親権

親権

「親権を持つためには条件があるの?」

「親権は必ず決めないといけないの?」

「母親なら必ず親権がとれるのかな?」

離婚する際に子どもがいると、争いになることが多いのが親権です。

親権は親が子どもを育てたいと思う気持ちから、親権を持ちたいと思うものです。

しかし、大切なのは子どもの幸せであり、どちらが親権者になることがより子どもの福祉にとって望ましいかということを考える必要があります。

もし争いになってしまったとき、親権者にふさわしいとされるためには、必要とされる事項があります。

親権とは、というところから、詳しくご説明していきます。

親権とは

親権

「親権」とは、未成年の子どもの身の回りの世話や教育をし、子どもの財産を管理する親の権利と義務のことを言います。

親権は、結婚して子どものいる夫婦は共同して持つものであり、協力して子ども育てていくのが原則ですが、未成年の子がいて離婚する場合は、それをどちらか一方に決めなければいけません(民法819条)。離婚してから共同で親権をもつことは認められていないためです。

離婚の際にどちらかが親権者となるかを決め、離婚届に書かなければ離婚届は受理されないため、親権だけを後で決めることはできません。

親権は、大きく「身上監護権」「財産管理権」の2つに分けられます。

身上監護権は、子どもの世話や教育、しつけを行う権利・義務のことをいいます。一般的に監護権とはこの身上監護権のこといい、親権の一部であるとされています。

財産管理権は、子どもの財産を管理し、財産に関する法律行為を行う権利・義務のことをいいます。

それぞれの内容は次のようになります。

身上監護権

監護教育権

監護および教育をする権利(民法820条)

居所指定権

居所(住む場所)を決める権利(民法821条)

懲戒権

懲戒(しつけ)をする権利(民法822条)

職業許可権

職業に就くのを許可する権利(民法823条)

財産管理権

財産管理権

子どもが持つ財産を管理し、その財産に関する法律行為を代表する権利(民法824条)

親権の中には、身上監護権(監護権)が含まれています。

そのため、原則は親権者が監護権を行使し、子どもと一緒に生活し世話をしていくものですが、親権の中から監護権のみ切り離すこともあります。例えば、親権者は父親が持つが、不在のことが多いため実際の監護養育は母親行う、などが考えられます。

親権者の決定方法

親権

親権者を決めるとき、まずは協議と言って話し合いで進めます。

話し合いで決まらなかったときは、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。

調停は、調査委員2名が第三者として間に入り、合意に向けて双方の意見を交互に聞く形で進んでいきます。相手と顔を合わせることなく進められるので、落ち着いて自分の意見を伝えることができ、夫婦だけで話し合うよりも冷静に話を進めることができます。

調停は話し合いの場ですから、話し合いがまとまらなければ終了してしまいます。

親権者の変更を調停で協議していた場合には、審判手続に移行し、裁判所の判断で変更の可否が決められます。

離婚調停の中で親権の所在が争われている場合、調停が不成立で終わった後は、裁判の中で親権の所在が決定されます。

親権者と認められるためには

親権者を決めるためには、子どもの福祉・利益を考え、子どもの幸せを優先することが最も重要であるとされています。

親権は、未成年の子を監護、養育していく親の義務です。そのため、子どもの福祉を考えたときに、どちらが親権者になるのがふさわしいかということを基準に判断されます。

親権者を決める基準

どちらが親権者にふさわしいかという基準については、具体的には次のような事項を見ていくことになります。

これまでの監護実績

これまで主に監護をしてきたのは誰であったかどれくらい子どもの監護養育をしてきたかという点です。

子どもとどのように接し、具体的にどのような世話をしてきたかという内容が考慮されます。

別居後であれば、実際に子どもと同居し、今現在養育している方とされることが多いでしょう。

離婚後の監護体制

離婚した後、実際にどのような監護養育をしていく予定であるか子どものための環境が整っているかという点です。日々の食事や送迎など生活に加え、将来的にどのような教育をし育てていきたいかという希望や考えを持っていることも考慮されます。

また、周囲に子どもの養育をサポートしてくれる人がいることも重要です。実家が近い、親族のサポートが受けられるなど子どもを育てていくために支援してくれる人がいることが望ましいでしょう。

子どもとの関係

親権は、子どもへの愛情がより大きい方へとされています。愛情は数字ではかれるものではありませんが、客観的な見方として子どもと過ごした時間などが判断材料となることはあるでしょう。

また、これまで子どもとの関係が良好であったかどうかという点です。

特に年齢が大きくなると子どもの意向も尊重されますから、子どもとの結びつき信頼関係も要素の一つです。

子どもと過ごす時間を十分にとれるか

親権者となった場合に、子どもと過ごす時間がとれるかどうかという点です。親権は母親になる例が多いですが、理由の一つとして父親は帰りが遅く子どもと過ごす時間が短くなってしまうことも考えられます。

経済的な安定

子どもを養育していく上で、生活費や学費などに必要なだけの収入を得られる経済力があるかという点です。もっとも、相手からの養育費をもらうことで補うこともできますから、収入が少ないという理由だけで親権者になれないとはならないと考えられます。

親の健康状態

親自身が心身ともに健康であり、子どもを養育できる状態であることです。

生活環境に大きな変化がないこと

離婚をすると生活環境が大きく変化することが予想されます。

子どもの現在の生活状況が安定している場合、なるべく環境の変化がない方が優先されます。転校や引っ越しは子どもにとっても負担になるため、子の福祉の観点からも考慮されるべき事項だからです。

また、すでに別居しており、一方の親と子の生活が安定して続いている場合、1人で子どもを育てているという実績が出来上がるため、その事実をもって、親権者とされることが多いと考えられます。

きょうだいと離れないこと

きょうだいがいる場合は、なるべく離れない方向で決められる傾向があります。

それは、きょうだいは精神的な結びつきが強く、別れてしまうことで精神的な影響が大きいと考えられているためです。

ただ、長年離れて暮らしていた等、それぞれの家庭での事情によっては、きょうだいの親権を分けて決める場合もあります。

子どもの年齢・意思

ある程度の年齢(おおむね10歳以上)になると、子どもの意思も重要な判断要素になります。特に子どもの年齢が15歳以上の場合、家庭裁判所は子どもの意見を聞かなければならない(家事事件手続法152条2項)ため、子どもの気持ちが大きく影響してきます。

また、乳幼児など、子どもの年齢が小さければ小さいほど、母親が親権者とされることが多く見られます。これは裁判所には母親優先の考え方があり、養育上母親であることが望ましいという考え方が根付いていること、またその先例が多いことが要因であると考えられます。

だからといって父親が親権者になれる可能性がないわけではなく、また、母親だからといって必ずしも親権者と指定されるものでもありません。

あくまでも重要視されるのは「子の福祉」であり、母親より父親の方がふさわしいと判断されれば、父親が指定されることも考えられます。

親権者の変更

親権

一度決めた親権者を変更することは可能ではあります。

しかし、当事者間の合意があったとしても、話し合いだけでは変更はできません。家庭裁判所へ親権者変更の調停・審判」を申し立てて、裁判所に新しい親権者を指定してもらう必要があります。

それは、親権者の変更が認められるためには、変更することが子どもの福祉にかなうものである必要があるとされているからです。親権者が亡くなった、長期にわたり不在であるなど、変更しなければ子どもの福祉が害されるといった場合が当てはまり、特段の理由がないと認められるのは難しいとされています。

そのため、離婚を急ぐあまり親権者を相手にしておき、後から変更しようとするのは避けたほうがいいでしょう。

親権者になるために大切なこと

親権者にふさわしいと伝えること

調停や裁判の場において、先ほどでてきた親権者になるための基準をもとに、自分が親権者にふさわしいことしっかり伝えることです。

これまでの監護実績がある、子どものための環境が整っている、親族の協力が得られるなど、ご自身の考えや事情を調停委員や裁判所にきちんと伝えましょう。

面会交流の機会を拒否しないこと

離婚や親権について争っていると、相手と面会交流をさせたくないと思う方もいるかもれません。相手への拒否感情から、子どもを会わせることに抵抗が出てきてしまうことも考えられます。

しかし、面会交流は、子どもにとって両方の親から愛情を感じ、子どもの健全な成長にとっても実施することが望ましいとされています。

暴力を振るう恐れがあるなど、面会交流を行うことが子の福祉にとって良くない場合は別ですが、親同士の「相手が嫌だから」という理由で面会交流を拒否することは、子の福祉に反することに繋がります。

また、子どもに対して相手のことを悪く言ったり、子どもに相手を悪く言うように教えたりするのは、子どもにとってもストレスになり、また裁判所への印象もよくないものになります。

子どもの連れ去りが起こってしまったら

離婚や親権の話がまとまらないうちに、一方の親が子どもを勝手に連れていってしまう事態が起こることがあります。

一方的に子どもを連れて出て行ってしまった、別居して一緒に暮らしていた方の親から、そうでない方の親が連れ去ってしまったなど、様々なケースが想定されます。連れ去りは認められる行為ではありませんし、親権者を決める上で不利になりかねません。

もしそのような事態になった場合、無理やり連れ戻すことはすすめられません。すみやかに弁護士に相談されることをおすすめします。

まとめ

親権

親権は、どちらが親権者になると子どもにとって幸せであるか、という考えのもとで決められます。争いが深刻化することもあり、お金で解決できないものであるため、どちらも譲れない状況になることもあります。

家庭によって事情は様々ですから、どのように解決していくのが最善なのかは人によって変わってくると思います。

ぜひ弁護士にご相談いただき、解決策を一緒に考えていくことをおすすめします。