に相続登記を申請しなければならなくなりましたので、時期として一つの目安となっていくかも知れません。

遺産分割の3つの手続

遺産分割は、「協議」、「調停」、「審判」という3つの段階(ステージ)に分けることができます。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

協議

全ての相続人で遺産の分割方法について話し合い決めるものです。

調停、審判と違い、裁判所に行く必要はありません

相続人間の考えが概ね一致している場合や関係が良好である場合は短期間での成立が見込めます。

逆に、紛争化すると長期化してしまうこともあります。調停や審判のように、締め切りが設定されないため、「何も進展なく数年が経ってしまった・・・」ということも起きやすいので注意が必要です。

調停

全ての相続人を相手として、家庭裁判所で話し合いをする手続です。

調停を行う裁判所ですが、相手(複数いる場合は相手のうちのいずれか)の住所地の家庭裁判所です(事前に、どの裁判所で行うか合意がある場合はその裁判所)。

例えば、「自分が北海道札幌市に居住し、遺産分割の相手が名古屋市名東区に居住している」という場合の裁判所は、相手の住所地を管轄する名古屋家庭裁判所になります。

調停では、各相続人と2名の調停委員が個別に話しをしていきますので、同席では話しにくいことも気にせず話すことができます。

調停委員は、相続人の一方から聞き取った内容を他の相続人に伝え、これに対する話しを聞いて、これを他方に伝えるということを繰り返し行い、合意を目指していくものです。

調停は、分割協議と同じく話合いの手続ですが、調停委員を介しているため、感情的にならず冷静に話し合うことができます。

調停はあくまで話し合いの手続ですので、誰かが結論を出してくれるわけではありません(誤解されがちですが、裁判所が結論を出してくれるわけではありません)。
よって、話し合いを行った末に話合いがまとまらなければ、調停は不成立となって終了します。

調停は交互に各当事者の話しを聞いていくため、自分の番以外は待ち時間となります。

待ち時間だけでも長くなってしまうので、その間に主張を整理したり、考えをまとめるなど有効に時間を使いましょう。

審判

調停で話がまとまらない場合は、「審判」に移ります。

審判は、裁判所の中で行う点は調停と変わりませんが、調停が「話し合いの手続」であるのに対し、審判は「証拠によって裁判官(審判官)が結論を出す手続」という点が決定的に異なる部分です。

遺産を分ける4つの方法

遺産分割と言っても、「どのように分ければいいのか」は遺産の数、金額、個々の遺産に対する思い入れ(例:実家の建物は絶対に取得したい)などによって異なります。

遺産の代表的な分け方は以下の4つです。

現物分割

遺産が複数ある場合に、遺産を現金化するなどせず、「そのまま(=現物のまま)分割」する方法です。

例えば「兄が実家と底地を、弟が田畑を、妹が貯金を」のように、各財産を分け合う場合です。

また、1つの土地を分けて複数の土地にし(分筆といいます。)、分ける場合も現物分割に当たります。例えば、300㎡の土地があったとして、100㎡ずつ3つに分け、兄・弟・妹がそれぞれ取得する場合です。

メリット:シンプルで分かりやすい

財産を種類を変えずに分け合うので名義変更の手続だけすれば足ります。

また、不動産を金銭化する必要もありませんので売却が完了するまで待つ必要もありません。

このように現物分割はシンプルかつ分かりやすい点がメリットです。

デメリット:実際に選択できる場合は限られる

まず、取得希望が重複する場合、現物分割はできません。

遺産が、「実家の建物・土地」、「田畑」、「預貯金」である場合、相続人の1人だけが農業を営んでいない限り、「田畑」の取得を望む相続人は少ないでしょう。

また、土地の分筆をした結果、非常に狭い土地が出来上がったり(例:50㎡の土地を相続人5人で分割擦る場合=1人10㎡の土地を取得)、公道と接していない土地が出来上がるなど、土地の価格が著しく下がってしまうこともあります。

このように現物分割は、各相続人の意向がぶつからない、分筆できる条件が整っている土地であるなどの条件をクリアした場合でなければ取ることができず、実際に選択できる場合は限られます。

現物分割で全ての相続人が等しい価値を取得することは難しいでしょう。
ただし、一部の相続人が少ない取り分でも構わないと考えているような場合にはメリットの大きい手段と言えます。

代償分割

代償分割は、遺産を取得した相続人が、他の相続人に代わりの金銭(=代償金)を支払う方法をいいます。

例えば、「1億円の土地を現物取得した兄が、その代償として弟に対し5000万円を支払った」ような場合です。

メリット

① 各相続人の意向に沿った解決を選択できる

相続人によって、不動産を取得したいのか、現金を取得したいのか、考えは様々です。

不動産も現金も同程度にあれば現物分割も可能ですが、そのような場合ばかりではありません。

仮に、不動産の取得を希望する相続人と希望しない相続人がいた場合に、不動産を取得する相続人が取得しない相続人に金銭を支払うことができれば、双方の意向が満たされることになり、相続人全員が満足する結果を獲得することができます。

② 登記の簡略化にもつながる

兄・弟が相続人であり、遺産が土地のみであるとします。

兄が不動産を単独で取得し、弟に代償金を支払った場合、不動産の登記手続は兄単独で行うことができるので、弟が協力する必要はなく、協力が得られない場合にも手続は完結します。

③ 相続税を軽減できる可能性がある

一定の要件を満たした遺産である宅地について、その評価額を最大80%減額できるという特例があります。

この特例を利用するに当たっては、細かい条件(被相続人の事業に使っていたか、被相続人が住んでいたか、それぞれの目的に従った土地の面積など)がありますが、条件を満たせば税負担を軽減できる可能性があります。

デメリット:

① 代償金の金額を算定することが難しい

不動産の代償金を算定するということは、不動産の価値を明らかにすることを意味します。

しかし、不動産の価値として、「公示価格」、「固定死産税評価額」、「相続税評価額(路線価)」、「机上査定額」、「鑑定価格」など色々な価格が出てきてしまい、何を正しい価値と見るかは非常に難しく、この「価値」をめぐって紛争となることは少なくありません。

「公示価格」とは、国土交通省が挙げる毎年1月1日時点の取引基準の価格を、「相続税路線価」とは、国税庁が出す毎年1月1日時点における相続税・贈与税の算出基準を、「固定資産税評価額」とは、市町村が出す毎年1月1日時点(なお3年ごとに見直し)の不動産取得税・固定資産税・都市計画税の算定基準をいいます。
これらの金額は使う場面が異なっており一概に正しい・誤っていると言うことはできませんが、区別せず使われる傾向にあるので注意が必要です。

⓶ まとまった資金が必要

不動産に代わる金銭を支払うため、まとまった資金が必要となります。

よって、代償分割で不動産を取得できる場合は、相続財産以外の資力を豊富に持っているか、他にも相続財産があり、これを売却すれば相当な金銭を得られるといった条件が必要となるため、選択できる場合は限られます。

換価分割

換価分割とは、不動産や株式などの財産を売却して現金化し、分配する方法をいいます。

メリット

① 評価額を巡る紛争が起きない

換価分割は、現実に売却した金額を分配するので、遺産をいくらで評価するという問題が起きません。不動産の評価を巡っては、激しい争いになることもありますが、このような紛争を回避することができます。

不公平感が出にくい

売却金額を相続割合に従って分配するだけなので、金額の根拠が分かりやすく不公平感が出にくいです。

代償金を用意する必要がない

高額な代償金を支払う必要がないため、資力の有無にかかわらず行うことができます。

デメリット

① 売却額が安価になる可能性がある。

不動産や株式などの財産は価格が変動するので、売却するタイミングによっては安価に売ることになってしまいます。

また、売却後に価値が上昇した場合の値上がり益、株式であれば配当などもなくなってしまいます。

② 売却できない財産も存在する。

不動産であっても買い手がつかないものであれば換価することができません。

特に、田畑や市街化調整区域内であって建物の建築が認められない土地のように利用目的が制限される場合などは、買い手を見つけることが非常に難しいです。

このように「無料でもいらない」と言われてしまう不動産は少なくなく、場合によっては負担金を支払った国に引き取ってもらう制度(相続土地国庫帰属制度)の利用を検討してみましょう。

共有分割

財産を換価したり、誰か一人が相続することなく、各相続人が割合に従って権利を持ち合う方法で分割する場合です。

例えば、相続人が、配偶者と子3人のケースで、法律で決まった相続分(法定相続分)とは異なり、子3人がそれぞれ3分の1の割合で共同所有(共有)する合意をするような場合です。

メリット 財産の処分を封じることができる

以下のような事例を考えてみましょう。

事例

・ 父が死亡。相続人は「母と兄弟3人」

・ 死亡した父が個人で事業を営んでおり、店舗不動産を持っていた

・ 母は事業に関与しないので、貯金のみ相続したい

・ 兄弟3人が事業を引き継ぐ。

この状況で、店舗の不動産を①兄弟のうち1人が相続すべきか、②全員で等しい割合(3分の1ずつ)相続すべきか?

兄弟のうちの1人が不動産を相続し事業を3人で行うこととした場合、不動産を相続した人は、他の兄弟に断ることなく不動産を売却することが可能です。そうなれば、事業は成り立たなくなってしまいます。

このように、どの相続人も相続財産を処分できないようにする必要がある場合、共有のまま分割してしまうことが有用です。

もっとも、共有分割が有用な場合は非常に限られており、一般的にお勧めできる方法ではありません。

デメリット

① 自由に財産を処分することができない

財産を売却する場合に限らず、賃貸に出す場合であっても他の共有者の同意が必要です。

相続人の数が少なく、関係も良好である場合は問題ないですが、いざ財産を処分する段となって相続人間の意向が一致しない場合、大きな紛争となる可能性があります。

② 相続の問題を次世代に残すことになる

遺産を共有したままの状態にしておいた場合、遺産は複数の相続人の間で共有した状態となります。

共有の状態は、相続人間の仲が悪かったり、遺産に関する考え方や経済状態・感覚等が異なってしまうと成り立たないものであり、相続人の数が多くなれば共有状態を維持することは難しくなります。

例えば、ABが遺産を共有分割した場合を考えてみましょう。Aに子が4人、Bに子が2人いたとすると、当初はA・B2人の相続の問題だったものが、時間が経過することによって6人の問題となってしまうのです。

人数が多くなれば相続の問題は複雑となってしまいますし、相続人間の関係は希薄となっていきます。

このように共有状態を維持することは、将来の相続問題を次世代以降に残すことになりかねないため、特別な事情がない限りはお勧めしていません。

遺産分割をする場合の一般的な流れ

それでは、遺産分割をする場合の一般的な流れを解説していきます。

遺産分割には検討すべき順序があります。この順序を意識せずに協議を開始してしまうと、話合いが混みあってしまい衝突を招くことにもつながります。

以下に記載する順序で解決していく必要があります。

① 相続人の確定

遺産分割は相続人全員で協議をする必要があり、一部の相続人が不在のまま成立した分割協議は無効となってしまいますので、登場人物である相続人が誰であるのかを確定するために、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本(全部事項証明)を取り寄せて相続人を確認する必要があります。

ここで、「相続人が誰であるのかなんて、調べるまでもなくはっきりしている」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

確かに、大半のケースでは相続人が誰であるのかが問題となることはありません。

しかし、「被相続人である父と前妻との間に子がおり、その事実を知らされていなかった」というように、自身が知らない相続人が存在していたというケースを目にすることがあります。そのような場合、知れている相続人だけで協議をしたとしても遺産分割協議は無効となってしまいますので、万が一の場合に備え、相続人が誰であるのかを確定しておきましょう。

この調査の結果、相続人が誰であるのか分かったとしても、その相続人が相続放棄をしてしまうと、その人は初めから相続人でなかったものと扱われることになり、違う人が相続人となってきますので、相続放棄の有無についても確認しておく必要があります。

② 相続財産の確定

誰との間で協議をするか明らかになったところで、次は、分け合う遺産の範囲を確定していきます。

不動産

不動産については、法務局で登記事項証明書を取ることによって、権利関係を確認することができます(登記事項証明書は、相続人でなくても取得することが可能です。)。

故人の不動産の場所を把握していない場合、把握していない不動産があるかも知れないと不安に思われる場合は、市区町村が作成する名寄帳(所有者ごとに所有不動産をまとめた台帳)を取り寄せてみましょう。

なお、名古屋市では名寄帳の発行をしていないため、課税明細書・資産明細書によって代用することになります。

預貯金

預貯金の金額は預金通帳で確認します。

通帳が手元にない場合は、金融機関に問い合わせ、入出金の明細書を取得しましょう。金融機関によって必要な書類が異なりますので、詳細な手続は金融機関に問い合わせてください。

有価証券(株式、ETFなど)

証券会社、信託銀行等が分かっている場合は、直接問い合わせをし、残高証明書などを発行してもらいます。

故人が株式等の有価証券を持っていたことは分かっているが、証券会社等が分からないという場合は、証券保管振替期間(ほふり)に、証券会社を照会することが可能です。 照会した結果、証券会社が特定できれば証券会社に保有する金融商品を照会することができます。

債務(借金など)

相続財産には、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。

住宅ローン等の負債は金融機関に問い合わせ、残高を確認できます。

どこの金融機関から借り入れをしているか分からないような場合は、信用情報機関(株式会社日本信用情報機構(JICC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC))に問い合わせ、故人の債務の有無を確認することが考えられます。

③ 協議の開始

相続人、遺産の範囲が確定しましたので、遺産分割の協議を開始します。

この協議においては、特別受益や寄与分など法律上の主張から、具体的な不動産の取得希望、不動産の評価方法まで、様々な事項が議題に上がります。

協議がまとまらなければ、家庭裁判所の調停へ移行しますが、協議の段階で「争いのない点、争いとなっている点」を明らかにしておくと、調停では争いとなっている部分のみを審理すれば足りるため、効率良く手続きを進めることが可能です。

④ 分割協議・審判とその後の手続

遺産分割協議、調停が成立するか、審判が確定した場合、この内容に基づいて登記申請をする、相続税の修正申告を行う、預貯金を解約するなど、残った手続きを行っていきます。

名義変更等の手続が完了して、ようやく遺産分割の手続は終了です。

遺産分割についてのよくある質問

遺産分割協議書を作成する目的は?作成しないといけないですか?

遺産分割協議が成立した場合、法律上は遺産分割協議書の作成が義務付けられていません。

もっとも、登記手続や預金の払戻し手続などでは遺産分割協議書の提出が求められるため、作成をしていないと手続を進めることが困難となります。

また、協議書がないということは、成立した協議内容を示すものが存在しないため、どちらか一方が協議を白紙に戻すことも可能となってしまい、遺産分割協議がいつまでも終わらなくなってしまう可能性があります。

このような理由から、遺産分割協議が成立した際は、遺産分割協議書が作成されているのです。

遺産が複数ありますが、その一部だけ先に分割しておくことは可能ですか?

可能です。

遺産分割をしないとどうなりますか?

良くも悪くも「どうにもなりません」。

遺産が非常に少ない(数百円程度など)場合、遺産分割をしなくとも現実に生じる不利益は小さいため(この数百円を分けることができなくなるだけ)、あえて遺産分割をする必要性は小さく、放置しておいても構わないでしょう。

逆に、まとまった預金がある場合などは、遺産分割が成立するまでは預金を分けることができないので、長期間金銭を塩漬けにしてしまうことにもつながります。

また、不動産については相続を知ってから3年以内に相続登記することが義務となったので、登記する前に遺産分割協議を成立させ、分割協議に基づいた登記をしておくことが望ましいといえます。

弁護士に相談するタイミングは?

遺産相続が発生した場合、どのタイミングで弁護士に相談すべきでしょうか?

基本的には「困ったらすぐ」

遺産分割で問題が発生したら、その時点が弁護士に相談されるタイミングです。

ここまで見てきたように相続では、特別受益や寄与分といった法律的な主張の問題から、遺産をいくらで評価するのか、遺産の所在調査などの問題まで、考えるべきことが多く、全てを一人で解決することは極めて困難です。

もちろん、インターネットや書籍で分からないことを調べながら解決に当たることも一案ですが、付け焼刃的な対処となってしまうよりも弁護士に相談される方が安心することができます。

弁護士に相談できることは?

遺産分割の進め方全般について相談することができます。

フォレスト法律事務所では、代表弁護士が宅建士・FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を保有している他、提携している不動産会社があるため、遺産である不動産の処理を強みとしています。

また、相続税などの税金の問題、登記の問題については、相続問題に明るい税理士や司法書士をご紹介することが可能です。

弁護士に相談しても解決しにくいこと

法律の枠組から大きく外れる要望(例:全ての遺産を独り占めしたい)、相続人間の感情的な問題(例:仲の悪い兄弟に復讐したい)については、弁護士の介入によっても実現は困難です。


まとめ

遺産分割は複雑で繊細な問題ですが、しっかりと準備して進めればスムーズに行えます。

本ページを参考に、遺産分割を円滑に進めてください。

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